《銀×土》

□笑ってみせて。
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「・・・・・・・・・!?」

「ちょ、待っ」

すぐに膝を引くなり土方を退かすなりすれば良いのに、銀時がまず初めに取った行動が既に十分驚いている土方を更に動揺させる。
銀時は自らの掌で土方の視界を塞いだのだ。

「な、何すんだっ」

(それはこっちの台詞ッ!)

額を滑り落ちる前髪の間からキョトンと見上げる土方の瞳。
たった一瞬の映像が銀時の頭を反芻し離れない。

「手ェ、放せって!」

ギュッと腕を掴まれると銀時は余計必死になって土方の頭を押さえ込んだ。

「わかった!わかったから一旦落ち着こう土方っ」

「お前が落ち着けッ!」

(平常心、平常心・・・・・・ふぅー)

とにかく違う事を考えて気を紛らわせようと銀時は天井を見上げ、全く人の話に耳を貸さない銀時に土方は観念した様子。

「・・・なー?」

(えーっと・・・うーん、昨日の夕飯はー)

「・・・・・・・・・まだ掛かんのか?」

(そうだよ!夕飯時にゴリラが来たりすっから神楽に食われてっ)

「・・・・・・すー・・・すー・・・」

(はぁー・・・やっぱ安請け合いすんじゃなかった)

近藤からの依頼は実に単純だった。
本来ゴールデンウイークでも休みの無い真選組、それどころか仕事が増えて忙しいのだが、普段から碌に非番も取らない土方に誕生日位は暇をやりたい。
しかし、仕事人間の土方が素直に聞く訳もないので、此処は無理矢理にでも仕事へ出ない様にと銀時に見張りを頼んだのだ。

と、まあ・・・表向きはそうなのだが、やたら近藤は土方が屯所から出ない様にと念を押していた気がする。
真っ先に現場へ向かうだろう事を懸念していたのかもしれないが、だからと言って屯所から出られない誕生日もどうだろうか。

(なんにせよ、万事屋やってて良かったー)

堂々と二人きりで土方と過ごせるなら、二つ返事で依頼も請けるし、新八や神楽は置いて来るという話。

(・・・よし、ちょっと落ち着いた)

もう大丈夫と、凪いだ気持ちで土方に視線を落とした銀時だったが、自分の膝の上で静かに寝息を立て眠る土方に気付き、先程までギャンギャン文句を言っていた口許が無防備に晒されているのを見て思わずそちらも掌で覆ってしまう。

(ムーリーッ!やっぱ、まだ心の準備がっ)

「・・・・・・ん・・・んんッ!?んーっ!」

これには土方も苦しさの余り手加減なしに銀時の手を引き剥がして起き上がる。

「て、てめっ・・・殺す気かッ!」

「それはおめぇの方!正当防衛だコノヤロー!」

二人が掴み合った所、良いタイミングで屯所の電話が鳴り、土方はチッと舌打ちし銀時から手を放すと電話へと向かった。
鳴り止まない呼び出し音。
自然に土方の後を追ってしまった銀時は部屋の入口で足を止め、ディスプレイを確認する土方が一瞬受話器を取るのを躊躇するのを見た。

「・・・はい・・・・・・そうです・・・はい。書類整理が溜まってまして・・・いやっ、そういう訳では・・・」

事件という事でもない様だ。
会話の流れや土方が敬語で話す事からも相手は目上の者なんだろうけれど、携帯の連絡先も知らないものなのだろうか。

土方は受話器を持ちながらチラリと銀時を見ると、空いた手で部屋を出ている様に促した。
仕方なく部屋を出た銀時は入口からほんの少し離れた所で耳を澄ます。

あんなに威勢が良かったのに、途切れ途切れに聞こえる土方の声がやけに心許なかった・・・ーー。
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