short story
□indaco m.
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ここは何処だろうか。
暗くて、冷たくて、少し塩のにおいがする。
波の音が聞こえてくる。
あ、ここは海だ。
愛音が消えた、あの海だ。
「…嶺二」
ふいに声がして、振り返ると愛音がいた。
「アイネ!……どうしたの?」
駆け寄ろうとして、愛音が泣いているのに気が付いた。
「嶺二……さよなら」
愛音は、海へ向かってゆく。
「待って、アイネ!!…っ!?」
愛音を追いかけようとすると、僕の身体はその場から動けなくなった。
「くそ!!なんで!?」
愛音は海の中へ入ってゆく。
深く深く、海へ沈んでゆく…。
「待って、待ってよアイネ!!!!行かないで!!僕を独りにしないでよ!!!!アイネー!!!!!!」
その声は愛音には、もう届かない………。