《銀×土》

□サヨナラ。
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スクーターに跨がって、さぁ行こう・・・君が待つ場所へ。



〇サヨナラ〇



「もう土方無しじゃ生きていけなーい」

「ケッ、どうだかな」

「いやいやホントだからね!」

ホントにホント。
俺にはお前だけなんだよ、土方。



非番を万事屋で過ごした土方と二人、布団に横になって残り少ない時間を惜しむ。

お前が泊まりに来る事は1週間も前から決まっていた、知っていた。
心待ちしてたんだ。

其れに嘘は無いよ。

なのに、ねぇ?
俺の首許に薄く咲いた華はお前が咲かせた華じゃない。
どうして、って思うだろう。
俺にも分からない。

酔った勢いなんて言ったらお前は怒ったのかな?
怒ってくれたかな?

気付いてない訳ないだろう?
日を改めたいと言った俺に珍しく食い下がったお前。
「少しでも逢えないか?」そう言って俺との時間を必要としてくれた。
なのに、ねぇ。
お前は何も言わない。

「お前だけだよ、土方」

土方の髪を指で梳きながら「ごめんね」と心の中で囁いた。

ずっと前から土方だけ。
これからもずっと土方だけ。



そんな真実でもある嘘を、土方は赦してはくれない。



「おっ、どうした珍しー」

それから数日経って万事屋の電話が鳴った。

『明日空いてるか?』

見なかった事にしてくれたんだと、勝手に俺は思っていたんだ。

「生憎明日は・・・・・・うんっ、何も無いな!」

土方からデートのお誘いだなんて勝手に浮かれてたんだ。

『海に行こうぜ』と、そう言った土方の声はいつもと変わらなかった。



翌朝、デートが楽しみで仕方ない俺は新八と神楽に万事屋を任せてスクーターに跨がった。

朝方の風を切って走る。

ふと思い出した去年の夏。
土方は海など行きたくないと俺の誘いを断らなかっただろうか?

暑いし焼けるし遠いからと・・・。

俺は海が好きだと言えば「またいつか、そのうちな」って土方は言った。

行けないのは残念だったけど未来ある『いつか』が嬉しかった。
同時に、終わらない約束を、来ない『いつか』を願った。

見えて来た海岸線、落ちるスピード。

違うって自分に言い聞かせる。
これが『いつか』じゃないだろう?
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