ふわふわり

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「あ、あの炎は不死鳥………!!?」

「刀を収めろ、新入り。アイツは不死鳥なんかよりずっと恐ろしい存在だ」

「ちょっと、聞こえてる」





夜明け頃、いつもの場所に到着した

荒れた無人島で、ただなにも珍しくなんてない木たちが生い茂ってる

ああ、疲れたな

地面に降り立てば、スモーカーと何人かの部下がいた

船を動かすだけの最低限の数

それほど私の存在はばれたくないのか、はたまた私に遣わすのはこのくらいの人数でいいってことなのか

たしぎは今日はいないなのかと問いかければ、スモーカーはムッとした顔をした

まるで私なんかになんで教えなきゃいけないんだって顔

なら帰ると呟いて、また腕を翼に変えれば、後ろから舌打ちと共に風邪だと言われた

最初からそうしておけばいいのに

さっきわたしのところに来た鷹は、疲れたのか、新兵のもつ止まり木で寝てる

少し撫でれば、気持ちよさそうに首をうねらせた





「ふーん、元気そうなのにね、あの子。ところで今回の本件は?私早く新居探したいんだよね」

「……いつもの薬だ。あとコイツらの情報を知っているか?」

「はーいよ。ああ、コイツらね」





肩から下げた赤い革のカバンから、無色の液体の入った瓶と大きめの底が大きくて浅い薬入れを5つ、あと私の薬とかを詰め合わせた救急箱セットを2つ出した

無色の液体は天竜人への栄養ドリンクみたいなやつ

ああ、アイツらなんかの健康なんかのために、何人もの人が犠牲になって私に報酬を払うんだろう

なんか私のしか飲まないって言ってるらしいし

まあどうでもいいや

んで、あとは傷薬とその他もろもろの薬


スモーカーが差し出したのは手配書だった

ユースタス・"キャプテン"キッド

赤い髪に独特な服装

自分の夢を嘲る奴らは皆殺しにしてきたらしい

それがこの無駄に高い懸賞金のわけ

私にはそんなものないからいいけど


あ、忘れてた





「前もらってたウイルスの結果も渡しとくね。ワクチンと書類も入れとくから研究者に渡しといて」

「ああ、分かった」

「さて今回のお代は?先払いなのは知ってるでしょ」

「チッ………」





チラチラと今取り出した薬とかを振れば、また舌打ちをこぼしたスモーカー

こんなに短期だからコイツはきっと白髪なんだろう

後ろの新兵に目配せすると、近くに置いていたこじんまりとした両手に乗るほどの黒い箱をスモーカーに手渡した

それをゴツゴツした手で開けて、コチラに中身が見えるようにする

中には鈍く光を放つなにかがあった

赤色というよりは紅に近いソレ

ソレはまるで生き物みたいに波打つ

見た目はとても宝石に近いのに、波打っていて、とても気味が悪い





「なにこれ」

「……ワノ国に伝わる神話にでてくる8つの首を持った龍の心臓だと言われてる。その宝玉が持ち主だと認めれば再びその龍は姿を現し、もしそうでないと見なされれば長寿は叶わないそうだ」

「海軍は私を殺したくてたまらないらしいね」

「そんな迷信信じちゃいねえ」

「私が敗けるか、迷信が嘘か、気になるからこれで手を打ってあげる」

「信じるような奴じゃねえだろ、テメエは?」

「気が向いたの。それともほかのものでもあるの?」

「………チッ、」

「そんなにイライラしていると白髪の次はハゲるよ」

「あ"ぁ!!!?」





薬とかをスモーカーに投げて、ユースタスの情報を持ち歩いてる紙に暗号を使って書いていく

急すぎて落としかけたスモーカーがなにか言ってるが、別に興味はない

そんなヘマはしないだろうが、もし途中でちがう奴に奪われて中身を見られたり、誰かが聞いていたりすれば私は損をすることになるし

スモーカーに手渡せば、少し眺めてからズボンに折りたたんで入れていた





「………何度もいうが海軍と契約する気はねえのか?」

「もうしてるでしょ。海軍を客とする代わりに、私の手配書はない、これ以上の契約なんてないじゃない」

「海軍専属になればいい」

「そんなことしちゃ海賊が敵になるでしょ?」

「なんだ、海賊に思い入れがいる奴なんているのか?」

「まったく?けど貴方達とは違った報酬をくれるから。それに、」

「ん?」

「ここに来る数時間前に熱烈な告白をされてね。もし海軍なんかに入れば殺されそうだから」

「!はあ???!っげほ、がほ、!!」

「煙で噎せるとか、貴方ほんとにスモーカー?」





勢いよく噎せるスモーカー

煙人間のくせに

がたいのいい大きな身体が咳で揺れる姿はなんだか滑稽だった

思わず哀れみの目で見ていたら海楼石の十手で喉元を突いてきたから上体を後ろに反らせて避ける

今のはなかなか本気だったな

そのまま膝を限界まで曲げて背中を地面に着けたら、手で地面を思いっきり押して脚で十手を弾いた

うまく当たった十手はスモーカーのそのまた後ろに飛んでいく

条件反射だから仕方ない





「なにすんだテメェ」

「こっちのセリフ。なにいきなり」

「明らかに哀れみの視線を向けてきたじゃねえか」

「噎せるほうが悪い」

「だれのせいだと思ってやがる」

「一体だれのせいなの?ん?」





私のところに受け取りに来るのはだいたいコイツ

あとごくたまにガープさんだったりクザンの馬鹿だったり変わるけど

そんな、奴が私を異性として見ているのはすぐに分かる

少ない回数しかそれを見せないけれど

心理学をかじってよかった

手に取るように相手がわかるし、簡単に操れる

私の質問にあたふたとしながら頬を染めるスモーカーは正直言って気持ちが悪い

まあ利用できるからいいか

スモーカーから報酬が入った箱をもらってカバンに入れる





「……まあいいや。じゃあまたね」

「、誰に告白されたんだ」

「内緒だよ。女は秘密を着飾るほど美しいって言うでしょ」

「テメェが女だとはな」

「何言ってるんだか」

「海賊だな?この世の中の海賊全部を捕まえてやればソイツは捕まるわけだ」

「強いのなんて山ほどいるよ」

「強くなるだけだ」

「ふーん。まあ熱が出てるあの子お大事にね」

「………あぁ」

「じゃあ新居探しにでも行こうかな」

「次はどこに行くんだ?研究所の奴らがまた新たな薬とかが作れるって喜んでたぞ」

「この前はそういう暖かくて豊富なところを選んだからね。次もそうだとは限らない、私のきまぐれだから」

「そうだな、お前はきまぐれだ」

「今更でしょ、そんなそと?まあ見つけてみてよ」

「見つけてやるさ。じゃあな、黒い女神さんよ。早く捕まれよ」

「じゃあ、白猟サン。そんなわけないでしょバーカ」































アイしてるのコトノハは

(聞けないだろうけど)











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