海賊と王女
□第二話
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小さくそう言った彼女の声は何処か寂しげで。
「…」
リヒトはひとつ頷き、それ承諾した。
「実はね…」
ルチアの表情を見ると、鼻は赤くなり、空色の瞳は涙で少し潤んでいて今にも泣き出しそうな表情だった。
やめろよ。
そんな顔が見たいわけじゃない。
「私ね…昔のことなんだけど」
「やめろ」
「え…」
途切れ途切れにボソッと言葉を紡ぐルチアをリヒトは止めた。
「もうやめろ。」
「どうして?どうしてそんなこと言うの?」
「自分で泣いてるの…わからないのか?」
「え…?(気が付かなかった)」
リヒトはルチアに近付き、自分の両手で彼女の顔を挟み、自分と目を合わせるように向かせた。
「本当は言いたくないんだろう?」
「…」
「お前が望まないことは俺も望まない。子供の頃、約束しただろう?」
「…」
ルチアはずっと黙ったまま、リヒトは言葉を進めた。
「いいじゃないか。今言わなくてもさ。死ぬまであと約70年、時間はたっぷりあるんだ。ちょっとずつ、ちょっとずつ話していけばいい。」
「わかったか?」と言うのと同時に、リヒトはルチアの目に溜まった涙を服の袖で拭う。
「…うん、そうだね。そうしよう…かな」
一時止まった涙がまた溢れ出そうな衝動に駆られた。
それを隠すようにルチアは手で自分の顔を覆った。
「…ありがとう、リヒト」