中編
□仕事に追われる水曜日
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その後、書類の山があともう少しで消えるところまで迫ったとき、女性の先輩方から呼び出しを喰らった。
…おおかた今日の昼のことだろう。
人気のないところまで連れて来られると、急にどん、と肩を押された。
まえのめりになったが、転ぶのは阻止できたからよしとしよう。
後ろを振り返れば3人の女性が立っている。その表情は全員、般若みたいだった。
あ、思い出した。なんか見たことあると思ってたら、あの上司に黄色い声で昼飯に誘ってた奴らだ。
こういうタイプは刺激しないのが1番だろう。私は冷静に対処する。
「ご用件は何ですか?誰かさんのせいで書類が終わらないんで早くして欲しいんですけど」
「っ!ほんとに生意気ね!!」
「それはどーも」
正面にいた一人が言いはじめると、脇にいた二人も口々に言いはじめる。
「アンタ新人のくせに意気がりすぎなのよ!!!」
「そーそー。レオンさんに色目使っちゃってさ!」
……いや、色目使ってんのアンタらだろ。
「もうレオンさんに近づかないで欲しいんだけど」
「それはあなた方の大好きなレオンさんに言って下さいよ。あっちからいつも来るんですから」
「っ!!言わせておけばっ!!!!」
正面にいる美人さんの左手が上がり、そのまま振り下ろされる。
パーン、と小気味よい音がなって、同時に私の頬に痛みが走った。
「これに懲りたらもう近づかないでよね!!!」
と言って彼女たちは走り去っていった。
「………ひっかかれたし、」
ヒリヒリと痛むそこに手を当てると、ピリッと痛みがはしる。
頬にあてていた手を見ると、うっすら血がついていた。
「はぁ、仕事終わそ。今日は徹夜だな」
まだ終わってない書類を片付けるために私はデスクへと足を運んだ。
デスクに戻るとまだあたたかいカフェオレが置いてあった。
きっとあの上司だろう。
昼の書類といい、このカフェオレといい、結構いい人なんだと、頬が緩んだ。
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