日だまりこまり

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「たしか、先生はこの教室だって………」

「その先輩の名前は?」

「……あれ、」

「まさか忘れたとかないよね?」

「そ、そそっそんなわけない、…筈」

「翔陽のバカ」

「でもマネージャーさんってことは覚えてるからっ!」

「それだけじゃん」

「………」





次の日の朝

翔陽と私は3年生の教室がある棟に来てた

もちろん入部届を出すために

でも、いざ来てみれば出す先輩がいる教室はあやふやだし先輩の名前は忘れてるし、どうすればいいんだ

だんだん生徒の数が増えてきて、先輩方にすごくジロジロ見られてるんだけど

そんなことも気にせず翔陽はいろんな教室を覗きこんでは首を傾げての繰り返し

私は、辺りを見渡して優しそうな先輩を探す

口があるんだから聞けばいいよね

そしたらちょうど眼鏡をかけた綺麗な先輩が近くの教室から出てきた

すごく綺麗で、思わず見とれてたけど何秒かたって我に返る

きっちりしてそうだしあの先輩に聞くことに決めた

まだキョロキョロしてる翔陽の手首をもってその先輩に声をかける





「あの、すみません!」

「ん?」

「だっ男子バレー部に入部届を出しに来たんですけど、男子バレー部のマネージャーさんって何組か分かりますか?」

「男子バレー部?」

「はい!」

「それなら私がマネージャー、3年2組清水潔子」

「!そうだ!!清水先輩!!!」

「今思い出しても遅い!あ、じゃあこれ、入部届お願いします!!」

「俺のもお願いします!!」

「澤村…キャプテンに渡しとく。日向、いやどっちも日向みたい、…由飴ちゃんはマネージャーでいいんだよね?」

「はい!」

「さっきも言ったけど、私もマネージャーしてるの。一人だったから由飴ちゃんが来てくれるなら良かった、これからよろしく」

「!!よろしくお願いします!!!」

「あ、由飴!チャイム鳴る、そろそろ!」

「えっ、じゃあ失礼します、しっ清水先輩!」

「失礼します!!」

「うん」





先輩が最後にほんのり笑ってくれた

思わずまた見とれそうになるくらい綺麗な笑顔





「やば、チャイム鳴った!!!!!」

「っ翔陽のバカ!!!!!!」











































「なんで初日からこんなこと私が…………」





その日の授業が終わって、部活行くのに翔陽の教室に走ろうとしたら担任にまさかの呼び止められた

まさかと思って話を聞いてみると学級委員として明日の健康診断の用意をしなくちゃいけないらしい

男子の学級委員の子は初日から風邪を引いてお休み

クラスのみんなの名前の判子と健康診断の結果を書く紙を笑顔で渡されて、思わず蹴ってやろうかとか考えそうになった。ていうか考えて行動に移しそうになった

翔陽に一緒にいけないのと先輩に伝言を伝えてくれるようメールを送って、一回立った席にもう一回座る

視線を感じて俯いてた顔を上げれば入り口のところらへんに山口くんと蛍がいた

言うまでもなく蛍はすごく悪どい顔

今度は我慢することなくカバンにあった保護者へのいらなさそうな手紙を丸めて投げてやった


作業的には難しくないけど人数がそれなりにいるから時間がかかる

やっと終わったと思ったら辺りは真っ暗

教卓の上に出来上がった紙と判子を置いてすぐカバンを掴んで教室から出た

体育館まで走りながら、一人で入るの嫌だなぁとかこんな時間だし終わってないかなぁとか考える

校舎をでて体育館が見えてきた時、入り口らへんに人がいるのがなんとなく見えた

近づくにつれてだんだんはっきりしてきてそれが見慣れた髪だって分かるのにそう時間かからなかった。当たり前

翔陽も私だって分かったのかブンブン手を振ってる

でもいきなりなんか気づいたような表情したと思ったらなにかを追い払うみたいな手の動きをしてきた。擬音語つけるならシッシッ

ムカついたからスピードを早くしたら次は頭を抱え出した

なんなんだ

ここで翔陽の隣にいる人が誰なのか気付く





「影山くん、?」

「!!お前、」

「影山くんも烏野だったんだね!ていうか私のこと覚えてるかな?」

「…日向、由飴だろ、覚えてる」

「!よかった!」

「っもう再会は終わりだ!!ほら、練習終わったみたいだからやんぞ!!」

「そういえば、なんでここにいるの?」

「…いや、その………」

「はっきりしてよ、翔陽」

「……追い出されたんだ」

「追い出された?」

「…"仲間割れしてチームに迷惑かけるやつはいらない"って言われた。そんで入部届も返された」

「あー……、納得。また翔陽が影山くんにつっかかって勝負だとか言ったんでしょ?」

「!元はといえば影山の!!」

「そのせいで追い出されてるんだからこれ以上チームワーク崩すようなこと言わない!それでどうするつもりだったの、さっき翔陽がなんか言ってたけど?」

「勝負して、勝ったら受け取ってもらう」

「………うん、翔陽らしい」

「それを言うんだ、今から!」

「なら私は後ろから見てるねー」

「…ひっ日向はマネージャーなのか?」

「?は、俺は違うに決まってんだろ!」

「お前じゃねえよ!!」

「私はマネージャーするよ」

「!そうか、」

「よし!じゃあいくぞ影山!!失敗すんなよ、せーのでだからな!!」

「こっちのセリフだ!!!」





翔陽と影山くんが体育館の入り口に立ったから私はその少し離れた後ろに立った

いきなり息を大きく吸い込んだと思ったら次に聞こえたのはバカでかい声

その数秒後先輩であろう人たちが体育館から出てきた

それから2人で声を揃えて勝負させてほしいことを話してた。いや叫んでたの方が正しいかな?

だからせーのとかどうたら言ってたのか

ほんとバカ

でもそれに乗った影山くんも同じくらいバカみたい


部長であろう人が話をしだす

あれ、なんか見たことある気がする

ほかの先輩方も

おかしいな

それから経緯は考え事してて聞いてなかったけど、とりあえずほかの1年生と土曜日に試合して、勝ったらいいらしい

負けたらとかどうたら言ってたけど負ける気ないから聞いてなかった





「ああぁぁぁあ!!!!!!」

「!へ、」

「田中うるさい」

「ちょ!!スガさん、あの子あん時の!!!」

「え、は、え?」

「あの大会でマネージャーしてた子か!」

「知り合いだったの、由飴?!」

「…………あ、思い出しました」

「そういや日向のとこの学校のマネージャーだったな」

「その時はご迷惑おかけしました」

「じゃあマネージャー希望の清水が言ってたのって、君?」

「はい!日向由飴です!」

「日向って、日向と双子?あー、ややこしいな」

「いえ、たまたま名字が同じなんです」

「きっきたぁぁぁぁああ!!!!」

「あ、」

「モップかけたんだから走り回るな田中!」

「ごめん、アイツは気にしないで」

「女の子の方の日向さん、」

「はい」

「由飴さんは特に問題起こしてないし普通に練習に参加してもいい。どうする?」

「しょ…日向くんと影山くんは練習参加できないんですよね?」

「あぁ」

「じゃあ私も参加しなくていいです!それで、土曜日からは参加させてもらいます!」

「土曜日から?」

「翔陽たちが負ける筈ないですから!」

「!そうか。じゃあ試合は土曜の午前、いいな」





そう言って体育館の扉は閉められた

帰る途中翔陽がセッターをバカにしてなんか影山くんにキレられてるのを見て、影山くんはホントにバレーが好きなんだなって実感

だってセッターの良さを語る影山くんの目はものすごくまっすぐだったから。それに真剣だったし

ていうかなんでこう2人とも張り合おうとするのかな





『う、オフンッ!!』


「「「!!」」」


『ん"ん"っ、ん"ほんっ!…明日も朝練は7時からですよねーっ!?』

『え、うん、そうだけど。イキナリなんだよ。あとマネージャーなるんだから毎回あれとかやめてくれよ?部活が成り立たない』

『うわぁぁああ!!!!その話今はやめてください!!!』

『あはは、田中の顔傑作だったなー』

『聞いてます!!?』


「「明日…」」

「朝5時」

「遅刻すんなよ」

「オメーだよ」

「じゃあバイバイ、影山くん!また明日」

「…あぁ、」

「べーっ!」

「全然意味分かってないでしょ」





それから、翔陽のチャリを取りに行って校門を潜る

いつも通り翔陽の後ろに乗れば、チャリは進み出した

今日はやけに静かに感じるのは気のせいかな





「明日由飴はどうする?無理しなくていいけど、」

「翔陽のチャリないと学校行けないし、私はマネージャーなんだから行くよ!反対になんで行かないの」

「!そっか。…俺さ、烏野に来てやりたかったことがあるんだ」

「エースになること?」

「それももちろんあるよ!…けどもしかしたらそれ以上にやりたかったこと」

「なーに?」

「この高校で、県内屈指の強豪校に行くであろう影山にリベンジしたかった。ギッチョンギッチョンにしてやりたかった。っけど!!!」

「影山くんがうちにいた?」

「っ!」

「ギッチョンギッチョンにしてやらなくても、いいんじゃない?翔陽の強さを分からせてあげれば!そっちの方がかっこいいと思うよ!」

「由飴………」

「ね?」

「ッうん!」

「土曜日、絶対勝つぞー!」

「おぉ!!!」


































月と太陽

(今日は早く寝ないとなー)
















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