中編

□走れ、走れ。
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今日はあいにくの雨。梅雨だから仕方ない。


体育の授業は急遽バスケに変更された。




「モエミ!」


「はいよっと!!」


バシュッとボールがネットに吸い込まれる。


「ナイスシュート!!」


私はメイとハイタッチをした。

「あれ?みんなは?」


周りを見渡すと、いつの間にか私たちしかいない。


「あっちだよ。みんな王子様でも見に行ったんじゃない?」


「あぁ、レオンか」


私が納得したように手をうつと、メイは黄色い声が上がってるほうを見て、ため息をついた。


「…しかし本当にすごいよね」

「たしかに。あ、いまのプレーうまい!」


「そっち?」


え、違うの?と首をかしげると、彼女は呆れ顔をした。


「ケネディだよ。すごい人気だよねって」


「ああ、そっちね。他の男子がかわいそうなくらいだよね」


たしかに、とメイは声をたてて笑った。


「さて、休憩もしたことだし、モエミ、バスケやろ!」


「うん!!」


「俺も混ぜてもらっても?」


急に後ろから声をかけられて、ばっと後ろを振り向くと、レオンとアンドリュー君がいた。


「俺、じゃなくて俺達、ね」


すかさずアンドリュー君が訂正をいれる。


「いいけど…いいの?」


もちろんギャラリーの女の子達のことだ。いまはまだ気づいてないみたいだけど。


「構わないだろ。あっちが勝手に寄ってくるだけだ」


フン、とむくれたようにレオンは言った。


「なんかそれ前にも聞いた」


「まあまあ、はやくバスケしよーぜ」

「そうね。じゃあ、じゃんけんで勝った二人が攻めで、負けたほうは守りね」

「おっけー!!」





チーム分けの結果、攻める側はメイとレオン。守る側は私とアンドリュー君になった。


「よろしくね、アンドリュー君」


「任せとけって!!」


ダンダンッとバスケットボールが跳ねる。


レオンがニヤリと笑って走り出した。


速いっ!!


きゅきゅっとシューズが音を出した。


ボールは一度、メイの手に渡り、そこにアンドリュー君がディフェンスに入った。


それを避けるように、再びボールは彼の色白の手に渡った。


私がディフェンスに入ったけど、長身のレオンには、たいして効果はなかったらしい。


ボールは色の白い手を離れ、綺麗な弧を描いてネットに吸い込まれた。





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