こばなし

□恋のカタチ
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「あのさ……ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

ある日の昼下がり、思い切ってマリアローズはユリカとサフィニアにそう切り出した。


「なに?」
「いや、好きになるってどんな感じなのかなー、って」


一瞬、沈黙が起こる。だがすぐにユリカは目を輝かせ、サフィニアは驚いたように目を丸くした。


「好き(しゅき)な人が出来たの!?」
「……誰ですか?あっ、アジアンさん、とか?それともまさ――」
「ちっ違うよ!深い意味はなくてただどんな感じなのかなーって思っただけ!それより何でアジアンが出てくるのさそこで」
「だって……ねぇ?」
「それはしょうがないかと」
「本当の本当にただ気になっただけ、それだけだって!それよりさ、ね、どうなのさ?ね、サフィニア」

心の中でだけ二人に謝りながらこれ以上あいつのことが上がらないように話題を変える。


――本当は当たらずとも遠からずといった感じ……なのかもしれない。断言しないのは自分でもよく分かっていないからだ。
違う、とは思う。いや、正確には思いたい。ただマリアローズ自身にはそういった経験がないために、違うともそうだとも確信が持てないのだ。だからこうして人に聞いてみることにしたのだ。
そうして出す答えがどっちなのを期待してるのか、自分でも分かっていないにも関わらず。


「私……ですか?私は、トマトクっ…相手を見ると嬉しくなったり、傍にいるだけで……。話かけられたりしたら……すごく、嬉しくなります」

「あーそうだよね。いつも嬉しそうだしねサフィニアは」
「しょうよね。見てるだけで微笑ましくて、ちゅい応援したくなっちゃうわよね」
「そ……そうなんですか?」
「うん。何か応援してあげないとってなるよね」
「みんなしょう思ってるわよ。気づいてないのは本人ぐらいで」
「まぁ、相手が相手だから仕方ないのかもしれないけど。それにしても鈍感すぎるけどね」
「……鈍感、ですよね」

ズーンとサフィニアの気分が落ち込んだ。しまった。つい口が滑ってしまった。

「だっ、大丈夫大丈夫!僕らもさっき言ったとおり応援してるしさ、いくらトマトクンでもいつかは気づくよ……きっと」
「しょうよ。きっと……じゃなくて、絶対気づくわよ」

でもあの鈍感さじゃもしかしたらずっと気づかないってこともなくはない…とは懸命にも絶対口に出すことはなく、ユリカとサフィニアを元気づけ続ける。

「――そう、ですよね。みんなも応援してくれてるし。いつかは」
「うん、だから頑張ろうよ。ね?」
「……はい。頑張り、ます…!」
「ええ、頑張りましょう!」
やがて元気を取り戻したサフィニアと3人で新たに頑張ることを誓いあったのだった……。
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