中編
□水も滴るなんとやら
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次の日、いつも通り朝からうっとうしい程の黄色い声を浴びながら教室に入ると、俺は目を見開くことになった。
……なんと昨日俺を助けてくれたモエミが同じクラスだったのだ。
彼女はニコニコと正面にいるブラウンの髪の女と話している。
同じクラスなんて、昨日は全然そんなそぶり見せなかったのに。
彼女は俺に気づいて昨日と同じ笑顔で笑った。
それが嬉しくて俺も笑い返すと、まわりの黄色い声がでかくなった。
うるさくてすぐに顔をしかめると、彼女は苦笑いしていた。
俺はつかつかと早めに歩いて、机に荒々しく座った。俺の席は1番後ろの窓側だから、前のほうにいるモエミの姿が自然と視界に入った。
すると前の席の友人、リューことアンドリュー後ろを振り返ってお前も毎朝大変だなぁ、と言った。
まったくだ、と答えると、ニヤニヤと笑うリューがうつった。
「で?無表情で有名な学校のプリンスが笑うなんてどうしたんだ?」
「別に、なんでもない」
俺は何となく彼女を見ながらそう言うと、リューもそっちを向いて、そーゆーこと、と呟いた。
「なにがだ?」
俺が尋ねると、リューは驚いたような顔をしたあと、笑って俺の肩をぽんと叩いた。
「レオン、俺はお前の味方だからな。なんでも相談しろよ」
うんうん、と言いながら、突然意味不明の発言。
「リュー、頭は大丈夫か?」
すると彼は、自覚なしかよ、と呟いて、「大丈夫だっつーの」と笑った。
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