中編

□1.スキンシップじゃなくてセクハラです
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真冬のリガは、極寒の地。ラトビアはロシアと隣接してるから寒いのも無理はない。


もちろん、ここよりも厳しい冬などいくらでもあるに違いないが、モエミにとってこれほど寒い場所は、はじめてだ。


住居があるニューヨークの冬も厳しいが、ここはその比ではない。初任務への緊張が、よけいに体を冷たく凍らせる。


手袋を嵌めていても、指先は冷たい。


モエミは顔を上げた。


灰色の空を背景に、屑のような雪がちらほらと舞っている。


エージェントのモエミは大統領の護衛のひとりとして、配備された。建物の外の警護も抜かりなくしなければならない。

最近この辺りは内戦がひどく、何度も荒れ果てた市街の中で交戦し、また回避してきた。


もうどれほど、ここにこうしているだろう。


モエミは視線を地面に落とした。


すでに足の感覚がない。ブーツの中でしきりに指を動かしていたけれど、もう無駄なようだった。


足元から、絶え間なく冷気がはい上がる。




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