捧げもの

□秘密
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『秘密』


その日も、いつも通りにアンダーグラウンドに行って多少の稼ぎを得て。
本当にいつも通りの一日だった。ある事件を除いては――


「じゃあユリカ、ちょっと着替えてくるね」

「分かったわ、私はお茶でも汲んでこようかしら」

アンダーグラウンドから帰って来て事務所に戻って。珍しくマリアローズは私服に着替えることにした。
事務所には髭を除いたいつものメンバーがいたが、トマトクンはさっそく寝始めているし、他の3人は今日の成果を確認している。
だからマリアローズはユリカにだけ声をかけて着替えをしようとしたのだが――それが間違いだった。まさか、着替えを見られるなんて思わなかったのだ。



まさに最悪のタイミングだった。ちょうど下着を変えようとしていて、あろうことか上は完全に裸だった。

「せやっ、マリアロ……」

半魚人が騒々しい声を上げながら、ノックも何もせずドアを開けた。
半魚人の後ろにはサフィニアとピンパーネル。少し遠いがユリカもこちらを見ているのが目に入る。

「スッスマン!まさか着替え中やったとは。別に女の着替えを覗こうなんて気は更々なくて。証拠にほら、サフィニアとピンパーネルも一緒やし……って、女の着替え?」

自分の言葉に疑問を持ったカタリは再びまじまじとマリアローズを見回す。

「いつまで人の体見てるつもりだ!さっさと閉めろこの腐れ魚!」

「すっ、すまん」

口では謝っているものの思考回路が停止しているのか半魚人はいまだに扉を閉めようとはしない。まぁマリアローズも似たようなもので、とりあえず胸は隠しているものの全く動くことが出来ないでいた。

そこで、ショックからいち早く立ち直ったサフィニアが恐る恐るというように口を開いた。

「マリア。その……胸」

「……えっと、これは。その――」

と、いつの間に起きていたのか、トマトクンがマリアローズの体の前をタオルで隠す。

「とりあえず話しは後だ。マリアはまず服を着ろ。さすがにその姿をずっとみんなに見せるワケにもいかないだろ」

「あ、ありがとう」

「落ち着いてからでいいからな。みんなに説明してやってくれ、どうすればいいか困っているみたいだしな。じゃあ俺らは向こうで待ってるぞ」

それだけあっさりと言いさると、トマトクンはさっさとドアを閉めていってしまった。呆然と立ち尽くすマリアローズだけを残して――




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