ふわふわり

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「やっほー、元気?」

「は!?リーダ!!!?」





気分転換に前の島で報酬で貰った海上バイクをブンブンふかしてたら見えた船

これはソーラーパネルを入れてるから燃料はいらないらしい

なんて環境に優しいんだろう、どうでもいいけど


いつもは能力を使って空を飛んでばかりしてたから、たまには海の上を走るのも新鮮味がある

跳ねる水飛沫が冷たくて気持ちいい

夏島が近いのかもしれない

腰に巻いたバンダナがパタパタとはためく

このまま海に落ちたら、なんて考えてみた

きっと悪魔の実のせいで、力が抜けてただ海底に向かって堕ちていくだけなんだろう

とても昔に見た海面に浮かんでいくキラキラと輝くあぶくはもう一生見れない


もうちょっと近づいてきて、船の上にサッチが見えた

久しぶりだからちょっとイタズラしてみよう

能力者でもないから、万一落ちても大丈夫でしょ

片手を上げて、ROOMを広げる

思ったよりも大きくて、一瞬頭がくらっとした

絶対スープをご馳走してもらおう


次の瞬間私は看板の上にいた

あ、皆驚いてる





「サッチー、そのバイク繋いどいてね」

「え!?俺なんでこんなとこに!!!?は!?リーダ!!!?」

「さすがに驚いた」

「毎度毎度、普通に登場できねえのかい?」

「サッチが見えたから思わず、ね。久しぶり。ほら、みんな驚いてるから説明した方がいいんじゃない?」

「誰か俺のこと気にしてくれない!!?」





イゾウが大きくため息を吐いて、それから頭を撫でられた

私の頭を撫でるなんて片手で数えるだけな気がする

口紅の色が変わってたから後で言ってみよ

私より化粧品持ってそうだな

そのままイゾウは船内に消えていったから、きっと親父さんに私が来たことを報告しに行ってくれたんだと思う


周りの平隊員の反応は、古株の皆は呆れたように笑ってて、新人の子たちは頭にハテナしか浮かんでない

それを見てつい笑っちゃう

昔は乗った瞬間剣を向けられたりしたのが懐かしい

ハルタも呆れたように笑いながら、そんな新人たちに説明を始めてくれた

だれもサッチを手伝おうとしないところがまた好きだ





「リーダ!!!!!!!」

「あ、久しぶり、エース」

「見てくれよ!リーダのおかげで傷跡消えたぜ!」

「見えてる、見えてるから」





いきなり船内なら飛び出してきたエース

嬉しそうに手を大きく振ってくれてる

それから、前に傷跡があったところを指さしてくれるけど、上半身裸だから丸見え

私に触れるくらいまで近づいてきてくれるけど、見えてるからね

相変わらずいい身体してる

あ、後ろにいたイゾウに拳骨された


イゾウによると、挨拶がてらに親父さんが私のことを呼んでくれてるそうだ

そこで、エースが親父さんの所まで案内してくれるらしい

場所は覚えてるからって断ったら逆ギレ

次は私の頭にハテナが浮かんだ

絶対に1人で行きたいってわけじゃないからお願いすれば、花が咲くみたいな笑顔を浮かべたエース

なんだか弟みたいだ

こんな馬鹿な弟は嫌だなあ

……じゃあ麦わらも弟になるのか?

絶対に嫌だ





「今日はどうして来てくれたんだ?」

「海上バイクをふかしてたら、たまたま船が見えたから寄ってみたんだ」

「じゃあ、俺が見つける前に見つかっちまったな」

「次は見つけてくれるでしょ?」

「当たり前だろ!そういや、マルコ、一応今日帰ってくる予定なんだけどさ、間に合うかな」

「そういやいつも1番に走ってくる奴がいなかったなあ」

「マルコのやつ、ずーっとリーダの話してくるんだぜ」

「今度燃やしててくれない?」

「リーダがそんなこと言うなんて聞いたら泣いちまうかもな!」





いつのまにか大きな扉の前についてた

ご贔屓のお客さんだから挨拶して、すぐに降りよう

マルコが帰ってきたら面倒だ

あ、ほかの隊長のところにも挨拶しておこう

いつも偶然会ったらご贔屓にしてくれるし、ここの海賊船の報酬は気に入るものが多いから


はてさて今日は薬の依頼はされるかな

ご贔屓さんのはいつもストックしてるから大丈夫だろう

大きな扉を開ければ、とっくりを片手に楽しそうに笑う親父さんとナースがいた

エースは部屋に入らずに待ってくれるらしい

いつもの、ナースからの視線にはもう慣れた




「お久しぶりです、親父さん」

「グララララ!そんな語っ苦しい喋り方はいらねぇって言ってるだろう、馬鹿娘」

「白ひげ傘下でもない私をそう呼んでくれる親父さんだからこそですよ。たまたま船を見つけたんで、少し挨拶がてらに寄ってみたんです」

「宴でも開くか!」

「すごく嬉しいんですが、今日はすぐに出発の予定なんです」

「そうだな!マルコが帰ってこねえ内に出ないとな!グララララ!」

「……親父さんにはお見通しですね」

「じゃあ帰る前にいつも通り診察と薬を頼む。手持ちにいつもの薬はあるか?」

「はい、もちろんです。親父さんこそ先払いですが、すぐにご用意できますか?」

「!さっきから、親父さんがそう言ってくださってるのに、何様のつもりなの!?」

「いい、こういう度胸があるところに俺は惚れてるんだ。だからこそこの世界を渡り歩ける」





それから、いつも通り胸の音を聞いて、採血を行う

普通なら結果なんてすぐに出ないけどそこは舐めないでほしい

どろどろとした血が入ったシリンジを何回か静かに振る





「じゃあ親父さん、いつも通り医務室をお借りして検査結果出しますね。あと、これは予想ですが、また体調悪くなったでしょう?少なくとも痛みは前よりも強くなっているはずです」

「!はあ!?私達が看てるのよ、そのはず、」

「、グララララ!結果もでちゃいねえのに、どうしてそう思うんだ?」

「お酒を飲む量を増やしても、痛みは消えませんよ。痛みによっちゃそれで強くなる場合もありますし、とりあえず薬が増えることは覚悟しておいてくださいね」

「お前も俺のことはお見通しだな!チェーリ、医務室まで案内してやれ」

「…はい」





さて、ここで無駄話をしよう

私はこの船のナース達に嫌われてる

最初に来た時からそう

まあそりゃそうだろう、突然来た奴に親父さんの薬や治療を全て指図されて、挙句の果てに親父さんや隊長たちの信頼も勝ち取ってる

こーんなに面白くない話なんてない

それに私性格悪いから余計かな

睨まれたり聞こえるように陰口を言われたり

なんだここは女子学校か

案外ああ見えて見た目だけのナース達

中身はやっぱりすっからかんらしい


閑話終わり

次は今の状況について説明してみる

親父さんの部屋からチェーリさんに案内されて医務室に向かう途中

少し暗めの廊下に差し掛かった瞬間、ポケットから出した注射針で私の頬を刺そうとしたチェーリさん

私の頬にはそのせいで血が流れてる

別に完璧に避けても良かったんだけど、ね?

あーあ、馬鹿な人





「ッアンタ、見てて腹が立つのよ!!!!急に現れたかと思えば、皆から可愛がられて!!黒い女神だがなんだか知らないけど、調子乗らないでよ!!?」

「私は医者として、皆と接してるだけです。貴方達みたいに公私混同してませんし」

「その態度がむかつくって言ってるのよ!!」

「きちんと一線を引くことができない貴方達を棚に上げて、怒鳴り散らすの、やめてもらえます?それに、貴方達は所詮雇われの身。親父さんが御贔屓してる私に対して、そんなこと言っていいんですかね」

「本当に性格悪いわね、貴方……!!!」

「ええ、自覚はあります。だからこそ、今からの言葉です。…………っ貴方のその手は人を救うための手じゃないんですか!?その注射針も、全て人を救うための物です!その手は、その物品は、人を傷つけるための道具じゃない!!貴方に医療従事者としての誇りや責任はないんですか!?」

「!何言って、」

「そこまでだ!!!!!!」

「エースたいちょ、」

「エース、」

「リーダ、その傷大丈夫か!!?」

「不意打ちでちょっと当たっちゃって…、でも擦り傷だから大丈夫だよ。ありがとう、エース」

「…リーダの言う通り、お前は看護師に相応しくねえ。親父に話はさせてもらう」

「!!待ってよ、これはこの女が!!」

「言い訳すんじゃねえ!!!」





ほーら来てくれた

エースの気配が近づいてきてたのは気づいてたから、それに合わせてさっきの台詞を少し大きめの声量で言えば私の勝ち

これで明らかにあっちが悪者で、私の株も上がる

そろそろナース達が鬱陶しかったから、これで少しは大人しくなるだろう

チェーリさんの顔が絶望に染まった

診察の段階から少しずつ挑発したかいがあったかな

ここはエースに任せて私は医務室に行くことにする

その途中、チェーリさんとのすれ違いざま、耳元で囁いてあげた





どうせやるならバレないようにしろよ

「!!!やっぱりこの女だけは!!!この女だけは許せない!!!!!!」

「じっとしやがれ!!!!!」

「騙されてる、皆騙されてるのよ!!!!」





この女は海王類の餌にでもされるのかな


















ステージは掌の上

(どうせやるなら誰にもバレないようにやれよ、おマヌケさん)



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