short story

□biblioteca f.
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※学園パロです。
※音楽科と普通科がある学校という設定。
ちなみにここでは二人とも音楽科です。

許せる方のみどうぞ。










いつも放課後の図書室にいる彼は、いつ見ても素敵な藍色でした。

たまに放課後の図書当番をしている彼女は、いつ見ても優しく輝いてました。



そんな君との、図書室で起きた恋のお話。




biblioteca f.




今日は1ヶ月に1週間だけある、図書当番の日。

そして、その1週間は、私にとって、とても特別な1週間なんです。

だって、図書室には……


藍色の、素敵な方がいらっしゃるのです。



図書室の扉を開けるとそこには

(あ、今日もいる!)

綺麗なマリンブルーの髪に、深海のような藍色の瞳。

制服を崩しすぎず、真面目すぎずに着こなして、何故か膝を抱えて本を読んでいる彼がいた。

いつも図書室にいる彼。

カウンターから少し離れた、窓側の一席に座り、静かに本を読んでいる。

夕日に照らされて、キラキラと輝く彼はとても美しくて、まるでガラスや陶器のようだった。

(今日こそ…話しかけてみよう…っ!!)

そう思い、そっとカウンターの椅子から立ち上がると、ほぼ同時のタイミングで彼は本を閉じた。

そして、こちらをちらりとみて…

「………」

無言でそのまま本棚の方へ行ってしまった。

(うわぁぁ、あの無言は一体何だったのでしょうか…!?き、嫌われた!?私何か変なことしたっけ…?うわぁぁあ……)

「ねぇ、君。さっきから呼んでるんだけど、聞こえてる?」

「ふぇ!?」

突然、見知らぬ声が聞こえて、思わず変な声が出てしまった。

「……聞こえてなかったみたいだね。君、当番でしょ?全く…しっかりしてよね」

「え、あ、はい…すみません……ってえぇ!?」

その注意してきた声の主は、あの藍色の彼。

声まで、まるでガラス玉のように澄んだ綺麗な音だった。

私が驚いてあたふたしてると「ちょっと…落ち着いてくれる?しっかりしてよ」とまた注意されてしまった。

「す、すみません……で、な、何でしょうか…?」

「何って…これ借りたいんだけど」

そう言って差し出してきたのは一冊の本。

(あ…これ私も好きなシリーズだ……)

同じ物を読んでいるというだけで、嬉しくなる。

ちょっとぽかぽかとした気持ちで、私は貸し出しの手続きをした。

「えっと…はい、来週の月曜日までに返却してください」

「ありがとう。…てゆうか、君三年生だったんだね」

「え?」と言うと、私の校章を指して、「赤色は三年生でしょ?」と言ってきた。

彼の校章は…

「ボクは一年生だから青色だけど」

そう言って本を持って、扉に向かう。

出て行く前に、立ち止まり…

「今度からは仕事中ぼーっとしてたらダメだよ、先輩」



私が恋した藍色の彼は、後輩だった上に先輩にタメ口でした。






今日もいつも通り、図書室へ行く。

毎日の日課だけど、今週だけはちょっと違う。

1ヶ月に一週間だけ会える、あの優しそうな桃色の髪の人がいるはずだから。



(…会える、というより見れる、が正しいか。)

図書委員の人らしく、カウンターに座ってよく何かに書き込んでいる。

随分と集中してたから、前にこっそり見に行ったら、楽譜だった。

恐らく音楽科の宿題かなにかだろう。

あまりにも集中していて、ボクには気づいていないようだった。

(今日も会えるかな…)

そう思いつつ、ボクはいつものように、実はカウンターの彼女が良く見える窓側の席に座り、本を読み始めた。



3分の2ほど読み終わった時、図書館の扉が開いた。

(あ、来た)

例の彼女が、少し慌てた様子で入ってきて、そのままカウンターへ向かう。

一瞬、ボクを見たように感じたのは、ただ単にボクの勘違いだったみたいだ。


そのままボクは読書を再開した。


しばらくして、本を読み終わったボクは静かに本を閉じた。

すると、ほぼ同時にカウンターからカタンと音がした。

ちらりと見れば、彼女が立ち上がり、こちらを見ていた。


「………」

特に何も反応が無かったので、ボクは本棚に向かった。

そして、一冊の本を手に、借りるためにカウンターへ。

「あの…」

何故か彼女は頭を抱え、あたふたしていた。

…しかもこちらの話が聞こえてないようだ。

「あの…聞いてる?」

……気づかない。

「ねぇ、君。さっきから呼んでるんだけど、聞こえてる?」

「ふぇ!?」

少し大きめの声で言うと、ようやくボクに気づいた彼女は、驚いたのか変な声をあげた。

「……聞こえてなかったみたいだね。君、当番でしょ?全く…しっかりしてよね」

「え、あ、はい…すみません……ってえぇ!?」

何故か、また驚かれた。

何かしただろうか?

でも、初めて聞いた彼女の声は、とても柔らかく、優しい音だった。

そんな彼女は、驚いてまたあたふたしてる。

ボクが「ちょっと…落ち着いてくれる?しっかりしてよ」とまた注意すると、「す、すみません……」と答え、少し落ち込んだ様子になった。

「……で、な、何でしょうか…?」

「何って…これ借りたいんだけど」

そう言って、本を渡す。

すると彼女は何故か微笑み、貸し出しの手続きをし始めた。

(周りに花が見える…)

それくらい、彼女は嬉しそうな顔をしていた。

そして、手続きが終わったようで、本を差し出してきた。

「えっと…はい、来週の月曜日までに返却してください」

その時、襟元の校章が見えた。

同い年だと思っていた彼女は、何と三年生の先輩だった。

「ありがとう。…てゆうか、君三年生だったんだね」

「え?」

ボクは彼女の校章を指して、「赤色は三年生でしょ?」と言った。

「ボクは一年生だから青色だけど」

そう言って本を受け取り、扉に向かう。

出て行く前に、立ち止まり、彼女の方を向く。

「今度からは仕事中ぼーっとしてたらダメだよ、先輩」



ボクが恋した優しそうで危なっかしい彼女は、先輩だった上に敬語だった。






次の日。

(今日もあの子来るかな...)

ドキドキしながら、カウンターから扉をちらちらと見る。

いつもならそろそろ来る時間...

『ガラッ』

(来た!)

扉が空いて、藍色の彼が現れる。

ふと目が合って、よかった、今日も会えた...と思った。

でもすぐに何だか恥ずかしくなってしまい、目を逸らしてしまった。

(お...思わず逸らしちゃった......でも...)

「...よかった」

ポツリと呟いて、私はもう一度彼を見た。

マリンブルーの髪が、風に乗ってふわりとなびいた。


私は彼をイメージしながら、曲を作り始めた。

夕日に照らされた、藍色の人魚の曲を。


(あ、ここはもう少しテンポを落として...こっちは...)

「だから、君はいつになったら気づく訳?」

「ひぇ!?」

いつの間にか、横に彼が立っていた。

「声かけても何も反応しないし、隣に立っても気づかないし...君、注意力無さすぎ。作曲しててもいいと思うけど、当番ならちゃんと周りも気にする事。いい?」

「...す、すみませんでした......」

後輩の彼に、また同じような事を注意されてしまった。

「全く...次からちゃんと気をつける事。...ということで、はい。これ借ります」

彼が差し出したのは昨日の続きの本。

また嬉しくなって、自然と笑みが溢れる。

「...その本、好きなの?」

唐突に、彼が聞いてくる。

「え?あ、はい...これ、凄く好きなんです...。世界観とか、キャラクターの一人ひとりが凄く魅力的で...」

「そうなんだ...。ボクも気に入ったんだよね、それ」

ふっと彼は微笑んでそう言った。

とても綺麗で、儚くて、触れば壊れてしまいそうな笑顔だった。

思わず、見とれてしまう。

「...じゃあ、また借りにくるよ。先輩」

「はい、待ってますね...」

本を受け取ると、彼は扉へ向かい、振り返って...

「また明日ね」

そう言って、図書室を後にした。


いたずらに笑った彼の顔が、いつまでも頭から離れなかった。







あっという間に一週間経ってしまった。

(あの子...今日もいるのかな...)

ぼーっと、外を眺めていると、後ろからノートで叩かれた。

「ちょっと春歌、聞いてるの?」

叩いてきたのは、親友の友ちゃんだった。

「あぁ...ごめんね友ちゃん。...で、何だった?」

「何だった?じゃないわよ。あんた話しかけてもずーっと上の空で聞いてないんだもん...どーしちゃったのよ全く...」

そんな友ちゃんの言葉も、右から左にすり抜けていく。

(...あの子に...会いたいな......)


そんな事ばかり、考えていた。







(今日はちゃんと気づくかなあの先輩...)

ふとそんな事を考えながら、ボクは図書室の扉を開けた。

でも...

(あれ...?)

カウンターにいたのは、あの先輩ではなく、青い髪をした男の人だった。

(あ...そうか。一週間経って、当番変わったんだ...)

そう思うと、先週まで来るのを楽しみにしていた図書室が、途端につまらなく感じた。

あの窓側の席に座り、本を開く。

でも...

(内容が...頭に入ってこない...)

こんな事は、初めてだった。

(あの先輩に...会いたい......)

それしか考えられなかった。







そんなある日の事。

「春歌ー!行くよー!!」

「まって友ちゃーん!」

移動教室で、急いで廊下に出る。

音楽室へ向かう、一直線の廊下。

前のクラスの人達が、私達とは反対の方へ歩いていく。

すれ違っていくその中に...

「あっ!!」

一瞬だったけど、間違いない。

藍色の、彼がいた。


思わず立ち止まって振り返る。

すると彼も立ち止まり、こちらを振り返った。

「ちょっと春歌?置いてくよー!」

「え!?あ...」

友ちゃんと彼を見て戸惑ってると、彼はまたいたずらに微笑み...

『あ の ば しょ で ま っ て る』

そう、口パクで言った。

私は、満面の笑みで頷いて、友ちゃんの後を追った。

(私の事...ちゃんと覚えててくれた...まってるって言ってくれた......)

それからの授業なんて、彼の事しか考えられず、まとまになんか受けれるわけが無かった。





そして、ようやく放課後になった。

私は急いで図書室に向かう。

そして扉を開けると...

「待ってたよ、君が来るのを」

優しく微笑む彼がいた。

今、図書室には私達しかいない、私達だけの空間になった。

「私も…ずっと会いたかったです。あなたに...」

お互い、まだ名前も知らない。

だから…

「ボクは美風藍。君は?」

「わっ私は七海春歌と言いまひゅっ!!…うぅ」

最後、噛んでしまい顔を真っ赤にしていると、彼はクスクスと笑った。

「クスクス...ねぇ、春歌」

すっ...と、彼――藍くんは、真剣な表情になり、私の名前を呼んだ。

「初めて見たときから、ずっと君が好きだった。......ボクと、付き合って下さい」

お辞儀をして、手を差し出す藍くんは、とても美しかった。

「…はい、こちらこそ、よろしくお願いします、藍くん...」

私は笑顔で藍くんの手を握った。

「...ありがとう、春歌」

ふわりと、私は藍くんに抱きしめられた。

「春歌...大好きだよ...」

「私も...大好きです、藍くん...」

そして、ゆっくりと、どちらからともなく、口付けを交わす。


そんな私達を、オレンジ色の光が何時までも照らし続けていた。



放課後の図書室で起きた、私達の小さな恋物語は、まだ始まったばかりです。



end




ずっと書きたかった藍春の学園パロがようやく書けました...っ!!

放課後の図書室という場所が、凄く好きでいつかネタにできたらと思っていました。

凄くどうでもいいんですが、青い髪の当番の男の人は真斗という設定ですw

少しでも、甘酸っぱさが伝われば幸いです♪

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