ふわふわり

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「うーん、そろそろこの島も飽きたなー」

「リーダ!!」

「へ?」





なんとなくあれからも島に過ごして数ヵ月

そろそろ薬草とかも調べ尽くしたしこの島にも飽きた今日この頃

海の見える岬みたいなところでこの前買った医学書を何度か読んで独り言を呟く


無意識に海の見える場所に来てしまう私の癖はそろそろ直した方がいいらしい

ずっとじっとしてたからか、それとも太陽の光にやられたからか、立ち上がった瞬間少しふらふらする

それからもう一度海を眺めて、家に帰ろうとしたら名前を呼ばれた


ちなみに私は仕事の時以外ホントの名前は使わない

あの部屋の契約だって偽名だし、近所の人にも適当に作った偽名で呼ばれてる

だから反対に言うと私を名前で呼ぶ人は私を求める人


振り向けば見知った顔が目の前にあってさすがにびっくり

次の瞬間私は抱き締められた





「久しぶりだよい、リーダ!!毎回言ってんだろ、移動するときは言えって!」

「…久しぶりだね、マルコ。それ言ったら楽しくないじゃん。あと離れろ」

「相変わらずクールだねい…。探す俺らの身にもなれよい」

「じゃあ探さなかったらいいじゃないか」


「じゃ、邪魔するみてーで悪いけど、誰だ、コイツ…?」


「うん?」





たまたま逢った親父さんの薬を作ったのが最初で、それを取りに来たのがマルコ

それからちょくちょく逢いに来る

何度か親父さんの船にも乗せてもらってるし、隊長レベルの人たちとはまだ顔見知り

マルコを無理矢理剥がしてその後ろに視線を向ければ黒髪の人

あ、手配書と誰かの記憶で見たことある顔だ

たしか、





「あ、こっちは、」

「エースさん、だよね?」

「!おっ、おぉ!」

「手配書とか、よくマルコたちの話に出てくるから!私はリーダ・ライアニア、よろしくね」

「よろしくな!」

「どうせマルコになにも言われず連れてこられたんでしょ?説明がてら家来る?」

「行くよい!」

「いや、マルコに聞いてない」





それから、私の家までの道を3人で歩く

エースさんは最近隊長に昇格したのもあるし、私が行くときはいつも任務でいなかったから初対面

行きながら話を聞いてると、マルコは傷薬とかを買いに、エースさんはつい最近つけられた傷跡が残ってしまったらしくてそれを見たマルコがついでに連れてきたらしい

私が不本意ながら世間で呼ばれてる通り名を名乗るとエースさんはすごくビックリしてた

私、どんなイメージされてたんだろ


マルコの話によるとほかのみんなも元気らしい

私に逢いたがってた、なんて話すから、また今度近くに行くときがあれば寄っていこうかな、なんて考える


家に着いて、2人が中にはいればエースさんはまた驚いたような声を出した
(マルコはもう見慣れたらしい)

私が薬の用意をしてるときも横目で見るとエースさんは目を輝かせながら棚を見てて、なんだかおもちゃ屋さんにいる子どもみたいに見えた





「薬と難しそうな本がいっぱいだな…!」

「一応それで商売してるからね。まぁ、この島を出るときは気に入ったやつ以外全部燃やすけど」

「なんでだ?もったいないじゃねーか」

「荷物が増えちゃうから。ていうか今さらだけどなんで今日はサッチとかイゾウとかと一緒じゃないの?マルコが来るときは大抵一緒なのに」

「今回はエースとの任務帰りにたまたま風の噂でリーダがこの島にいるって聞いたから寄ったんだよい。だから本船はいま全く違うところにいるから仕方ねーよい」

「男2人で任務なんて、なんかかわいそうだねー。掘られたりしてない、エースさん?」

「!!な"っ、!!!」

「俺にそんな趣味はねーよい!!!!」

「冗談、冗談だって!そんな本気にしないでよ」

「想像したら俺…、…うぷ、」

「想像すんな、エース!!」

「そんな趣味がないのは充分分かったからおっきい声出さないでよ。じゃあエースさん、ちょっと傷跡見せてねー」

「おっ、おぉ」

「…この傷、覇気使いに剣ででも斬られた?」

「!なんで分かるんだ?!」

「傷見れば剣ってことはすぐ分かるし、エースさんが斬られるなんて覇気使いしかいないでしょ」

「あ、そっそうだよな!」

「じゃあすぐ薬用意するから待ってねー」

「…あと!!」

「ん?」

「俺のことはエースでいい!」

「、了解、エース」

「!!おお!」




棚から前に作った薬取り出して、専用の容器に移しかえる

その間エースとマルコはすごくまったりしてるみたいだった

隊長ともあろう方が他人の家でこんなにリラックスしてていいのかな

部屋には、外から聞こえてくる波の音だけに包まれて、居心地のいいものになる


もう作業も終わりかけた時、マルコがなんの前触れもなく私の名前を呼んだ

集中していたのもあって、思わず持ってた試験管を落としそうになればエースにすごく心配された。恥ずかしい





「海軍のやつらもやっぱり来るのかよい?」

「そりゃ来るよ。そのおかげで私は捕まらないわけだし」

「…前から言ってるけどよい、うちの海賊団に入るつもりはねーのかい?」

「私は自由が好きなの、だから縛られるなんて嫌」

「親父もリーダなら大歓迎だって言ってるよい」

「美人なナースさんがたくさんいるじゃん。私なんて必要ないでしょ」

「うちのナースもリーダの腕にはまだまだ及ばねーよい」

「努力したからねー。でも私より技術がある人なんて山ほどいるよ」

「俺たちはリーダがいいって言ってんだろ」

「その度に何回もお断りしてるでしょ」

「でもさ、」

「え?」

「なんでリーダは医者になったんだ?」

「いきなりなんだよい、エース」

「だって人を助けたいと思って医者になったんならうちの海賊団なんて人たくさんいるしくそいいと思うぜ?」

「…最初でここまで聞いて来る人は初めてだよ、エース」

「!!え、悪ィ!」

「いやいいよ、大丈夫。私が医者になった理由はものすごく簡単、追い付きたかったから」

「?追い付きたかった?」

「私みたいな凡人じゃなくて、ホントの天才が近くにいたの。ソイツに勝ちたくて勝ちたくて必死に努力して、結果医者になっただけ。人を助けるのなんて私の利益があるときだけだよ。…はい完成!エースは傷跡に毎晩寝る前に塗ってこの包帯巻いてね」

「おっおお…!」

「あとこれはいつもの薬ね、塗りすぎは反対に良くないからあんまり塗っちゃダメだよ」

「分かってるよい」

「…さて、お代はなーに?いつも親父さんのところは私が嬉しいのばっかりくれるから楽しみにしてるんだよね」

「あぁ、今回は、」

「…って言いたいけど、今回は私欲しいものがあるんだ」

「欲しいもの?」

「うん、欲しいもの」

「なんだよい?けど今はその持ってきたやつしかねーぞ?」

「エースの能力、なんてどう?」

「「!!」」

「俺の能力、!!?」

「は、いや待てよい!!俺でさえ何回か逢ってこっちから頼み込んだのになんでだよい!!!?」

「前からほしかったっていうのもあるし、普通にエースが気に入ったから」

「俺だけついていけねーんだけど!?」

「ついてくんな!!リーダ、絶対気に入るから、考え直せ!!!」

「私に利益がないんなら、もう仕事とらないよ?」

「!!そ、それは脅しだよい、!」

「俺も仲間に入れてくれよ!?」

「つまり、こういうこと」

「は、ッッ!!」




私が少し背伸びをしてキスすると、エースは目を見開いた

次の瞬間、頭にたくさんの情報が流れ込んでくる

みんなと笑い合ってる場面、子どもの頃に交わした盃、大切な兄弟、…自分の両親とその兄弟に出逢うまでの記憶


私を頼るくらいだから決していい人生を送ったとはいえないような記憶もたくさん見てきた

けれど、ここまで衝撃的で辛い記憶は初めて

唇を離すと、エースは口元を押さえて、顔を真っ赤にした

乙女か

そんな辛い過去があったなんて塵一つも分からないくらい明るいエースに、この記憶はたとえなにをもらおうと話しちゃダメだ、ってこんなこと初めて考える


とりあえず、目の前の乙女にはバレないようにしないと





「ごちそうさまでした」

「え、あ、え、!?」

「ホントにしてんじゃねーよい!!!くそ!!!!エースだけずりーよい!!!!!!」


「見ててね、エース」

「は、」





私の腕をつかんで引き寄せようとしたマルコに、私はエースだけに聞こえるような声で話しかける

鼻から息の抜けたみたいな声を出したエース

私の後頭部を押さえたマルコを見て、私は右手を炎に変えてさっき見た通りに技を繰り出す





「"十字火"!!!」

「!!うおっ、」「!!なっ!」

「うーん、やっぱり威力はちょっと落ちるかぁ」

「こっ殺す気か!!?」

「マルコなら避けれるって分かってたからいいじゃん、説明するより見せた方が分かりやすいし」

「今、俺の、!」

「これが私の"コムコムの実"の能力だよ、キスした相手の能力とか技をコピーしちゃうの。今回のお代はこれでじゅうぶん!まいどありー」





そう言って、なんかぶつぶつ言ってるマルコとまだ顔が赤いエースを外に出す

噂が流れてるんなら明日あたりにこの島を出よう

次はどんな島だろうなー


マンションの柵みたいなところから2人を見送る

そしたらエースが急にUターンしてきた

マルコはまだぶつぶつ言ってて気づいてないみたい

柵をはさんで目の前にエースが立つ

こう立つと改めて身長差を実感する





「どうしたの?」

「さっきの実の能力、最初にコピーしたのは誰なんだ?」

「え?」

「!あ、いや、なんか気になってさ、あはは、!」

「…ホントにエースって珍しいよね、こんなこと聞いてくる人なんて初めて。私に能力を気づかせたのは私が抜かしたくてたまらなかった人だよ」

「、そうなのか!答えてくれてありがとな!」

「ううん、こちらこそありがと」

「…また逢えるよな?」

「もしまたエースが私を見つけることができたなら逢えるかもね」

「!!そうだよな!んじゃまたな!」

「またね、」





核心ついてくるところとか似てるな、なんて久しぶりにアイツのことを考えた




































澱んだ脳内

(でもきっと気のせいだ)









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