日だまりこまり

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蛍に送ってもらって家に帰ると、翔陽に抱きしめられて、大丈夫かってものすごく心配された

奥からお母さんも覗いてて、蛍を今度紹介するように言われて首を傾げる

そこにまた翔陽が反論して、玄関の廊下はとても騒しいものに

それから、晩ご飯を食べて、翔陽と今話題の漫才番組を見ながら笑ってると私のスマホが震えた

あー、このコンビほんと面白いなあ

お母さんも呆れるくらい翔陽と久しぶりに爆笑してたのに

翔陽に一言謝りながら、スマホを持ってリビングを出る

ディスプレイにはクロの文字

嬉しくてびっくりして、とりあえず自分の部屋まで駆け上がってから通話ボタンを押す

耳に押し当てれば、眠そうな声が聞こえた





『よォ、起きててよかった』

「そんなにガキじゃないからね、私」

『そら初耳だ』

「はいひどい!」

『ジョーダンだろ?怒んなって』

「怒ってないしー。あ、この前はちゃんとメールありがとう!ほんとにプリンだったね」

『言ったろ?』

「で、安定のクロは寝癖」

『それも言ったじゃねーか』

「ほら、怒んないでよー」

『うっせ』

「えへ、やり返し。あれ?そういえば私クロに電話番号教えたっけ?前は家の電話だったし」

『さっき電話したらおばさんがでて、まだ帰ってきてないからって教えてくれたんだよ。つか!!お前帰ってくんの遅いんだよ!!それも男子とあんな時間までとか、』

「クラスメートで、部活の仲間になる予定の子だよ」

『お前なあ…………。はあ、ただでさえお前、同期と同じ家なんだろ?』

「翔陽?同い年だよー!」

『ほんとずりい。お前もう俺ん家住めよ』

「意味わかんないから。あ、今更だけど今日はどうしたの?お祝いごとはなかったよね?」

『…………なんか用事なかったら電話しちゃいけねーのかよ。声が聞きたかったじゃダメなのかよ』

「え、」

『逢ったのなんて何年前だよ。前までは家族に馴染むまでと考えてたらいつのにか受験前だしよ、久しぶりに声聴けてまた聴きたくなって電話したらでねーし、挙句の果てにほかの男子と逢ってるとか』

「く、クロ、どうしたの?」

『あ、………、じょっジョーダンに決まってんだろ』

「だよね、あは、は……!」





クロの声

まるで漫画みたいなセリフ

とくんと、それも漫画みたいに心臓が高鳴った気がした

顔が赤くなっていくのが自分でも分かる

電話でよかった

無意識に、もらったペンダントを握り締める





「………あ、私、また高校でも男バレのマネージャーになる予定だよ」

『お前もできるんだけらすりゃあいいのに』

「私はクロと研ちゃん、翔陽みたいに天性の才能なんてないよ」

『磨けばいいもん持ってる』

「私は見てる方がいいの。中途半端な才能だから」

『……俺と研磨はまた強くなった。お前んとこの高校はどうなの?』

「私まだちゃんと見たことないんだよね、だから分かんない。けどいい部活だと思うよ」

『由飴の高校と試合とかできる日は来んのかねえ』

「やるとしたら地区違うすぎるから全国かな?それか練習試合?」

『監督に話聞いてたら、ウチと烏野?ってなんか因縁あるんだと』

「なにそれ!」

『猫と烏でゴミ捨て場の決戦っつって、近所の人らもよく見に来てたらしい』

「すごいネーミングセンスだね」

『まあ由飴のチームと試合できるの祈ってる』

「絶対勝つよ」

『……お前、昔から変なとこで真っ直ぐだよな』





スマホ越しにボフッて音がした

たぶんベッドにでも寝転んだのかな

私もベッドに寝転んだ

窓から見えた空にはちょうど満月が浮かんでる

なんだか赤っぽく見えた気がした





「月が、綺麗だね」

『、は?』

「え?」

『お前、っは、』

「今日の月、満月で綺麗じゃない?」

『……あっ、はは、そうだよな。由飴がそんな洒落た言葉知ってるわけねーよな。わり、』

「え、なにそれ」

『ちゃんと返してやるよ。死んでもいいわ』

「死んでも?」

『ほーら。分かんねーだろ?』

「………調べる」

『それはなし』

「じゃあ教えてよ!」

『それもなーし』

「じゃあ分かんないじゃん!」

『それでいいんだよ』

「…クロのばか」

『分かんない由飴の方がばかだろ』

「…………」

『でも聞いてりゃ、由飴、特進クラスなんだろ?』

「うん、落ちる覚悟でいったら合格できた」

『担任には?』

「五分五分って言われたかな。お母さんがどうせなら落ちる覚悟でいってみなさいって言ってくれてね」

『それで合格できたんだろ?すげーじゃねーか』

「えっへん!」

『調子のんなばか』

「ひどいなぁ」

『……あ、もうこんな時間か。わり、付き合わせた』

「いいよ、私も久しぶりってほどではないけどクロの声聴けてよかった」

『…メールでも電話でもいつでもしてこいよ』

「うん、もちろん」

『じゃあおやすみ』

「おやすみ、クロ」





電話を切ってもう一度空を見る

ほんとに綺麗な月

寝る前に喉が渇いたからなにか飲もうと思って、キッチンに行くことにした


キッチンに行けば、リビングのソファにもぞもぞと動く影

すこし見えた綺麗な髪色に、緊張感なんて感じることなく近づく

やっぱりそれは翔陽で、大きな口を開けて寝てるみたい

キッチンでお茶を飲んで戻ってみてもまだ寝てた

ま、当たり前か

L字型のソファで、わたしも空いているほうに寝転んでみる

すぐ近くには翔陽の顔があって、なんとなく頬をつついてみた

そしたらすごくぷにぷにしてて、触り心地がものすごくいい

思わずずっと触ってしまう

すると眉間に皺がよったと思ったら、その次の瞬間触ってた手を掴まれて、びっくりした

そしてそのままふにゃふにゃ〜とか言いながらまた寝たらしい

え、離してくれないの

気持ちよさそうに寝てる翔陽を起こすのは気が引けるし、私はため息をついた


私はもう片方の手で人気のコミュニケーションアプリを開く

開いてなかった友達からの通知を開いて返していく

ああ、利き手じゃないから打ちづらい

中には西谷先輩もあった

内容は新発売のアイスについて

今度コンビニに行ってみよう

クロから研ちゃんも紹介してもらって、なんやかんやで続いてる

そういえば、なんでこっちで電話してこなかったんだろう

何日か前でトークが終わってた飛雄くんのトーク画面を開いて、明日試合頑張ろうねとだけ送っておく

まだ日にちは変わってないよね?


ここでもう一度、私の手を掴んだままの翔陽に視線を向ける





「明日は、勝とうね」





翔陽が笑った気がした


























微笑み太陽

(あらあら、こんな所で2人共寝ちゃって………)







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