薔薇のマリアで17のお題

□14.悲しいけれど世の中お金
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時間は放課後。場所は空き教室の一つ。向かいには変態……教師が一人、愛について英語で長々と語っている。
だからと言って今回は別に強制的にでもなんでもなく。ちゃんとした理由がある。
……とは言っても、単刀直入に言えばただの英語の試験だ。個人の英会話力をみる試験で、教師が出したお題に沿って一対一で会話をするというもの。マリアローズの英語の担当はアジアンだから、自然と試験の担当もそうなった。それだけだ。もちろん、試験を行うのはマリアローズだけではなく、前には魚顔の半魚人がやっていたし、後には試験なんかする必要がないようなサフィニアが控えている。
そのため今日は何も警戒などしていなかった。10分間で出来ることなど限られている。


……にしても。コイツ、一方的にしゃべり過ぎ。


すでに3分以上英語でベラベラと愛について語っているのではないか。もしかしたらリスニングを含めているのかもしれないと思って大人しく聞いていたのだが、どうやらそうでもないらしいし。

「Ah...Azian.This is my test,is this?(あー、これってさ、僕のテストだよね)」

耐え切れなくなってマリアローズは口を挟んだ。英語のテストなので、一応英語で。

「あぁ、そうだったネ。ごめんヨマリア。じゃァ質問だ。

Do you think which is more important love or money(キミは愛とお金、どっちが大切だと思うかい)」

忘れかけていたようなアジアンの言葉に少しむかついたが、試験なんだからと何とか自分を落ち着ける。
……それにしても気になったのは、無言で見つめてくるアジアンの輝いた目。何を期待しているかは一目瞭然である。個人的にはお金を選びたいところだが、そしたらまた絶対愛について散々語られることになるだろう。しかし、素直に愛と答えるのもハメられたみたいで面白くない。
しばらく考えた末、マリアローズが出した結論は――

It is true that love is important.Still,money is no less important(愛は確かに大切だよね。けどお金も同じくらい大切だよね、やっぱり)」

「……それは結局、どっちなのかな?マリア」

「さぁね」

素直に愛を選ぶとでも思っていたのだろうか。アジアンの顔から笑顔が消えた。

「そうだネ。確かにお金も大切サ。でもネ、分かっているんだヨ?それはただの照れ隠しだってネ!」

けれど、笑顔が消えたのはほんの一瞬。コンマ一秒もなかった。
しかもそれだけではなく、すぐに元に戻ったアジアンはあろうことかマリアローズに抱きつこうとしてきた。危険を察知したマリアローズはすぐにイスから離れる。

「っく!急に飛び掛かってくるな馬鹿!……それに、先生。テスト中ですよ?」

「フフ、心配することはないサ。キミになら5だってなんだってあげるに決まってるじゃないか!だから残った時間はボクらの愛を深めて。って、あれ?マリア。どこに行くんダイ」

「……テストは終わったようなので帰らせてもらいます。じゃあさようなら、先生!」

どうやらアジアンの口調からしてテストは既に終わったようだし。テストが終わったのならもうこれ以上ここにいる理由はない。
さっさと教室を出ていこうとするマリアローズをアジアンはなんとか引きとめようとする。

「まっ、待ってくれマリア!愛も大切なんだよネ!」

しかし留まる気がないマリアローズは、ドアを開けて最後に後ろを向きながら微笑む。

「ああ、訂正します。

Money is more important than love(愛よりお金の方が大切だよ)。

……悲しいけれど世の中お金なんですよ。先生」





それだけ言い残して、マリアローズは後ろを振り向くことなく教室を立ち去ったのだった――



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