日だまりこまり

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「ふぐうっ!!!」

「あ、わるい」

「影山くん鬼畜………!」





ボーっとしてた翔陽の顔面にいつもよりは当たり前だけど軽い殺人サーブをお見舞いした影山くん

謝る言葉も棒読みだったし、草原で悶える翔陽を見て笑顔浮かべてるし、なんていうか、鬼畜

今日で何回目かな

それからなんとか立ち上がった翔陽に球を打って、次はレシーブをミスったみたいで球はちょうど木の枝に挟まってしまう

ほんとに、仲良くする気あるのかな





「外でやる時は手加減しろって言ってんだろぉぉお!!」

「お前がちゃんとレシーブすればいい話だ!!」

「このっ!……王様がっ」

「あ!?」

「ほ、ほらっ、1回休憩しよ!」

「………ふんっ、」

「はい、ドリンクとタオル!外だから風当たるしちゃんと汗拭いてね」

「おぉ」





なんだか楽しそうに考えごとをしてる翔陽は一旦放っておいて、草原に腰を落とした影山くんの隣にお邪魔する

座れば、影山くんは驚いたようにこっちを見た

それから、無言で近くにあったジャージを私に差し出した影山くん

え?





「影山くん?」

「っ俺たちは動いてるからいいけど、寒いだろ!だ、だから膝にでもかけとけよ!」

「いいの?影山くんは寒くない?」

「大丈夫だっつってんだろ!つか影山くんなんて他人行儀な呼び方やめろ」

「え、じゃあ飛雄くん、で」

「……まあいいか」

「あとごめんね、翔陽まだ幼いから、冗談と人を傷つける言葉の違いが分からないんだ」

「は?」

「過去になにがあったか私は知らないけど、あの異名言われるの、嫌なんだよね?さっきすごく傷ついた顔してたような気がしたから」

「!」

「だからごめんね、翔陽の代わりに私が謝るよ」

「…な、なんで由飴が謝るんだよ」

「たぶんいま翔陽に謝れって言っても、それは心から反省したものじゃないからかな。それじゃあ意味ないでしょ?」

「由飴……、」

「由飴はどの異名が………ってなに王様なんかと仲良くしてんだよ!?」

「王様って呼ぶんじゃねェ!!あとほっとけ!!!」

「練習再開すんぞ、練習!!」

「当たり前だ!」

「え、休憩ちゃんとしないと、」

「したから!!」「した!!」

「…そ、それはごめんなさい」





私が悪いんですね、了解です


ものすごく短い休憩のあと、また練習再開


翔陽の苦手なレシーブ練習で、その後も何回かボール飛ばしてた

私は週明けにある英単語のテストに向けて単語帳と睨めっこ

か………じゃなかった、飛雄くんの声掛けが聞こえて、次に聞こえたのは聞き慣れすぎたクラスメイトの声だった





「へー、ホントに外でやってる!」

「ムッ、」

「君らが初日から問題起こしたっていう1年?」

「げっ、Tシャツ!?さむっ」

「で、でけ………!!……!…か、返せよっ!!」

「"小学生"は帰宅の時間じゃないの?」

「むかつくなお前!!!だっ誰なん「入部予定の"ほかの1年"か?」おいっ」

「そうだとしたら?」

「おい!俺が話し「お前身長は?」無視すんな!!」

「ツッキーは188cmもあるんだぜ!もうすぐ190cmだ!」

「!ひゃくきゅっ……!」

「なんでお前が自慢すんの、山口」

「あっ、ゴメン、ツッキー!」

「……アンタは北川第一の影山だろ。そんな"エリート"、なんで烏野にいんのさ」

「、あ?」

「おっおい!!!」

「「?」」

「明日は絶対!負けないからな!!!」

「………………あ、そう」

「は、」

「君らには重要な試合なのかは知らないけどこっちにとっては別にって感じなんだよね。勝敗にこだわりないし、君らが勝たないと困るなら…手、抜いてあげようか?」

「なんだーっ!!!?」


「翔陽、飛雄くん、しゃがめ」


「え?」「!はいぃっ!!!」

「!!!う"っ、」

「ツッキー!!!?」

「うわ、いたそー……」

「え、は。え?」





河原みたいなところは上の道から見えにくいことに加えて、蛍たちは翔陽たちばっかりに視線がいってたから私には気づいてなかったらしい

話を聞いててむしゃくしゃしたから思わずハンドボールのシュートする勢いで斜面かけあがって持ってた単語帳を蛍の顔面に投げた

それはジャストミートに直撃

今ばかりは人よりも少しだけ優れた運動能力に感謝する

私のイラついた声に、翔陽は条件反射で敬語で返事して、飛雄くんの肩を掴んでしゃがんだみたい

飛雄くんと蛍たちはなにが起こったか把握できてないように見えた





「え、日向!!!?」

「単語帳がすごいスピードで……。え?」

「は、はい、単語帳、由飴」

「ありがと、翔陽!蛍たちもバレー部だったんだね」

「今のやつ全部なかったことにして普通に話しかけてきた!!?」

「……な、なにすんの、由飴」

「え、むしゃくしゃしたから八つ当たり」

「はいストレート!!」

「山口も、蛍ちょっと止めてよ。山口は思考回路が蛍に染まってないって信じてる」

「…知り合いかよ、由飴?」

「うん、隣の席の子とクラスメイトです」

「……じゃあマネージャー志望っていうのは由飴ってわけね」

「大正解です」

「なに、じゃあ由飴の幼なじみってやつは王様?それともこの小学生?」

「飛雄くんと翔陽って名前があるから」

「……ふーん」

「つかお前、その呼び方、」

「あ、ホントなんだね、"コート上の王様"って呼ばれるとキレるって噂。すごくピッタリだと思うよ、"王様"!」

「…なんなんだ、てめえ」

「県予選の決勝見たよ」

「!!」

「あーんな自己ちゅーなトス、よく他の連中我慢してたよね、僕ならムリ。……ああ!我慢できなくなったから"ああ"なったのか!」

「!っ!!!」

「ツッキー!!」
「!?」
「飛雄くん!!!」

「…………………切り上げるぞ」

「!え、あ、おいっ」





飛雄くんは蛍の胸ぐらを掴んで、憎々しげに離した

置いてたカバンとかを荒く持って帰ろうとする

それを焦ったように追いかける翔陽

私も追いかけようとすれば、腕を掴まれた

振り向けばいつもの笑顔の蛍

そう、いつもの笑顔

……あれ?いま冷静に考えたら私蛍になにした?

黒いオーラが見える気がする

これは幻覚ですか?いいえちがいます

今日習ったばかりの反語が頭の中に浮かんでくる





「あ、そうそう。このば………コイツ借りるね」

「いまバカって言おうとした!!」

「お前なんかに貸すわけ無いだろ!」

「せめて人間扱いしてほしいかな!」

「由飴に触んなよ、離しやがれメガネ」

「僕の顔に英単語帳投げつけてきたんだよ、このまんまスルーで終わらせる筈ないデショ?安心しなよ、帰りは仕方ないけど送っていってやるから。…帰るぞ山口」

「オッケー、ツッキー!」

「じゃあネ」

「由飴!!!」

「い、生きて帰ってくるからね!!」

「縁起でもないこと言うなよ!!?」





とりあえず、もう逃げるのは諦めるから蛍の腕と脇を使って私の首を閉めるのやめていただけませんかね

いい匂いってところに腹が立ちます








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