short story

□caro
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「ぅ…ん………スウ………」

かすかに聞こえる呼吸音。

ボクの隣で寝ているレイジから聞こえてくる音。

余程疲れていたのか、帰って来るなりすぐに寝てしまった。

「ふふ…お疲れ様レイジ。ゆっくり休んでね…」

優しくレイジの頭を撫でれば、また吐息を零す。

そんなレイジが愛しくてたまらない。

「……ぁ…い……」

「どうしたのレイジ?ボクを呼んだ?」

小さな寝言で、ボクの名前を呟くレイジ。

「……あい………どこ…?」

「ここにいるよ。ボクはここにいるよレイジ…」

ボクが優しく手を握ってあげると、レイジの頬を涙が伝い、ベッドにシミを作る。

「珍しいね…レイジがボクを呼び捨てするなんて」

わかっている。これがボクを呼ぶ声じゃないことを。

「…あい……行かないで…あい……」

「何処にも行かないよ…。ボクはここにいるよレイジ」

でも認めない。認めたくない。
信じない。

「……あい……あい……」

「大丈夫だよレイジ。ボクは絶対にレイジを独りにはしないから。
ずっとずっと側にいるよ…」

はらはらと零れ落ちるレイジの涙を、ボクは舌で舐めとる。

でもその瞬間、レイジは口にしてはいけない名前を発した。

「…行かないで……愛音………」

「……レイ…ジ?」

あーあ、言っちゃった。

駄目だよレイジ。

その名前は、ボクを狂わすから。

「ははっ…何言ってるのレイジ?ボクの名前は藍だよ?」

「ぅ……愛音ぇ………」

「だから、ボクは藍だって…。ホント、どうしたのレイジ。名前間違えるなんておかしいよ」

そんな悪い口は……

「お仕置きだよ、レイジ……んっ」

ボクが塞いであげる。

「……っ」

ピクッと反応するレイジ。

でも、目は覚まさなかった。

「……は………んっ……」

一度離して、もう一度。
今度は舌を入れて…。

そしてゆっくり離す。
ねっとりと繋がるボクとレイジの唾液。

「…ぁ……あいn「ん……」……っは」

「ふふ……駄目だよレイジ……んんっ」

「ぅんっっ………!?」

息ができないくらいに激しくキスをすると、レイジは目を覚ました。

「え……ぁ……ア…イアイ?」

掠れた声でレイジがやっとボクの名前を呼んでくれた。

「おはようレイジ……













……愛してるよ」


愛しい愛しいボクだけのレイジ。

その瞳、その心には、ずっとボクだけを映して…。

その口で、ずっとボクだけを呼んでいてね………。

ボクはレイジだけを視ているから。
レイジだけを愛しているから。

………ボクは愛音とは違う。絶対にレイジの側を離れないから。

一生、ボクと生きていこうねレイジ………。

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