中編
□仕事に追われる水曜日
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私が朝出勤すると、デスクにはこれでもかというほど書類が山積みになっていた。
……軽く昨日の3倍はある。
呆然と立ち尽くす私の後ろでクスクスと笑う声が聞こえた。
「…新人のくせにレオンさんに近づくからよね」
「そうそう。ま、元々気に入らなかったけど」
―――後輩いびりはどこに行っても同じ、か。
しかも原因はあの人か。たしかに綺麗な顔立ちだけどさ。あの人人気だなぁ。アイドルかっつーの!
どうせなら傭兵時代みたいに組み手20人連続とかのほうが楽なんだけどなぁ。
デスクワーク苦手だし。
「はぁ……」
私はこの山を少しでも早く低くすべく、パソコンを起動させた。
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「やぁ、今日は随分忙しそうだな」
「またあなたですか」
「今日ははじめてだが?」
悪びれもせず言う彼に、思わずため息が出た。
「何か用ですか?生憎こっちは忙しいんです」
心の中であんたのせいでな、と付け足す。
「…それにしても、多過ぎないか?」
「さぁ?朝来たら机に乗ってたんですよ。おかげさまで大繁盛ですよ」
我ながら厭味な言い方だ。だが何度も言うように原因はこの上司なのだ。八つ当たりだとしてもちょっとくらいはいいだろう。
「レオンさぁん!一緒にランチでもいかがですぅ?」
向こうで女性たちの黄色い声が聞こえた。
「ご指名ですよ。行ってあげたらどうです?」
「…あとで差し入れでも持ってくるよ」
「期待せずに待ってますよ」
すると彼はクスリと笑い、私のデスクから10cmはある一山目の残りの資料をさらっていった。
彼はそのまま女性たちのところに向かって行くと、これから任務だから、と言って断ってから部屋を出ていった。
……ざまぁ。
その後の女性たちの視線は厳しかった。
―――これは一悶着ありそうだ
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