薔薇のマリアで17のお題

□01.気高き弱者
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弱者……そうだ。僕は弱者なんだ。侵入者と言っても笑えるぐらい弱い。弱すぎて、卑怯な手でも何でも使わないと生きていけない。どころか、卑怯な手を使っても生きていくのがやっとだ。
それなのに、あいつは何と言った?『気高い』だって?こんな、卑怯な手を使ってやっと生き延びているような奴が『気高い』?





……冗談じゃない。






笑い話にもならない。ならなすぎて逆に笑ってしまうぐらいだ。

「きみは僕のことを全然知らないみたいだね。せっかくだから教えてあげるよ。僕は……っ」

ついて来ないと思っていたのに。
振り返るとそこにはアジアンがいた。泣きそうな顔なことには気づいたが、気づかなかったフリをして言葉を続ける。

「ひどいことも、卑怯なことも、たくさん……数え切れないくらいしてきた。きみが思ってる以上にね。今だって、もしかしたらキミを利用しようとしてるかもしれない――分かった?僕は全然気高くなんかないんだよ。ここで生きて、死んでいくのがお似合いのような、そんな、そういう人間なんだよ。
……そりゃあ、僕だって出来ればそんなことしたくなんかないよ?でも、そうしないと僕みたいな人間は生きていけないんだ。だからっ!
まぁ弱者っていうのは認めてあげてもいいけど。弱いしね、僕」




――言ってやった。いや、言ってしまった

「マリア、ボクは、そんなつもりは。ただ……すまない」
アジアンの謝罪にもなっていない謝罪も、マリアローズの耳に入ってはいなかった。逃げるようにアジアンの脇を通り過ぎる。
「……ごめん」
せめて、一言そう呟くだけで精一杯だった。









やっぱり、僕は気高くなんか―ーないんだ


→あとがき
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