薄桜鬼〜短編〜

□彼との委員会
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「ねぇ晶ちゃん、白雪姫はなんでりんごが喉に詰まっちゃったんだろうね?お腹空いててちゃんと噛まなかったのかな?」

『・・・・』

「シンデレラは片方の靴が脱げても走るなんてなかなかの根性の持ち主だね。それに比べて王子様は諦めちゃうんだから・・・土方さんだったら何がなんでも追いかけるだろーね♪」

『・・・・』

「追いかけるっていえば、玉手箱でお爺さんにされちゃった浦島太郎は亀を追いかけなかったのかな?」

『沖田・・・』

「やだなぁ、総司って呼んでっていつもいってるじゃない。いつになったら呼んでくれるの?」

『永遠に呼ばねーよ!さっきからなにやってんだよ!?仕事しろよ!!』

「晶ちゃん、怖いなぁ〜。何やってるって、『図書委員なんだから本の一つでも読んだらどーだ』っていったの晶ちゃんじゃないか」

私は思わず頭を抱えた・・・この男、沖田総司は何を思ってかいつも私にちょっかいを出してくる
私は本や、静かな図書室が好きで図書委員になったのに、この男のせいで委員の仕事が苦痛になりつつある

『本を読むのは結構!で、なんで高2にもなって絵本なんだ?他にもっと年齢に応じた本があるだろ!」

「でも、絵本って色々な教訓を得られるっていうじゃない。」

『なら一々突っ込まずに大人しく教訓を得てろ!!』
こいつに付き合ってたらいつまでっても仕事が片付かない、放っておこう
背後でまだブツブツ言ってるが無視だ!











私は返却された本を棚に戻し始めた
中には高い位置のものもある

あぁ・・・あの位置は脚立使わないと届かないかなぁ

持ってくるの面倒だなぁ

沖田なら届くんだけど・・・




チラッとヤツをみれば、視線に気づいたのかニッコリと笑った
まったく、喋らなければかなりのイケメンなのに
性格が残念すぎるのに、周りの女はなんでこんなヤツ相手にキャ〜キャ〜言ってんだか。ハァ〜・・・

「晶ちゃん、途中から声に出てたよ。残念な性格ってちょっと酷くない?」

『事実だろ、それとも沖田は自分のこと素晴らしい性格だとでも言いたいのか?』

「総司!」

まだ拘るか!?
いや、そんなことよりも本を戻さないと




私は沖田に頼むのを辞めにして脚立を使うことにした

かなり古い脚立、あんまり使いたくないんだよな
でも仕方なしに、古い脚立に登って本を片付ける














まとめて持ったのが運の尽きか・・・ガタガタいう脚立の上で見事にバランスを崩し本と一緒に落下する















でも痛みはやってこなかった

代わりにしっかりとした太い腕に優しく抱かれていた

「ほんとに、晶ちゃんは目が離せないね」

ドキッ!!

今まで見たことのない優しい笑顔に思わず顔が赤くなった

『・・・総司・・・』

「やっと名前で呼んでくれたね」

あぁ・・・これが恋の始まりか・・・


















なんて少女マンが的なことは起こらない

私は見事にお尻から落ち、片付けようといていた本はそこら中にばらまかれた・・・



「あっはははは!晶ちゃん、ほんとに、君は目が離せないね」

いつの間にか側にいたヤツは腹を抱え、目に涙を浮かべながら笑ってる

『笑ってないで助けろ!!』

「ヤダよ、だって痛そうだもん。本が降ってきたら」

確かにな、幸い私には降ってこなかったけど

あぁ、なんでこんなヤツと同じ委員会なんだ・・・

いや、それよりも・・・
















なんでこんなヤツのことが私は好きなんだ・・・

自分で自分が悲しくなってくる

こいつは私のことは好きじゃない、仮に気があるなら普通は助けるだろーし

さっきみたいな場面で痛感する・・・

弱いなぁ、私は。気になっても聞けない、こっちから言うこともできない

だから私は離れようとする





『沖田、来年の委員会は別のを選べよ』

「ヤダよ、僕も図書委員がいいからね」

『・・・なら私が別の委員にする』

「そしたら僕もそれにしよーかな」

『!?何なんだ、お前は!?』

「2年C組、図書委員、沖田総司だよ」

『・・・・・・土方先生の苦労がよく分かるよ、なんで毎年、毎年沖田と同じ委員なんだ・・・しかも中学から・・・』

「なんで土方さんなのさ、あの人は好きで苦労を背負い込んでるんだよ。それに言ったよね?目が離せないって」
ニッコリと笑った顔はキラキラしているのに、後ろに黒いものを感じる・・・

『ったく、本も片付いたし私は帰るぞ』

「じゃあ一緒に帰ろうか」

『なんでだ?方向違うだろ?』

「もう、暗いからね。女の子を一人で帰すわけにはいかないでしょ?」

妙なとこで紳士だな

このたまに出す紳士なところに惹かれたんだろうな、私は

こーゆー時は、沖田に彼女ができるまで・・・同じ委員会でいたいなぁなんて思ってしまう
















「晶ちゃんは、いつになったら気づくのかな?」

『っ!?お前、まさか何かやったのか!?何した!?背中に変なの貼ってないだろーな!?』

「気づくまで言わないよ、それまで委員会は絶対一緒にするから」




そう、君が気付くまでは僕は言わないよ

僕ばかり追っかけてるのなんてなんか癪だしね

ちなみに、さっき助けなかったのは距離があって間に合わなかったから

じゃなかったらちゃんと助けてるよ、晶ちゃん
 

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