Biohazard

□彼岸花の涙
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「………あなたは正義感が強いから、嫌って言うかも」


絶体絶命の状態だった。逃げた先には壁。振り返れば溢れんばかりのゾンビの大群。


壁は、私には越えられないと思われる高さだった。


―――けど、レオンなら?


レオン一人だけならなんとかなる高さだよね……。


「……モエミ?」


キョトンとする彼に歩み寄り、腰に装備していた手榴弾をひとつ、手に取った。


「あのね、レオン。私………」


ここまで言って、彼は私のしようとしていることを悟ったのだろう。


私の両肩にその大きな手を乗せて、ガクガクと揺さぶった。


「っ!!何言ってるんだ!!!一緒に脱出するって言っただろう!?」


―――こんな状況になっても、諦めないんだね。


だからこそ、そんな彼が居てくれたからこそ、私は今まで生き延びてこれた。


私はやんわりと肩の色白の手をどかす。


ひゅうっと血生臭い風が、私たちの間を通り抜けた。


「レオン、あなたもわかっていれでしょう?本当は。…このままじゃ、二人とも助からない。それに私は、感染してしまっている……」


先ほど噛まれたあとに視線を落とすと、じわりと血が滲んでいた。


「……だが、「いいの」」


私は彼の青い目を見上げた。


……苦しさが、込み上げる。


「いいの。私はもう助からない。だから……ね、」


すると彼は俯いて唸るような声で言った。


「…だから、死ぬっていうのかよ…」


「わがままいっちゃってごめんね。でも、自分の死に様くらい、自分で決めたいの」


私は一度、ギュッと目をつむる。


そうして今度は何かを決意した目でレオンを見上げた。


視線の先の青が、悲しく揺らぐ。


その青に、大丈夫だとでも言うように私は笑って見せた。










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