《銀×土》
□愛され続けて。
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ーー・・・みっともなく足掻いて何か変わるというのなら
〇愛され続けて〇
カキカキカキ・・・ーー。
「副長〜?少し休憩されたらどうですかぁ?昨夜も寝てないんでしょう」
カキカキカキ・・・ーー。
「・・・そんなに急ぎの書類ありましたっけ?俺も手伝いま、」
「そうか!手伝ってくれるかっ!よし、こっち半分頼む」
「えっ、あ、分かりました・・・・・・って、コレ・・・・・・・・・」
真っさらな葉書の束と俺が書いたモノを見本にと1枚渡し、急に表情も態度も一変させた山崎に飄々と「締切、明日までだからな?」なんて捲し立て辞退する暇を与えてやらない。
おめでとう、皆のマヨリーン。
と、90周年キャンペーンに応募する為に借りられる手は全て借り、締切ギリギリまで応募葉書を増産していたのは1ヶ月前の事。
「はぁ〜。遂にこの日が来たか〜」
「・・・・・・・・・」
「てめぇも気になるだろ?当選発表は10時からだからもうすぐだ」
「ちっとも気にならねぇんだけど・・・つーか土方君、お仕事は?」
「落ち着いて見てぇからな、半休貰った」
「なにソレ!おめぇさァ、銀さんが休み取れねぇの?って聞くといっつも『無理』の一点張りの癖に、当選確認すんのに落ち着いても何もねぇっ、・・・・・・・・・ごめんなさい」
「分かりゃあいい」
なんで俺が、とか、謝礼は出るんだろうな、とか・・・ブーブー言っていたが勿論コイツにも手伝わせている。
3桁は軽く越える量を書かせたと思うがパフェ数杯で黙らせたので安いものだ。
「ったく・・・当たってたら追加謝礼請求すっからな」
「はいはい、分ァったよ。グダグダ煩ぇヤローだな」
ホントに当選を確認するだけならわざわざ逢いに来たりはしないと言うのに、万事屋は未だに指が痛いだとか嘯いて。
もし、外れてしまっていたら・・・その時は仕方ない。
(応募してる時点で自分で予約すんのと変わらねぇしな・・・まぁ協力してくれた礼だ、たまにはいいだろ)
しかし、少し考えれば分かるだろうに本当に万事屋は文句ばかり言って、照れ隠しだったのか・・・?結局は手伝ってくれたのだからそういう事だと思いたいが・・・。
「ああ、ホラ・・・なんだっけ、あのキーワード」
「発売〇〇周年に当て嵌める奴か?てめぇ、まさか間違えたんじゃ・・・」
「間違える訳ねぇだろっ!ヒント『愛され続けて90年』って間違いようがねぇわ!」
「そこが愛される要因なんだろうが!そこまで親切且つ優しい問題が他にあるかっ!?」
(これだから甘いモンなら何でも有りの雑食は・・・。そんなに甘いモンが好きなら砂糖一粒にまで拘ってみせろってんだ)
フン!と、互いに団子屋の店先で背中を向け合う。
店の女は困ったように団子の皿を真ん中に置くと中へ下がっていった。
「・・・で、トータル何枚ぐれぇ出したの」
「4桁いくか、いかねぇかって所だろ」
「ブーッ!!よ、4桁ァ!?」
「・・・ンだよ、やっぱ足りなかったか?」
「いやいやいやっ、お前どんだけマヨリーンクリスタルフィギュアが欲しいんだよ!?」
「マヨ、リーン・・・?」
「全部で900個だっけ?全部当たるわッ!あんなんおめぇぐれぇしか応募する奴、」
「ま、待て!・・・もう一度言ってみろ」
「だからァ!あんなモン欲しがるのはおめぇぐれぇだって言ってんのっ」
「ッ、その前だバカ!」
コイツには見本を渡していなかったのか?
そんな筈はない。
コイツが馬鹿な事は俺が良く分かってる。
何度も何度も確認して葉書と見本を渡した筈だ。