人魚の進化論
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入学式でもねーのに、始業よりも前に全校生徒が鏡の間に集められた
またなんか表彰かなんかされんのかな
めんどくせーけど、来なかったら転移魔法使ってでも無理矢理出席させられるから来るしかねーし腹立つ
今日はなんかざわざわ周りがうるせー
いつもの集会前のざわつきとはなんか違う
色めきあってるていうか、浮き足立ってるていうか
アズールはなんか契約どうたらで、遅れてくるらしい
隣のジェイドはちらちら俺を見てくるし、この集会終わったら絶対問い詰めてやる
ここまで、なんにも言わなかった俺を褒めてほしい
まじで、腹立つ
全部腹立つ
「さーて、皆さん集まりましたね。今日集まっていただいたのは、このナイトレイブンカレッジに短期の転入生が来るからなのです!いやあ、このナイトレイブンカレッジが栄えある転入先、社会勉強の場に選ばれるのは本当に光栄なことなんですよ!!」
「じゃあ、あの噂って本当なんじゃ・・・」
「嘘だろ!?俺一目でいいから生で見てみたかったんだ!」
「俺、初めてこの学校入学して良かったと思ったんだけど」
「今回は異例の女子生徒です!他の共学や女学院も悩まれたそうですが、お父様やお兄様が通われたこの学校がいいということで、急遽この学校への短期転入が決まりました!本当に誇らしいことです!!粗相のないようにほんとーうによろしくお願いしますよ!!!粗相なんてしたら貴方達だけでなく私の首まで飛びますからね!!」
「この学校のスポンサーって聞くもんな」
「たしかに、毎年マジフト大会に来てんの見るけどその子が来てんのは見たことねーよ、俺」
「それまでずっと海の中で生きてたから、人間の足で歩くのが慣れなくて、最近やっと歩けるようになったって聞いたぜ?」
「え、じゃああの許嫁になるかもしれないって噂ももしかして・・・」
「珊瑚の海、アトランティカ王国が末娘、なまえ様です!!」
ざわざわ
周りの奴らの声がうるさい
俺の知らねーところで、噂は流れてたらしい
周りの奴らの声を拾えば、頭が冷えていくような感じがした
俺らの出身地で、スポンサーができるくらい金があって、女で、
聞けば聞くほど1人しか当てはまらねー
最後の学園長の紹介が決定打
紹介と同時に、鏡がぴかっと光って、人影が映る
それから、アズールに手を引かれて、赤色が見えた
海の中と同じように艶やかな赤い髪
まるで海みたいな澄んだ青色の瞳
思い出した
誰かさんが嬉しそうに言ってた
私の髪の色は陸の世界で韓紅って呼ばれてるの!
赤色の中でも美しくて鮮やかな色だ
俺達の間で有名な伝説の人魚姫と同じ赤色と青色
違うのは尾の色だけ
なまえは、尾と同じ半色をしたワンピースを着て、足元にやってた目線をあげる
きらきらした瞳
海の中で浮かんでいくあぶくみたいにきらきら
あの頃となんにも変わっちゃいない瞳だ
変わったのは、あの頃よりもちょっとだけ高くなった身長と女らしくなった顔つきと体つき
周りのざわめきが大きくなる
鈴を転がしたような声も、伝説の人魚姫サマと似ているのを忘れてた
「アズール、エスコートありがとう。・・・アトランティカから参りました、なまえです。短い間ですが、この学校で勉強させて頂くことになりました。ここでは一生徒ですので、お気軽になまえとお呼びください。よろしくお願いします」
そう、あの時だって社会勉強だった
なまえの言葉に、アズールが離れて寮長達の並びに入る
横目でふいとジェイドを見れば、珍しくバツが悪そうに俺を見てて、ばちっと目が合った
アズールとジェイドはなまえがここに来るのを知ってたんだろう
それを俺に伝えるべきか今日の今日まで悩んでたってわけだ
今は2人へのイラつきよりもなまえにいろんな感情が浮かびすぎてもうどうでもいい
噂の中にあった許嫁ってなに
目が離せねぇ
どきどきばくばく
心臓の音がうるさい
なまえがお辞儀してた顔を上げて、寮長達の列に並ぼうとする
踏み出した瞬間なまえの身体が傾く
ばかじゃねぇの
慣れてない陸になんか来るからじゃん
思わず身体が動く
でも、それよりも早く、
「馬鹿か、まだ完璧に慣れてないんだろ。無理すんな」
「あ、レオナ様・・・、ありがとうございます、助かりました」
「ほら、そのまま支えといてやる。ここじゃお前はただの雌なんだろ?ならそんな呼び方やめろ 」
「うふふ、そうですね。なら、レオナ先輩ですかね?」
「・・・それでいい」
支えたのは、ウニちゃんとこの寮長
腰を抱えて、ごく自然に
それから、腰を支えてなんにもないようにエスコートする
さすが、いつもはさぼってばっかだけど、王族出身でエスコートなんてお手の物らしい
なまえはされるがまま
は?なにやってんの、やめての一言で終わんだろ
仲良さげに話す2人
周りのざわめきが大きくなる
あの時よりも胸が苦しくて痛くなった
靴は小物入れ
(さて、どんな言い訳をしましょうか)