ふわふわり

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「おばさん、新鮮な野菜と果物をいくつかお願い!」

「任しときな!」





いま私がいる島は夏のちょっと春寄りの島

名前は…、忘れた

この島はあったかい気候のおかげで果物とかが有名らしい

長居する気はもちろんないけど、宿屋はあんまり好きじゃないから家具がついてる小さい部屋をいつも通り借りた

海が近くてベランダもあったから今日はそこで新薬について考えよう、なんて考えながら近くの市場に足を運ぶ

まだ来て日が浅いからいろんなお店を回りがてら薬草とかが生えてそうな場所を探してぶらぶら

昨日の晩ごはんは魚がメインだったから今日は野菜メインにしようと思って鮮やかな野菜とかが並ぶお店に入る

日陰になってるからかお店の中はひんやりしてて気持ちいい





「お嬢ちゃん、旅人かなにかかい?」

「ちょっと違う気もするけど、なんでそう思ったの?」

「小さい島だからみんな家族みたいなもんだからね、見たことない顔だとすぐに分かるのさ!ちなみにお嬢ちゃんはいつまでこの島にいるご予定だい?」

「私の気が変わるまで、かな」

「ははっ、いつだろうねえ!」

「私も分かんないや」

「まぁこの島は楽しいところだからゆっくりしていきなよ?…よし、できた!1300ベリーだよ!」

「はい、ちょうどね!ありがとう!」

「またおいでー!」

「はーい」





おばさんから紙袋いっぱいに入った野菜とかを受け取ってお店を出た

袋の中には赤色、緑色、黄色、色とりどりの野菜が入れられてて、あの金額でこの量だしなんだか得した気分だ

この野菜とかを使って今日のメニューはなににしようかな、なんて考えながら家に帰る道を歩く

たしかにおばさんの言う通り市場の人たちはとても仲が良さそう


腰の愛刀の柄が紙袋に当たってちょっと歩きにくい

今度は肩にかけられるような大きな手提げかばんを持って来ないと

あ、でも明日は市場と反対方向にあるジャングルみたいなところまで薬探しに行ってみようかな

もしかしたら図鑑に載ってないような薬草が見つかるかもしれない


そしたら、道の真ん中で海賊らしい男2人が5歳くらいの男の子になんだかつっかかってた

聞こえる怒声によると、その男の子が遊んでたボールがその2人組に当たったらしい

男の子は泣いていて、余計に2人組を苛立たせる

きっとこの島の住人じゃないんだろう

道のほかの大人たちも助けたいみたいだけど2人の腰にある剣とピストル、あと腕に入れられた海賊のシンボル、どくろのマークが怖くて助けられないらしい

見たことないどくろのマークだから、どうせ見た目だけの海賊だ


周りの大人たちはその男の子を知ってる。さっきのおばさんが言った通り

心配してる

でもその瞳には恐怖の感情も見れる

海賊に対してじゃない

あとたまに近くの大人と大人がアイコンタクトしては、どこかある一点を見つめた

私もその視線の方向を見て、すべて納得する


私は道の隅に買ったばっかりの野菜とかが入った紙袋を置く

それから腰に巻いてたバンダナで口元を覆うみたいにして結んだ

私が愛刀の牡丹を抜きながらそちらに歩み寄れば、海賊はもちろん、島の住人たちもビックリした表情を浮かべたのを横目で見る





「弱い子いじめはやめた方がいいんじゃない?」

「なんだお前は!!!」

「刀持ってるからって調子のってんじゃねーぞ、女!!」

「こっちにだってピスト、」

「ピストルが、なんだって?」

「ひっひぃぃいいいい!!」

「やっやべーぞコイツ…!」

「ピストル持ってるからって、調子のってんじゃねーよ」

「!!こ、こんな島早く出るぞ!!!」

「ああ!!」

「ばいばーい」





ピストルを半分に切ってやれば、簡単に怯えだした2人

ホント見た目だけだな

さっきの言葉を返してやれば、転がるようにして逃げていった


私はバンダナを取りながら紙袋のところまで行って、1番上にあった真っ赤なリンゴを手に取る

それからまだ泣き続けてる男の子のところに戻れば、男の子はおもしろいくらいに肩を震わせた

まぁそれはそうだよね、目の前で助けてくれたとはいえピストルを切った女が目の前にいるんだから

そんな男の子に、真っ赤なリンゴを差し出すと驚いたように私を見た





「怖かった?もう大丈夫。男の子が泣いちゃだめだよ、ほら、これあげるから泣き止んで!」





そう言えば、一瞬にして辺りは喝采で包まれた

大人たちは私を中心に円になって、私にたくさんの誉め言葉を与える

自分ができなかったくせにね


それを軽く笑顔であしらってると腰に巻いたバンダナが引っ張られてそちらを向く

そこにはさっき助けた男の子

リンゴを大事そうに抱きながら私に笑顔を向けてた





「おねーさん、ありがとう!!」

「いいよ、気にしないで?」

「もし良かったらこれから僕のお家に行かない?前におとーさんが、助けてもらったらきちんとお礼しなさいって言ってたから!」





男の子が指差す先はさっき大人たちが見てた場所

それは、少し離れたところからでも分かる大豪邸

たしかあそこにはこの島の偉い人が住んでた筈

私はまた笑った





「なら行かせてもらおうかな!」





ほーら、やっぱりコイツら(大人たち)も人間だ




































嘲う、わらう

(なにが家族みたいだ)
(結局最後に1番可愛いのは自分だろ)

(まぁ私が言える立場じゃないのだけは確かだな)









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