純白の蝶の歌物語-SoNG CHRoNiCLE-
□Op,2 七カ条はagitato
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Op,2 七カ条はagitato
「と、言うわけで!今日はオリエンテーションよ!」
りん先輩の可愛らしい声が響き渡る講堂。横にはりゅう先輩もいる。
早乙女学園入学2日目。早速行事、オリエンテーション。りん先輩が内容を説明し始めた。
オリエンテーションは、アイドルの七箇条探しというものらしい。
学園内のいたるところに七箇条の書いたカードが隠してあるらしく、それを全て探し当てたペアが優勝。というものだった。
「ペアはくじ引きで決めるわ!」
そう言ってりん先輩はどこからか箱を取り出した。
「さ、出席番号順に引いてちょうだい!」
私は初めの方の番号なのですぐに順番が回ってきた。
箱に手を突っ込むと、ボールがたくさん入っている。適当にえいっと取り出すと、ボールには「10」と書いてあった。
10番を他にも持ってる人を探そうとキョロキョロしていると大きな声がした。
「10番引いた子ー!誰かいるー!?」
声のした方を見れば赤髪の少年がいた。確か一十木音也君という人。
私はもう一度自分の番号が10番だということを確認し、彼のところへ向かった。
「あの、私です。10番」
ボールを見せながらそう言うと、一十木君はパァ…っと笑顔になった。
「君だったんだ!よろしくね、壱原!」
「はい、よろしくお願いします。一十木君」
彼の眩しい笑顔に、一瞬目が眩む。
それくらい、彼は太陽のような輝きがあるようにみえた。
◆
「…というわけで、くれぐれもトラップには気をつけること。いいな!」
『はい!!』
りゅう先輩の声に、みんなが元気良く返事をした。
先輩曰く、七カ条は建物内に4つ、屋外に3つあるらしい。
それらは各7枚ずつ置いてあるらしく、見つけた順に1ペア1枚ずつ所持することが可能。
全てのカードを集めたペアが優勝となり、何かしらの賞品があるという。
この広大な学園の中のどこにあるかは全くヒントがない上、トラップが仕掛けられてるという。中にはとても危険なトラップもあるとか…。
「トラップか…龍也先生が言うと何か余計に危険度が増して聞こえるんだけど…」
「実際にとっても危険なものばかりですよ」
「え!そうなの!?怪我しないように気をつけなきゃ…って、何で壱原はそんな事知ってるの?」
「あ、えっと。…知り合いがここの学園の卒業生なんです。その人から聞いたことがあるので」
「そっか!」
実際は知り合いではなく、兄に聞いたことだが。
「まぁ優勝できればなんだっていいよね!がんばろうね壱原!」
「はい!がんばりましょうね!」
「始める前に…凛々、一十木。ちょっといいか?」
一十木君と気合を入れて意気込んでいたところで、りゅう先輩に呼び出された。
みんなのいる場所から離れ、私たちはりゅう先輩の元へ。
「よし、来たな。凛々、今日の体調はどうだ」
「大丈夫よ。問題ないわ……ぴゃ!」
問題ない、と言ったのにも関わらず、りゅう先輩は私のおでこに手を当ててきたため、驚いて変な声が出てしまった。
「ん、熱もないし顔色もいいな。なら大丈夫だな」
「あのー、俺たち呼び出したのは…?」
「ああ、すまん。…お前ら2人には、みんなとは別に注意事項があってな。…と言っても2人というか一十木にだがな」
「え?俺ですか?」
何のことかわからないといった感じで、一十木君が首を傾げた。
「ああ。…凛々、言ってもいいか?」
「…仕方ないもの。いいわ」
「え??壱原どうかしたの?」
「……えぇ。まぁ」
私はうっすらと笑みを浮かべて一十木君に答えた。
私のその顔に、さらに困惑しているようだった。
「こいつはな、アルビノって病気なんだ」
「え、病気!?だ、大丈夫なの!?」
「そんなに重いものでもありませんし、少し重度の日光アレルギーとでも考えていただけたら」
「まぁ簡単に言うとそういうことになるな。…だから凛々は外に長時間いることはできない。ましてやトラップの仕掛けられた場所へなんてもっての外だ。そこでお前らには、外にある七カ条を2つだけ、先に渡しておく」
りゅう先輩が取り出したのは2枚のカード。それぞれに七カ条の内容が記されていた。
カードを一十木君の前に差し出したりゅう先輩だったが、一十木君はそれを受け取るのを躊躇った。
「でも、もらっちゃったら俺たちが…」
「そうだな。お前らが有利になってしまう。だから2人には終了1時間前になったら講堂へ戻ってきて待機してもらうことになる。それならいいだろ?」
「…わかりました!」
一十木君がカードを受け取り、私たちはりゅう先輩に一礼してみんなの並んでいる列へと戻った。
それを確認したりん先輩は、とびっきり可愛い声と仕草で、開始の合図を叫んだ。
「じゃあみんな、がんばって探してちょーだいっ♪では…
スタートッ!!」
りん先輩の声と共に、みんなが一斉に走りだした。
「…よっし、俺たちも行こう!」
「はい!」
私たちも外へと駆け出した。