Biohazard
□ムゲット
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4月。まだほのぼのと暖かい日差しが心地好い。春眠暁を覚えず、とは良くいったものだ。まぁ、日本人の私からしてみれば、だけど。
仕事中だけど、うとうとしちゃうのは仕方ない、だって春だもん。と自分勝手な理由で自己完結し、私はデスクに頭を乗せて寝る体制に入ろうとした、
瞬間、ゴッという音と共に頭部に鈍い痛みが走った。
「う゛、」
私は驚いて唸るような声を上げて、ガバッと身を起こした。
きょろきょろと辺りを見回すと、後ろに未開封の缶コーヒーを持った恋人のレオンがいた。
…どうやら犯人は彼のようだ
私が彼をきっ、と睨むと、彼はニヤリと笑って私を見た。
ひぃっ!やばい、これはなんか企んでる顔だ!!
逃げようとしたけれど、時既に遅し。襟首を摘まれて、椅子に戻された。
「……何かご用でしょうか」
びくびくしながら私が金糸の彼に言うと、彼はその素晴らしい笑顔をそのままに、
「彼氏が着たのに逃げようとするなんてひどいな。」
とにっこりと効果音がつくように更に笑みを深くした。
周りの女性陣からは、キャーと黄色い声が上がっている。そんなにいいなら変わってほしい。
今の彼の笑顔は、私から見たら恐怖でしかない。
私は顔を引き攣らせた。
「ははは、そ、そんな訳ないじゃない。ところでどうしたの?」
「ああ、居眠り中のモエミには悪いんだけど、」
彼はそこで一旦言葉を切った。居眠り中の、というところを強調したとこ当たりがイヤミだ。
私が不服そうにすると彼は口角を上げた。
「モエミ、5時までに仕事終わらせておけよ。その後出かけるから」
「……はい?」
「じゃ、そういうことで。待ち合わせは俺の車の前だから」
レオンは自分の言いたいことだけ言って帰っていってしまった。
…………あれ?
ふと時計を見ると15:30、と表記されている。
レオンがいっていたのは5時。
あと1時間半しかないじゃないかっ、と私は半ば泣き出したい思いを抑えつつ、仕事に取り掛かった。