中編
□水も滴るなんとやら
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今日は暑い。朝はかなり涼しかったが、日が昇るにつれて陽射しは強くなり、走っている今は汗さえかいていた。
「…あっちぃ、」
俺の脚は無意識に昨日の空き教室に向かっていた。
ガラッと扉を開けると、彼女はそこに、いた。
モエミは驚いたようにこちらを振り向くと、太陽みたいに笑った。
「今日は随分男前が上がったね。水もしたたるなんとやら、だね」
そう言いながら彼女はかばんからタオルを取り出し俺に差し出した。
「はい。汗拭かないと風邪ひくよ?あ、タオルはちゃんと使ってないやつだからね!」
俺は礼を言ってタオルを受け取ると、それで汗を拭った。
タオルから香る洗剤の臭いに口角が上がるのを感じながら、柔らかなそれに顔を埋めた。
俺はふと、今朝のことを思い出した。
「そういえば同じクラスだったんだな」
すると彼女はそうだよ、レオン今日初めて知ったでしょ?と笑った。
「すまないな。その通りだ」
俺は肩を竦めてみせた。
「タオル、助かった。洗って今度持ってくるよ」
すると彼女は別にいいのに、とはにかんだ。
夕日でオレンジに照らされた彼女の笑顔は、とても、とても、
綺麗で、胸が高鳴った。
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