日だまりこまり
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入学式が終わって教室に向かう
翔陽のクラスは1組で私は4組
さっきもらった名簿を見て席に座った
周りは当たり前だけど知らない子ばっかり
うわ緊張する
俯いてたら横の席に座る音がした
思わずそっちを見ればとっても背が高い男子
中学の頃は私と同じくらいの背の男子がたくさんいたのに、って思ったら世界って広いな
「……僕の顔になんか付いてる?」
「!!え、いや、……!」
「…名前は?」
「え?」
「名前はって聞いてるんだけど」
「あ、日向由飴です!」
「ふーん、」
「アナタは……?」
「名簿見ればいいデショ」
前を向きながらそう言った隣の男子
酷くない?とか考えながらも名簿を見る
えっと私の隣の席は……、つきしま…………なんて読むんだろ
ほたる?……いやなんかちがう気がする
蛍の《ほたる》ともう1この読み方を思い出せ、私…!!!
読めなかったら恥ずかしすぎるぞ
たしか、か、き、く、け…………
あ、
「けいだ!!!」
「は?」
「月島蛍[けい]くんで合ってる?!」
「あ、うん、合ってるけど、」
「よかった…!!」
「…バカみたいだよ」
「!!あ、ごめんなさい、つい分かったと思ったら、」
「初めてだよ、君」
「初めて?」
「僕の名前を一発で読めたの。絶対最初は《ほたる》って読むから」
「なんか直感で《ほたる》ではないかなぁって!」
「変なの」
「勘だけはよく当たるから!おかげで中学の頃のテスト、記号問題の正答率スゴかったから」
「それ自慢できるの?」
「女の勘ってやつ!」
「女?僕の目の前に女子なんていないけど」
「いるよ!?目の前!ヒア!!」
「あ、女子だったの、ごめん分かんなかった」
「この子鬼畜だ!!!」
ちょ、無愛想な子かな、なんて調子乗って考えちゃったけど全然違う
人の嫌がる顔とか見て喜びを感じるタイプの人だ
今だってさっきでは考えられないくらい笑顔
笑顔が輝いてる
でも真っ黒い。人を見下す時に浮かべる笑顔だ、絶対
だってなんかすっごい馬鹿にされてるみたいなんだもん!!
翔陽を見習え!!あの太陽みたいな笑顔を見習え!!
「でも頭悪そうだよね、なんでこの学校通ったの?」
「……内申が良かったんだ、きっと!」
「それ自分で頭悪いって言いふらしてるだけデショ。やっぱり馬鹿だ」
「頭悪い連呼するんじゃありません!!」
「母さんみたいなしゃべり方だね」
「お母さんそんな子に育てた覚えはありません!お母さん悲しい……!」
「こんなアホそうな奴に育てられた覚えはないから」
「まぁ!蛍ちゃん口が悪い!悪い子!!」
「うっとうしいからやめろ、それ」
「ツッキー!!!」
「え?」「…はぁ、」
「ツッキーが女の子に話しかけてる?!」
「…うるさいんだけど、」
「あの、えっと…」
「あぁごめん!俺は山口忠!ツッキーの親友ね!」
「誰が親友だ」
「いだっ!」
「私は日向由飴です」
「了解、よろしく!…でもツッキーが女子に自分から話しかけるなんて、明日槍でも降るんじゃない!?俺ずっと席から見てたんだからな」
「コイツが僕の顔ずーっと見てきたから言っただけだし」
「また日向さんもツッキー目当てかよぉ………」
「いや、ただ背高いな、って考えてたら無意識に見ちゃってて、」
「それに馬鹿に目付けられても損するだけデショ」
「さっきからコイツとか馬鹿とか!私にも一応名前あるんだから呼んでくれないかな!?」
「一応ならいいんじゃない?」
「……ほら、頭悪いから忘れちゃったのかちら?」
「……」
「あらつきし「由飴」…え?」
「これでいいんだろ」
「え………、あ、そっそれでいいんだよ…!」
「ほら先生来たから席戻りなよ、山口」
「お、おう!」
「………あと僕のことは名前読めたご褒美に名前でもいいよ、嫌だけど」
「蛍くん、?」
「蛍。蛍でいい」
「じゃあ蛍、で」
「ほら前向きなよ、先生に当てられてるよ」
「え??!」