おさるのマーチ

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さて、ここで一旦一息つく

首を回せば、こきりと音がなった


大猿のターレスが暴れ回ったせいで、建物らしきものは王宮以外もうないし、この星の住人の気を1人も感じることができないから、殲滅は終了だ

すたと王宮の前に降り立てば、後ろで大猿から戻ったターレスも降り立ったみたいだ

あとは、ターレスのいう宝を奪うだけ

守りが固かったのは王宮だけだし、きっと宝もここにある

普段の戦闘力が比例する大猿のパワーを見ても、ターレスの強さはやっぱり思った通りくらいだ

そろそろガムの効果も切れてくるだろうし、2枚目を噛むには時間も微妙だ

あのガムも交換が大変だったから、できれば少なく済ませたい

ここでもし、ターレスが奇襲をしかけてきて宝を奪おうとしても、返り討ちにする自信はあるし、戦闘力が上がった大猿の時に仕掛けてこなかったところを見るとその線は薄い

だから安心して振り向いた

不意打ちだったこともあって、息が止まるかと思った





「大猿にならずにその戦闘力、すげーな」

「カカ、ロット」

「?カカロ?・・・改めて、俺たちは生き残ったサイヤ人のわずかな仲間、よろしくしようやなまえ」





胸がどきんと嫌な音をたてる

父さんがここにいる筈ないから、カカロットかと思った

髪型や顔のパーツ全部がカカロットだ

本当に、そうかと思った

でも、ターレスの反応やラディッツから聞いた、カカロットは到着した星で生きている話、よく見るとカカロットの優しい目と違ってきりりとした正にサイヤ人の目をしていて、違うと分かる

でも、けれども、それにしても、サイヤ人の下級戦士の型っていうやつは少なすぎないかな

本当に心臓に悪い

違うと分かっていても、やっぱり泣きそうになる

久しぶりに父さんのことを鮮明に思い出した

気づかれないように、声のトーンを変えないように、握手を求めてきたターレスに応じる





「よろしく、ターレス。貴方のいう宝ってやつ、私期待してるから」

「この星にはないガスや岩まで使って守ってんだ、しょうもねー宝なわけねーよ」

「たしかにね。さて、じゃあ早速奪っちゃって、こんな星とはおさらばしよう」





王座らしきものがある後ろ側にその扉はあった

開けてみるとむんと埃がたまったような、生乾きのような生理的に好きじゃない臭いがする

真っ暗で何も見えないけれど、どうやら地下に繋がってるらしい

小さいパワーボールを灯りがわりにして、壁に取り付けてあるハシゴを使う気にもなれなかったから、そのまま飛び降りる

思ってた以上に深くて、数分は落ちた気がした

灯りが無ければ見逃してたと思う

まだまだ続く穴の途中のハシゴの逆側にある壁になんの前触れもなく扉があった

ただの阿呆ではないらしかった、ここの元住人は

いつだって宝を奪う瞬間はわくわくする

そこで止まって、錆びた取手に手をかけた

鍵なんてあってもなくても関係ない

少し力を入れれば、すぐに扉ががこんと外れてくれた

そのまま扉を落とせば、ひゅうと下に落ちていく

いつまで経っても地面に落ちた音はしなくて、一体これに気づかなければ私たちはどこまで落ちていったんだろう


扉の中には真ん中に台座があるだけのシンプルな部屋というより空間があった

台座の上には赤いでこぼこのある実らしきものが3つ

まるで固まりかけた血みたいに赤黒い独特の色だ

これが宝?





「!これ、神精樹の実じゃねーか?」

「あのおとぎ話にでてくる?」

「あぁ、見た目も似てるし、この星のヤツらが、ああまでして守ろうとしたのもこれなら分かる」

「・・・ふーん、ノーリスクハイリターンのドーピングねえ。・・・・・・ターレス、」

「ん?」

「貴方はこれからどうするの?」

「かしこいてめーなら、俺が言いたいことくらい分かってんだろ?」

「私はかしこくもないし、もしそうだったとしても、貴方の口から聞きたいの」

「やっぱり、上に立つべき人間だよ、てめーは。・・・俺を一緒について行かせてくれ、なまえ。惚れたなんて薄っぺらい言葉なんかじゃなく、俺はお前に助けられた命だ、お前に俺の死に場所を決めてほしい、お前が俺を殺してくれ」

「思っていた以上に熱烈な告白ありがとう。私の旅に目的なんてないし、私が生きたいように生きるだけだよ。貴方が私の側から次に離れる時は、私が要らないと思って貴方を殺す時だけ」

「あぁ、勿論だ」

「・・・変なやつね。じゃあ信頼の証として、私は1つこれをあげるから、貴方は食べてみせて」

「そんなくらいでお前の信頼がかちとれるなら、喜んで食ってやるさ」





ターレスは楽しそうに笑って、神精樹の実を1つ手に取った

そしてそれを迷うことなく、口に運べば、しゃりと音が聞こえて、食べ進めるターレス

正直美味しくなさそうだし、これは毒味だと分かっているはずなのに、阿呆みたいに普通に食べるから拍子抜けしてしまう

器用に種を取り出しながら、最後にぺろりと汁のついた指を舐めて完食

身体症状はなさそうだ

次の瞬間、ターレスの戦闘力がどかんと上がると共に、筋肉量が増した気がした


これは、本物だ

まだまだそれでもターレスの戦闘力なんてれっぽっちだし闘いの経験がなければ意味もない

それでも、それを抜いても、これでノーリスクなら、本当にお宝だ


私も1つ手に取って、かぶりつく

甘いのか渋いのかよく分からない味

力が溢れてくるのが分かる

尻尾がゆらゆらと揺れた





「さて、本物と分かったところで、・・・じゃあ旅を続けようか」

「どこまでもついていかせてくれ、なまえ」





ポッド、1人用だけどどうしようかなあ



















気紛れ

(久しぶりの感覚だ)





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