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さて着きました噂のあのタワー

思わず風圧でよろけそうなくらい高い

手すりがなくて怖いので、ビビっている私は現在タワーのど真ん中で三角座りしてます

下でクッションは用意してくれてあるだろうけど、それにしても高すぎる

え、このタワー、このイベントのために作ったの・・・?

このイベントにお金使いすぎじゃない・・・?

ていうか、これ道が別々だろうしあのヒソカとかレオリオのイベントが見れないのか

うーん、裏方の観覧席みたいなものがあればいいなあ


そんなことを考えていたら、遠くでぶんぶんとゴンくんが私に手を振ってくれてるから振り返す

それをキルアくんが殴ってから、はっとしたように私のほうを振り返って焦りながらぺこりと一礼

話したことは無いけれども、レオリオさんにゴンくんがぐわんぐわんと肩を揺すられてる

あんな奴と関わるんじゃねー!
考え直せ!ゴン!

ってところだろうか

言ってて悲しくなってきた


この1番の人は原作で、どんな道を選んだんだろう

ここで終わるわけにはいかないと、立ち上がって一歩を踏み出した瞬間

ふわりと浮遊感

ジェットコースターに乗った時みたいにお腹の下のあたりがきゅっとなった気がする

息の抜けたような声が思わず出てから、視界はすぐに真っ暗に

数分落ちていたかもしれないけれど、突然だったし、驚きと恐怖で、私にとっては一瞬に感じた


それから、どすんと尻もちをついてマットのようなものに着地する

辺りを見渡せば、窓はないけれどすごく大きなモニターのある普通の部屋みたいだ

え、これは一体なんの試練だ

頭が追いついてない

ここで、ぶつんとノイズがかったような声が聞こえる





『まさか、話題の1番が落ちてくるなんて。どうやら、運まで君の味方みたいだね』

「え、なっなんの部屋ですかここ」

『ここ幸運の部屋。危険も暇な時間も何も無い、ただ試されるのは君の運だけ。・・・最も、この部屋に落ちてくること自体、運が良いんだけどね』

「話が読めません、えっと、」

『ああ、僕はブラックリストハンターのリッポー。この三次試験の試験官さ。この部屋の扉は、10分おきに10秒だけ開くように設定されててね、まさかこの部屋にだれか落ちてくるなんて考えてなかったよ』

「10秒だけ・・・。それが幸運ってことですか?」

『それも正解だね。この部屋から出る、というか、この試験を合格するには、誰か他の受験生に君の運を任せるしかない。この三次試験の合格者を誰か1人でも当てることができれば君は合格、外れれば不合格ってわけだ』





1番の人はこんな道に進んでたのか

もしかして、なにかの番外編かおまけで、紹介されてたのかな

残念ながらこの1番の人が原作で誰と答えたのか知らないし、合格したのか不合格になったのかも分からない

リッポーさん、ごめんなさい

原作と違うだろうけど驚かないでね


あー、カメラ越しで人と話すだけでも緊張する





『今目の前にあるモニターに受験生の顔写真と受験番号を、』

「405番のゴン=フリークス、さんでお願いします」

『ン?405番?』

「はい、その人でお願いします」

『・・・てっきり、有名な44番を選ぶのかと思ってたよ。まあいい、では405番がこの四次試験を合格した瞬間、君の合格が決まる。君が幸運であることを祈るよ』

「あと、もしよろしければ、ここがどの辺か教えて頂けませんか?随分と田舎に来たことだけは分かるのですが、トウキョウからどれくらいの距離かだけでも・・・」

『トウキョウ?この辺にそんな地名はあったかな。詳しくは試験規則で教えることはできないが、そうだね・・・、君たちが移動した距離もあるからだいたい最初のザバン市から飛行船3日分くらいだと思うよ』

「!すみません、今日は何年でしょうか?」

『まさか、落ちてきた時に頭でも打ったかい?今日は1999年だよ』





これは、作り込まれた設定なのか


違和感はたくさんあった

あまりにも似すぎてるキャラクターのレイヤーさんたち

見たことがない生き物や場所

ロボットや作り物とは思えないそのリアリティ

だんだんとイベントってだけじゃ話が済まされなくなってきた


これは、もしかして、トリップなんじゃ、



急に視界がぐにゃりと曲がって、立っていられないほどの眠気が襲ってくる

思わず、近くにあったベッドに倒れ込んでしまった





『ふふふ、言っただろう?幸運の部屋だって。危険も暇な時間もない、次に君が起きるのは合否が決まった後さ』





すでにぼやけた世界の中でリッポーさんの声が何とか聞こえるけれど、音として認識されるそれは言葉として私の中には入ってこない

一体なんて言ってるんだろう

今にも爆発しそうな不安と緊張なんて忘れてしまいそうなくらいの眠気

このまま、起きたら全部夢でした、なんて、結末ならいいなあ














































『タイムアップ、三次試験終了だ、合格者諸君、おめでとう』





合格者の反応は十人十色

喜ぶ者、胸を撫で下ろす者、当たり前だと表情を変えぬ者

その中にも当てはまらない者は、まるでなにかを探し求めるようにしきりに周囲を見渡す

その顔には絶望の色が見えた

合格したのに、珍しい奴らもいるものだ

試験官のリッポーは、カメラ越しにそれを見つめる




まあ、中には楽しませてくれる受験生もいたし、上場だろう

あそことあの部屋に、ぜひ落ちてほしかったけれど、それは叶わなかった

力を入れた部屋だったのに残念だ

どうせもうこのタワーは使わないのだから、ここで死刑囚同士刑期をかけて使うのもありか

そんなことをひとりごちながら、手元にあったコーヒーを啜る

でも、まさか、前の3人の試験官からの申し送りにあった1番が、あの部屋に落ちてくるなんて

たしかに、一目見てわかった

あの桁外れた美貌

まるで完璧に作り込まれた芸術品

色々な人間を見てきたつもりだし、男を惑わせると有名な凶悪犯だって捕まえた

その時だって、こんな、感動に似た、賛美礼賛嘆賞詠嘆、どんな言葉でも言い表せないような感情は芽生えなかった

それほどまでに、美しいと思った

美しいという言葉でさえも陳腐に感じるほどに


彼女が眠ってから試験終了までの間のカメラは勿論録画していたし、ただ眠っているだけの映像なのに、飽きるなんてことは決してなかった

反対に、その映像に見とれすぎて、後ろの部下の咳払いで何度夢から醒めさせられたのか分からない


そんな彼女は、運までも味方につけているらしい

彼女が迷わず404番を選んだ時は、落ちたと思った

それから、404番が少しばかり憎らしいと思った

結果はやっぱり、幸運の女神は彼女の美貌に嫉妬したのかと思ったが、ラスト数秒で大どんでん返しだ

まるで雷が落ちてきたような衝撃だった

神の子の奇跡を見た瞬間の人々は、こんな気持ちだったんだろうか




ごほんと、リッポーの後ろにいた部下がまた咳払いをする

そうすると、ばちんと思考の泡が弾けたように、いつものリッポーの表情に戻ったのを見て、部下は三次試験中に何度ついたか分からないため息をまたこぼした

この試験中のリッポーは今まで共に仕事をしてきた中でも見たことがなくて、部下は困惑する

はて、機密事項で僕には見ることが叶わない試験中の映像でなにかあったんだろうか

思考の波に溺れているであろう、モニターを見るリッポーの表情は、まるで、恋する乙女というより、神を崇め奉るような、





『そうだ、あともう1人合格者がいるんだ。彼女も含めた26名諸君、さあ、四次試験の会場まで移動するための港まで行くから、飛行船まで移動願おうか』

「あ、もしかして、あの綺麗なお姉さん?」

『当てはまるかは知らないが、受験番号1番の彼女だよ。彼女が落ちたのは幸運の部屋、自分の合否を他の受験生に賭ける。今回彼女は404番、君に賭けた。その結果合格となったわけだ』

「え!俺?」

「テメー、ゴン!!試験前も手を振り返してもらってたし、いつのまに仲良くなってンだ!!」

「俺の知らないところで話しかけたのかよ、もしかして!?」

「話したのは、あのキルアと挨拶しに行った時だけだよ!!」

「では何故あの女性は、ゴンを選んだんだ?」

「俺も分かんない!でも、俺を信じてくれてなんか嬉しいね!俺が落ちちゃったら、あのお姉さんも落ちちゃってたわけでしょ?」

「くっそー!!!俺に投票してくれたら良かったのによー!!」

「レオリオ、それはない」
「そりゃねーだろ」

「んだとー!!」





それからぶつんと切れたらしい放送

その放送の内容に、俊敏に立ち上がった者が2人













林檎が欲しいの

(まさかイルミも、なんてね)






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