「お久しぶりです、親父さん」
「グララララ!そんな語っ苦しい喋り方はいらねぇって言ってるだろう、馬鹿娘」
「白ひげ傘下でもない私をそう呼んでくれる親父さんだからこそですよ。たまたま船を見つけたんで、少し挨拶がてらに寄ってみたんです」
「宴でも開くか!」
「すごく嬉しいんですが、今日はすぐに出発の予定なんです」
「そうだな!マルコが帰ってこねえ内に出ないとな!グララララ!」
「……親父さんにはお見通しですね」
「じゃあ帰る前にいつも通り診察と薬を頼む。手持ちにいつもの薬はあるか?」
「はい、もちろんです。親父さんこそ先払いですが、すぐにご用意できますか?」
「!さっきから、親父さんがそう言ってくださってるのに、何様のつもりなの!?」
「いい、こういう度胸があるところに俺は惚れてるんだ。だからこそこの世界を渡り歩ける」
それから、いつも通り胸の音を聞いて、採血を行う
普通なら結果なんてすぐに出ないけどそこは舐めないでほしい
どろどろとした血が入ったシリンジを何回か静かに振る
「じゃあ親父さん、いつも通り医務室をお借りして検査結果出しますね。あと、これは予想ですが、また体調悪くなったでしょう?少なくとも痛みは前よりも強くなっているはずです」
「!はあ!?私達が看てるのよ、そのはず、」
「、グララララ!結果もでちゃいねえのに、どうしてそう思うんだ?」
「お酒を飲む量を増やしても、痛みは消えませんよ。痛みによっちゃそれで強くなる場合もありますし、とりあえず薬が増えることは覚悟しておいてくださいね」
「お前も俺のことはお見通しだな!チェーリ、医務室まで案内してやれ」
「…はい」
さて、ここで無駄話をしよう
私はこの船のナース達に嫌われてる
最初に来た時からそう
まあそりゃそうだろう、突然来た奴に親父さんの薬や治療を全て指図されて、挙句の果てに親父さんや隊長たちの信頼も勝ち取ってる
こーんなに面白くない話なんてない
それに私性格悪いから余計かな
睨まれたり聞こえるように陰口を言われたり
なんだここは女子学校か
案外ああ見えて見た目だけのナース達
中身はやっぱりすっからかんらしい
閑話終わり
次は今の状況について説明してみる
親父さんの部屋からチェーリさんに案内されて医務室に向かう途中
少し暗めの廊下に差し掛かった瞬間、ポケットから出した注射針で私の頬を刺そうとしたチェーリさん
私の頬にはそのせいで血が流れてる
別に完璧に避けても良かったんだけど、ね?
あーあ、馬鹿な人
「ッアンタ、見てて腹が立つのよ!!!!急に現れたかと思えば、皆から可愛がられて!!黒い女神だがなんだか知らないけど、調子乗らないでよ!!?」
「私は医者として、皆と接してるだけです。貴方達みたいに公私混同してませんし」
「その態度がむかつくって言ってるのよ!!」
「きちんと一線を引くことができない貴方達を棚に上げて、怒鳴り散らすの、やめてもらえます?それに、貴方達は所詮雇われの身。親父さんが御贔屓してる私に対して、そんなこと言っていいんですかね」
「本当に性格悪いわね、貴方……!!!」
「ええ、自覚はあります。だからこそ、今からの言葉です。…………っ貴方のその手は人を救うための手じゃないんですか!?その注射針も、全て人を救うための物です!その手は、その物品は、人を傷つけるための道具じゃない!!貴方に医療従事者としての誇りや責任はないんですか!?」
「!何言って、」
「そこまでだ!!!!!!」
「エースたいちょ、」
「エース、」
「リーダ、その傷大丈夫か!!?」
「不意打ちでちょっと当たっちゃって…、でも擦り傷だから大丈夫だよ。ありがとう、エース」
「…リーダの言う通り、お前は看護師に相応しくねえ。親父に話はさせてもらう」
「!!待ってよ、これはこの女が!!」
「言い訳すんじゃねえ!!!」
ほーら来てくれた
エースの気配が近づいてきてたのは気づいてたから、それに合わせてさっきの台詞を少し大きめの声量で言えば私の勝ち
これで明らかにあっちが悪者で、私の株も上がる
そろそろナース達が鬱陶しかったから、これで少しは大人しくなるだろう
チェーリさんの顔が絶望に染まった
診察の段階から少しずつ挑発したかいがあったかな
ここはエースに任せて私は医務室に行くことにする
その途中、チェーリさんとのすれ違いざま、耳元で囁いてあげた
「 どうせやるならバレないようにしろよ」
「!!!やっぱりこの女だけは!!!この女だけは許せない!!!!!!」
「じっとしやがれ!!!!!」
「騙されてる、皆騙されてるのよ!!!!」
この女は海王類の餌にでもされるのかな
ステージは掌の上
(どうせやるなら誰にもバレないようにやれよ、おマヌケさん)