薄桜鬼〜短編〜

□人魚姫?
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《あなたを殺すくらいなら、いっそ泡になって消えた方がいいわ・・・ねぇ、あなたもそうでしょ?》

なんて言って消えていった人魚姫

《生憎だが俺は組の為なら自分の女でも躊躇いなく殺す》

そんな事を言って私に切りかかってきた彼













『だああああぁぁぁぁ・・・・』

あっ、夢だった
しかしなんて不吉な夢・・・しかも割とリアルだったし
彼・・・トシはきっと、事によっては躊躇いなく私を斬り殺すだろうな
でも、殺されるくらいなら、逃げるか・・・応戦するかな・・・?
ウーン・・・私だったらどうするかな

そんな事を思いながら私は寝言の叫び声と一緒に天井に上げた手を布団に戻した

そろそろ起きないと、そう思いながら夢現の中、まだ布団から出られなかった私の部屋に、慌ただしい足音が聞こえてきた

「おい、晶!!何があった!?」

普段廊下を走ることなんて滅多にない人が走ってきた
その顔には少しだけ心配の色が見えた



『あっ・・・トシ、おはよう〜』

私は布団の中から手をひらひらさせながら朝の挨拶
その様子を見て、トシの眉間のシワが復活し深く刻まれる

「おはよう〜、じゃねぇ!!さっきの叫び声はなんだ!?まさか寝言じゃないだろうな!?」

『あはっ、そのまさかです。寝言です。トシに殺される夢見て思わず叫んじゃったのよ』


軽い口調で説明する私に、眉間のシワが増えるかと思いきや、意外にも真剣な顔で返答が帰ってきた

「俺は必要なら誰であろうと躊躇わず切る。それはお前もよく知ってるだろーが、そんな俺でもお前だけは殺せねぇよ」














「殺さない」ではなく、「殺せない」と言った
つまり、「やらない」ではなく「やれない」

あっ、ちょっと・・・いや、かなり嬉しい
実のところ、なんかあればすぐに斬り捨てられる程度にしか思われてないと思ってたから
殺せないと言われて顔がニヤついた

そんな私の顔を見て、トシの顔がいつも通りの仏頂面に・・・

「分かったらくだらねぇこと夢に見てねぇでさっさと起きやがれ!」

『はーい!』
私はにやけ顔のまままたも軽い口調で返事をした

そんな私を見て、トシは「チッ!」っと舌打ちをして部屋に戻っていった





人魚姫の気持ちがわかった気がする

もし、愛した人に本気で思われてるなら、彼の為に泡となって消えるのも悪くないかもしれない




 

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