中編
□虹色レインボー
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結局、その日の練習は中止になった。
しかもそのうえ、リューがメイと一緒に帰るらしく(リューが傘を忘れたかららしい)、俺まで彼女を待つはめになった。
「おい、レオン。お前、モエミのこと好きだろ?」
もう下校する生徒も少なくなってきた頃、リューが突然そう言った。
「な、お前……!!!!」
びっくりして俺が声をあげると、リューはおもしろそうに笑った。
「見てりゃわかるっての。だってお前、モエミの前ではよく笑うし、表情つくるしな」
俺のときは全然だったのに、とちょっと拗ねたように付け足した。
俺がそんなことない、と弁解しようとしたちょうどそのとき、廊下の向こう側から声が聞こえた。
「あ、いたいた」
声のしたほうを振り向くと、待っていた人物たちがいた。
「おっせーよ、メイ!!」
「女子なんてこんなもんよ。これでも急いできたんだから!!ね、モエミ」
「う、うん。」
モエミの髪はまだ湿っていて、寒さからか、頬は少し赤い。
「ったく、しゃーねーな」
外に出ると、まだ雲はどんよりとしていて、雨は弱まることなく降っている。
メイが傘を開いてほら、とリューをいれた。
「おう、サンキュ」
俺も帰ろうと、傘をひろげると、隣からあ、という声が聞こえた。
「どうかしたのか?」
「傘、家に忘れてきちゃったみたい。持ってきたつもりだったんだけど…」
モエミは、えへへ、と困ったように笑った。
「俺のに入ってくか?」
「いいの?」
「あぁ」
俺が頷くと、モエミはありがと、と言って俺の隣に来た。
いつも持ち歩いている折りたたみの傘は、二人入るにはやはり小さくて、肩が触れそうなほど近くにいる彼女からは、シャンプーの香りがした。