捧げもの
□きみが好きで
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「あ、じゃあそろそろ帰るね」
特に潜る予定ではなかったけれど何気なくみんなで集まってお茶を飲んでいた時、ふいにマリアローズがそう言って立ち上がった。ついさっきまでユリカとサフィニアと三人で楽しく談笑していたというのに、だ。
「なんや自分、待ち合わせかいな」
全員(トマトクンは寝ているので除く)の思いをカタリが代表して言ってみると、マリアローズは軽くだが確かに顔を背けながら否定した。
「ばっ!違うに決まってるだろ。頭腐ってるんじゃないの腐れ半魚人。そもそもなんで同じ所に帰るだけなのにわざわざ待ち合わせなんてしないと行けないんだよ、買い物して帰るだけなのにさ。そりゃあいたらいたで荷物持ちがいて助かるけどさ……」
カタリへの罵倒だけでなく、別の相手への罵倒もしっかり含まれているような気がする。が、言葉とは裏腹にマリアローズの顔はまだ赤いままだ。
「なんや、その、スマン。悪かったわ」
まさかここまでとは思わなかったのだろう。カタリがよく分からない謝罪をする。
「わっ分かればいいんだよ分かれば」
カタリが素直に謝ったからかやはり焦っているのか、マリアローズはマリアローズでよく分からない返事をしているし。
辛うじてその自覚だけはあるのかごまかすために早口で別れを告げてさっさと事務所を出ていってしまった。
「まさかあそこまで恥ずかしがるとは思わなかったわ。まさに色ボ……」
「それ以上、言ったら、怒られ・マスよ?」
「しょうね。まだいるかもしれないわよしょこに」
ピンパーネルとユリカの言葉にカタリは言いかけていた言葉を慌てて引っ込めた。
「でも……、言う通り……ですよね」
――しかし、サフィニアの呟きには静かに全員が頷いたのだった。