short story
□compagno m.
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※蘭丸は春歌と付き合ってる設定です。(ですが春歌自身は出てきません)
許せる方のみどうぞ。
「ラーンラン!」
いつも通りの笑顔で、俺に抱きついてくる嶺二。
「んだよ、引っ付くな。鬱陶しい…」
「ランラン!今日何の日か知ってるの〜?」
嶺二はまるで話を聞いてない。
そして、今日は9/29。
「は?知るかよそんなもん」
俺の誕生日だ。
わかってるが、いちいち誕生日だからって喜ぶような子供でもねぇ。
…そう、思っていた。今年までは。
今年は祝ってくれる大切な人がいる。
だからこそ…、
「えーランラン知らないの!?……まぁいいや。それより今日一日中ランランと同じスケジュールなんだよねっ☆」
「はぁ!?何でてめぇと一日中いなきゃいけないんだよ!!罰ゲームか!!」
…恋人である春歌と過ごしたかった。
別に嶺二は嫌いじゃない。
普通に、いいやつだってわかってる。
いつもへらへら笑って、さり気なく周りを見て、常に皆のために行動して。
皆から信頼され、頼りにされ、好かれていて。
……どんな相手でも一定の距離を置いていて。
自分の事は、いつも後回しで。
なのに俺には、特別優しくて。
本当に…
凄く優しくて…、
凄くズルい奴だ。
「今日は一日、楽しもうねランラン♪」
「ミスるんじゃねぇーぞ、嶺二」
いつもの、貼り付けたような笑顔を浮かべて、嶺二は「うん!あったりまえでしょっ!!」と返事をした。
◆
仕事も終わり、要約帰り道。
「ねぇ、ランラン」
「なんだよ嶺二」
いつもより少し落ち着いたトーンで、嶺二が俺を呼んだ。
「今日、何日か知ってる?」
…同じような質問を、朝もしてきたはずなのに、何故また聞いてくるのか。
「9/29だろ?それがどうかしたのかよ」
すると嶺二は何かを取り出して…
「お誕生日おめでとう、ランラン」
小さな箱を、俺に差し出してきた。
「………………あ、ありが…とぅ……」
正直、貰えるなんて思ってもいなかったし、そもそも嶺二が俺の誕生日を覚えてるわけがないと思ってた。
驚きを隠せず、呆然としていると、あけてみてと嶺二が言った。
箱をあけると、中には小さなシルバーの指輪が入っていた。
「それね、僕ちんとお揃いなんだよ♪」
ほら、と右手の薬指に光る指輪を見せてくる。
「手、出して。はめてあげる」
俺の右手を取り、自分と同じように薬指に指輪をはめさせる。
「……お揃い、だな嶺二」
「うん。えへへ、ランランとお揃い♪」
空に手をかざして、喜ぶ嶺二。
そして、ふと俺の方を向き、こう言った。
「本当はね、こっちにはめたかったんだよね」
左手の薬指を指す。
「でもね、ランランは恋人じゃなくて、相棒だから。…愛棒、だからね」
゙アイボウ"という言葉を、やけに強調させる。
「だから、こっちにはめたの。えへへ…愛棒のしるしだよランラン」
そういって笑った嶺二は…、
いつもの貼り付けたような笑顔じゃなく…、
今にも消えてしまいそうな、儚く脆く切ない笑顔だった……。
「ほら、早く後輩ちゃんの元へ帰ってあげなよ。もうすぐそこでしょ?」
「れい、じ……」
そんな嶺二に、俺はなんて言ったらいいかわからなくて。
「じゃあね、ランラン」
嶺二は背を向けて去ってゆく。
「…っ、待てよ」
追わなかったら、そのまま嶺二が消えてしまいそうで。
俺は思わず抱きしめてた。
「え…ちょっと、ランラン?」
「少しでいい…少しだけ、こうさせてくれ……」
俺より細い身体。
春歌とはまた違う儚さがあって、冷たさも感じた。
「……嶺二、」
「…なぁにランラン」
「………ありがとう、愛棒」
「………うん、どういたしまして、愛棒」
そして俺は、もう一人の大切な人の元へと帰った。
end
ランランお誕生日おめでとうございます!!!!
蘭丸には春歌がいるから、大好きだけど身を引いてしまう嶺二。自己犠牲的な嶺二の性格なら、きっとこうではないかと思って書きました。
凄い短いけど、精一杯の思いを込めました。