日だまりこまり

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「ふぁぁぁああ……」

「ほーら、起きてー!」





次の日朝5時前

翔陽がこいでくれた自転車の荷台から降りて、カゴに入れてたカバンを取った

がんばって朝からつくったおにぎりと、昨日の残りの味噌汁を温めて水筒に入れたのが入ってる

体育館に行きながら、翔陽はものすごく眠たそうに欠伸

たしかに5時は早いよね

あ、私も欠伸がうつったみたいだ





「……由飴はどっかで寝ててもいいよ?」

「何回も言うけど、私はいいの。翔陽は私のことなんて気にしないで練習して!」

「う、うん!………あ、」

「ん?あ、影山くん、おはよう」

「…はよ。日向も来たのか」

「うん、嫌だった、私がいたら?」

「!いや、そういう意味じゃねえよ」

「ていうか日向ってややこしいでしょ?下の名前でも、変なあだ名以外だったらなんでもいいよ。あ、翔陽の方変えてくれてもいいけど」

「………じゃあ由飴、って呼んでもいいか、?」

「ぜっっっったいダメだ!!!!!!」

「なんでオメーが返事すんだよ!」

「私は全然いいよ!そっちのが反応しやすいし」

「ダメだダメだダメだ!!」

「はーいはい。……あ、鍵閉まってる」

「じゃあ入れる窓探す」

「見つかったらやべえだろ、バカか!」

「翔陽、肩車して!私あの窓からならいける気がする!!」

「由飴!?」


「やっぱキッツイなー、5時は。まだ暗えよ」


「!田中さん!?」

「あ、先輩」

「にしし、7時前には切上げろよ?」

「「「!!!」」」

「たっ体育館の鍵!ありがとうございます!!」

「た、田中さぁぁああん!!!」

「あざス!!」

「わはは!なんていい先輩なんだ、俺!田中先輩と呼べ!」

「田中先輩!」

「わはは、もう1回!」

「田中先輩!!」

「わはは!」





鍵を持ってきてくれた田中先輩

すごくいい先輩だ

そういえば昨日朝練の時間を大声で言ってた先輩かな

…今考えたら私たちに教えるために大声で言ってくれたんだよね

あとでお礼言わなきゃ

ていうか田中先輩の名前も今知ったし、ほかの先輩の名前もあとで聞かないと


先輩が鍵で開けてくれて、体育館の扉が開く

私は翔陽と影山くんの後ろを歩いてたんだけど、2人がどっちが先に入るかでまた張り合ってて思わず呆れた

そんな2人に、いい加減にしてほしかったから背中を思いっきり押せば、2人して体育館に顔面からダイブ

田中先輩の驚いた顔が見えた





「な、なにするんだよ、由飴!!」

「!?、?」

「影山なんて、なにがあったか本気で分かってねーぞ」

「だって昨日言った意味も分かってなそうだったし、ただでさえ時間ないのにもったいないでしょ」

「…ごめんなさい」

「ちょっと電気つけてくるから待っとけー」

「はい!!」

「ごめん、影山くん、痛かった?」

「だっ大丈夫だ、」

「影山くんて結構子供っぽいんだね、もっとクールなんだと思ってた!」

「は?」

「だって翔陽みたいなタイプ、軽く受け流して放っておくと思ってたけど一緒に張り合ってるし」

「俺みたいなタイプってなんだよ!」

「悪い意味じゃないから」

「………悪いかよ」

「んーん!私はそっちのが好きだよ!」

「!、そうか、」

「あ!電気ついたね!」

「うはー、寒っみいなー!!ちゃんとアップとれよー」

「はい!」

「じゃあストレッチ、ダッシュ、パスだけすんぞ」

「お前が決めんな!!」





そう言ってまた軽く喧嘩をしながら体育館の真ん中に歩いていった

喧嘩するなって言ってるのに…

また呆れながらそれを見てたら、横で盛大にお腹の音が鳴った

音のした方を見てみれば、お腹を抑えてる田中先輩と目線がバッチリ

それから田中先輩の顔がだんだん真っ赤になっていって、あたふたし始める

そんな先輩に、思わず笑ってしまった





「いや、あのだな……!」

「朝ご飯食べてこられなかったんですか?」

「…ねっ寝坊しちまったんだよ」

「もしよかったらおにぎりと味噌汁ありますけど、飲みます?」

「い、いいんスか?」

「はい、でも朝練前に食べても大丈夫ならですけど」

「!!あざス!!!!」





頭を下げてくれる田中先輩に、頭をとりあえずあげてもらって、カバンの中から持ってきたおにぎりと水筒を取り出す

紙コップにお味噌汁をついで渡せば、湯気がもわっと広がった





「おにぎりの具は鮭と梅しかないですけどどうぞ」

「、いただきます」

「あ、あと、昨日私たちに朝練が始まる時間教えてくれようとしてあんな大声で言ってくださったんですよね?本当にありがとうございました!おかげで今練習できてます」

「いやきっ気にすんな!俺は先輩として当たり前のことをだな、」

「その当たり前が私たちにとってはものすごく感謝できることなんです、ありがとうございました!」

「………」

「!え、涙が前に!?」

「潔子さんとはタイプが違うけど可愛すぎる、可愛すぎる。なんだこの子。おにぎりも味噌汁もくそ美味いしくそ女子力あるし。…うっうおおぉぉぉおおおおお!!!!!!!!!」

「え、は、え?」





ものすごいスピードでなにか言ったと思ったら、次は叫んで翔陽たちのところに走っていった

きちんとおにぎりと味噌汁は完食済

先輩にタックルされた翔陽は軽くふっ飛んでる

あの影山くんでさえ違う意味で叫んでるし

なんだか楽しそうだ


次の瞬間体育館の扉が開いた

そこには昨日体育館にいた先輩

名前はまだ知らない

田中先輩がまた叫んだ

スガさんっていうらしい

田中先輩のこれまた先輩ってことは、田中先輩が2年生でスガさん先輩が3年生なのかな

でもこの練習ってバレちゃまずいんじゃ、





「おー、やっぱ早朝練か!」

「なんで……!??」

「だってお前昨日明らか変だったじゃん!いつも遅刻ギリギリのくせに鍵の管理申し出ちゃって!」

「えっ、あっ、くっ………!」

「大丈夫大丈夫、大地には言わない!なーんか秘密特訓みたいでワクワクすんねー」





それからまた練習再開

でもさっきとら違って田中先輩と菅原先輩、もといスガ先輩も入った
(さっきスガ先輩に自己紹介してもらえた)

影山くんと田中先輩はスパイク練習、翔陽とスガ先輩は翔陽が苦手なレシーブ練習

田中先輩がスパイクを打ってる姿を見て、翔陽は目を輝かせる

あ、頭にボール当たったし





「オレもスパイク打ちたい!!オレにもトス上げてくれよ!」

「……」

「お前トス大好きなんだろ!?じゃあオレにも上げてくれよ!1本だけ!試しに1本!なっ?」

「……………嫌だ」

「「「!!!?」」」

「なんだよ、ケチか!!」

「そーだそーだ!」

「レシーブあってのトスと攻撃だ、レシーブがグズグズのくせに偉そうなこと言うな。土曜の3対3でもトスは極力田中さんに集める。攻撃は田中さんに任せてお前は足ひっぱらない努力しろよ」

「………お、おれが満足にレシーブできる様になったら、お前は俺にもトス上げんのか」

「……"勝ち"に必要な奴なら誰にだってトスは上げる。試合中"やむを得ず"お前に上げることもあるかもな。……でも今のお前が、"勝ち"に必要だとは思わない」

「!!」

「それにレシーブはそんな簡単に上達するモンじゃねーよ。…そろそろ時間だ、片付けるぞ」





そのあと翔陽は、初めて私を放って教室に戻っていった














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