日だまりこまり
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それから、早朝は体育館で、放課後は学校の近くの草原で練習
私はコートを着てそれを見てたり、私もボールで遊んでみたり
翔陽たちはものすごく頑張ってて、心から応援したいって思えた
この数日で影山くんや朝練に秘密で来てくれてる先輩とは仲良くなれた気がする
そんな水曜日の放課後
いつも通り外での練習に行く前に先生に頼まれて回収したこれからの行事のアンケートを職員室に出しに行こうとしてた時、前にも聞いたことがある大きな声が聞こえた
思わず持ってたカバンを落としそうになる
「あぁー!!!!!!!」
「!う、わっ」
「おっ俺のこと覚えてるか!!?」
「えっと、ガリガリ君が好きな西谷先輩、ですよね?」
「よし満点だ!」
振り向けば、とっても笑顔の西谷先輩がいた
あの駐輪場で逢った以来見かけることはあっても立ち止まって話したりすることはなかったから久しぶりっていったら久しぶりなのかもしれない
先輩は私の手にあるアンケート用紙を見て、なにかを納得するように声を出した
「学級委員かなんかしてんのか?」
「はい、学級委員やってます」
「よくそんなめんどくさそうなことするなー」
「…隣の席の子からの推薦です」
「同じ中学とかだったのか?」
「?違いますよ」
「ふーむ!あ、メアドかラインとかのID教えてくんね?悪用とかは絶対しねーから!!ただ純粋に日向さんとメールとかしてみてーだけだから!もし嫌だったら無理にとは言わねーし」
「悪用しないんでしたら全然いいですよ!むしろ先輩ですけど友達が増えて嬉しいですから」
「ッおっしゃ!!!!!俺も嬉しいぜ!!」
「ならよかったです!」
センパイにIDを教えれば、友達の欄にセンパイの名前が増えた
それだけで簡単に頬が緩む
それから、駐輪場と職員室の方向は同じだから廊下を並んで歩く
言っちゃ悪いけど身長差に泣きそうです
「あ、つかプレゼントあるんだよ!」
「プレゼント、ですか?」
「ほら!これだ!!」
「え、あ、これって、」
先輩がゴソゴソとカバンを漁って、嬉しそうにキラキラ光る赤いものを取り出した
拳くらいの大きさの林檎飴
思わず声をあげそうになる
私の大好きなこれは夏とか秋とかのお祭りの時しかなくて、あんまり食べれない
こんな中途半端な時期になんで?
「今日逢えてよかったぜ!昨日たまたま親戚おっちゃんが家に来てさ、そのおっちゃん、祭りで林檎飴とか作ってるみてーで持ってきてくれたんだよ!んで、それ見て最初に思いついたのが日向さんでさ、すんげー渡したかったんだ」
「いっいいんですか……?」
「おう!そのために持ってきたんだからな!逆にもらってくれねーと俺が困るし」
「っありがとうございます!」
「ほんとに嬉しそうな顔するんだな!やっぱそうやって笑ってる方が日向さんは可愛いぜ!」
「いっいやわたしなんて、」
「可愛いって!」
「お、お世辞でも照れます」
「お世辞じゃねーし!………あ、もう職員室か。んじゃな、日向さん!また連絡するから!」
「はっはい!」
そう言ってパタパタと廊下をそのまままっすぐ走っていった西谷先輩
相変わらず、なんであんなセリフをさらりと言えるんだろう
私の手には林檎飴とアンケート用紙
小さくなっていく西谷先輩の背中を見つめてると、ちょうど職員室の扉が開いて担任の先生がでてきたからアンケート用紙を渡す
とても不思議そうな顔をされた
それからいつもの草原に向かう
「あ、由飴!!」
「影山くん!今から行くの?」
「おぉ。アンケート書き忘れてて呼び出されてた。由飴は?」
「私は学級委員だからそれの提出だよ」
「あー、そういや推薦されたって言ってたな」
「うん、めんどくさすぎるね、本音言っちゃったら」
「つか林檎飴?」
「え、これ?」
「それしかねーだろ」
「先輩にもらったの!」
「先輩?」
「うん!この前たまたま知り合った先輩」
「………それほんとに大丈夫なのかよ?」
「?なにを心配してるか分かんないけど大丈夫だよ!」
「分かんねーのかよ!つかなんで林檎飴なんだ?」
「私の好きなもの、だからかな」
「好きなもの?」
「うん!だってキラキラ光ってて綺麗だし、ちょっと甘ったるいところも、全部全部好きなの。影山くんはお祭り好き?」
「…人混みはあんまり好きじゃねー」
「たしかに苦手っぽいよね、影山くん。毎年近所のお祭りに翔陽と行ってて、一緒に行けたら、って思ったけど人混みが苦手なら仕方ないね」
「!!………しっ仕方ねーから暇なら行ってやる。人混みくらい我慢してやるよ」
「ほんと?なら今年のお祭りは余計楽しみだなー」
「由飴!!!となんでお前がいるんだよ!!?」
「たまたま来る途中で逢った」
「っ早く練習すんぞ!!」
「がんばれー」
ちょっと寒い中での林檎飴も、いいかもしれない