《銀×土》
□嵐の日に。
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道場の方も残り半分となったあたりからポツリポツリと雨が降り出し、3分の2を過ぎた頃には土砂降りとなった。
一応保護者としては神楽の心配もするべきなんだろうけど大丈夫だろう・・・台風より燥ぐ神楽の方が余程危険だ。
「おいゴリラ!そっちはどうよっ!」
「次で最後だっ!」
風の音やら其処ら中で何かが転がったり飛んでく音に声も掻き消されそうになる。
「ッ!銀さん、アレ!」
新八が慌てたように指差した方を見れば庭に植えてある松も強風に煽られ根が盛り上がり・・・。
倒れこそしないだろうが、どうやら今回の台風は随分と早めに来た割には威力もそこそこあるようだ。
なんとか戸の補強を済ませ、ひとまず室内へと避難した。
「ふぅー・・・なんとか間に合いましたね、お妙さん」
「えぇ、ご苦労様でした。土方さん、お茶でもどうぞ。ゴリラは速やかにお帰り下さい」
「えェェェッ!?なんで俺だけェ!?」
「・・・・・・すまねぇが近藤さんのも頼む。この様子じゃ屯所まで帰るにも危ねぇからな。何かあったら困る」
(・・・・・・・・・)
近藤の心配ばかりする土方にまた胸がモヤモヤして、それでも無理に近藤を帰せば土方まで帰ると言い出し兼ねないので俺もお妙を宥める。
「まぁスグ落ち着くだろ。それにまだ何があるか分かんねぇし、ゴリラの手でも無ェよりはあった方がいいんじゃねーの?」
「そうですよ!この近藤勲、台風が過ぎ去るまで・・・いや過ぎ去るまでと言わず、ずっとッ」
ーー・・・ヒュンッ!
「ヒッ!」
「そうですね。じゃあ風が弱まるまで・・・」
黒い笑みを浮かべ近藤に竹刀を突き付けるお妙。
土方はその様子に再び溜息を吐きながらタオルで濡れた髪や服を拭いていた。
頭にタオルを被せ、乱暴に髪を拭う白く細い指。
タオルと揺れる前髪の間から伏せた瞳がチラチラと、ふと湯上がりの土方を想像するに至り頭を振る。
「・・・結局手伝ちゃってさー、ホント近藤には甘ェよな」
少し皮肉るような言い回しになったのは否めない。
「あぁ?・・・それならてめぇは女に甘ェじゃねェか」
「・・・はぁ?ンな事ねェよ」
いつもの口喧嘩の筈なのに、何かいつもより険悪な空気が漂い、しまったと思った。
修正しなければ、そう思った矢先。