《銀×土》
□嵐の日に。
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土方の携帯が鳴った。
「どうした?」
土方が電話に出ると同時に携帯の向こうから声が漏れる。
何を言っているかまでは分からないが随分と慌てているようで、土方の表情も次第に険しくなっていく。
「ッたく、何やってんだ!山崎、てめぇ書類が濡れたら分かってんだろうなァ?」
「どうしたんだ、トシ?」
「・・・・・・とにかく俺もスグ戻る。それまで書類は濡れねェように別の部屋に移して、戸は原田も呼んでどうにかしろ」
土方は一瞬近藤を見遣り、そう言って電話を切った。
「俺の部屋前の補強だけ甘かったみてぇで水浸しだとよ」
「えェェッ!?なんでトシの部屋だけっ」
「どうせ総悟の仕業だろ・・・。って事だから、俺は先に戻るけど近藤さんは様子見て戻って来いよ?」
「・・・まぁ多串君は飛ばされても死なねーか」
まだ外は暴風雨、帰したくないのに口から出たのはやはりそんな言葉。
「ッ多串じゃねェよ!てめぇは1度飛ばされて来いッ!」
「ふざけんなッ!見ろ!飛ばされる前からこんなんなんだからね!これ以上散らかったらホントに生きていけないからねッ!」
「てめぇの天パなんてどうでもいいわッ!それ以上散らかりようもねェよ!」
「ト、トシ!・・・隊士に任せておけば大丈夫じゃないか?」
「っ・・・・・・いや、部屋はどうにでもなるが期限が迫ってる書類が駄目になってたら書き直さなきゃならねぇし。志村、コレありがとな」
「あっ、いえ!手伝って貰って助かりました!・・・本当に大丈夫ですか?」
「あぁ」
そのまま土方はタオルを新八に返すと、まだ雨風の吹き荒れる外へと出て行ってしまった。
(・・・行っちった。でも今のはいつもの感じ・・・だったよな?)
「おめぇは帰らなくていいワケ?」
「んー・・・まぁ大丈夫だろうっ!」
なんて、大将はお気楽だ。
(・・・でも落ち着きなくなっちゃってるからね)
なんだかんだ言って近藤も土方が心配なのは見てれば分かる。
(早く雨止まねぇかなー・・・)
神楽も家に帰ってるかもしれないし、俺も飯時まで此処に居てダークマターの餌食にはなりたくないと、まだそんな呑気な事を考えていた。