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□いちご×牛乳
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「シンタローくんは何牛乳が好き?」

カノが暇だったのか、不意に聞いてきた。

「は?牛乳限定?」
「うん。そう」
ソファに寄りかかって俺を嘲笑うかのようにニヤニヤと顔を変化させ見てくる。
何故牛乳なのかが疑問で仕方ないがそこは聞かない方が良さそうだ。
「…カノは?」
「ん?僕?僕はコーヒー牛乳かなあ…スタンダードだけどね」
するとカノは楽しくなったのかペラペラ喋り始めた。
「マリーは見た目に似合わず抹茶オレとかセトは安定のマリー廃でマリーと同じとか言ってたっけ…あキドはフルーツオレだったよ、なんかお得感があるだのなんか言ってたけど子供っぽく思われたくないだけだよね〜」
思い出したのかプッと吹き出しお腹を抱えて笑い始めた。
ああ…キドの苦労を身にしみて感じる。
後で言っておこう。
「あとさ〜キサラギちゃんなんてねおしるこ牛乳だよ!炭酸おしることおんなじ会社の商品らしいんだけどっ!絶対パッケージからして不味いってヒィお腹痛」
…うちの妹が馬鹿にされてる気がするがアイツのセンスについては俺も同感だ。

「キサラギちゃんおしるこ好きなのかなー」
「…アイツ、普通の業者のおしるこ飲まねぇよ」
するとカノはまた吹いた。
汚なっ
「ちょっ、待って、シンタローくん、お腹、ひっ、死ぬ、ひいっ」
お腹を抱えて転げ回っている。
そんなに面白いか?
一応モモにも伝えておいてやろう。
「…牛乳嫌いな人意外といるよな」
ふと思った。
「なんでだろうねー?まあ僕も普通の牛乳はあんまり好きじゃないけど」
お前もか。
だから背が伸び…コホン
そっとしておいた方が良さそうだ。
「で、結局シンタローくんは?」
「…笑いません?」
「うん、笑わない笑わない」
カノは猫のような目を少し細めた。
…笑う準備してるじゃねぇか。
二回言ったら大抵笑うフラグなんだよ。


「…いちご牛乳」

カノは一瞬細めた目を見開いて次の瞬間、
「…人は見た目によらな…プッ…」
笑い転げていた。
そこは最後まで我慢しろよああ…後悔した。
そういえばモモに
「いちご牛乳なんて味薄いものよりおしるこ牛乳の方が絶対美味しいよ!お兄ちゃんも見かけによらず子供ねえ」
と言われたことがあった。
まあお前の味覚は他の誰にもわからんだろうが。

俺は確かにいちご牛乳が好きだ。
幼い頃から変わらない。

「…ひぃ、ギャップってやつ?シンタローく、さいこ…プッ…く…」
コイツはいつまで笑ってるんだ。
「…笑わないって言ったよな」
「いやあ、シンタローくんがいちご牛乳を好んで飲んでるなとは思ってたけどねー本当に年上なの?」
知ってたのかよ。
言うんじゃなかった。

「まあそういうシンタローくんも可愛くて好きだよ」
「…うっせぇホモ」

…うっせえ

*

「というわけで、なんと今ここにはいちご牛乳がありまーす」
とわざとらしくカノが取り出したのは俺の好きないちご牛乳だった。
…メーカーまで合ってやがる。
「いやー好きなメーカー調べるの大変だったよーシンタローくん色々飲むんだもん。僕の観察眼に感謝してほしいね」
俺の心を見透かしたかのように返答がくる。
「別に普通に聞けばいいのに」
カノはため息をついた。
「だってシンタローくん『なんで聞くんだよ』とか言いそうじゃん…」
「…だろうな」
すると目の前にいる猫目野郎が満面の笑みでいちご牛乳を差し出した。
「飲んでいーよ?」
「…毒とか盛ってないよな」
コイツは信用ならん。
「盛ってないってー僕が先に一口飲もうか?あ、でもシンタローくん、好物はとられたくないから独り占めしたいタイプだよね」
「!?…なんで知ってっ…」
カノは口角を上げて、

「シンタローくんのことずっと見てるから」
といつもより低い声で囁いた。
思わず肩が跳ねた。

「…なーんてね、ん?シンタローくんどしたの?」
「このやろ…耳弱いって知ってるくせに…」
するとカノはニヤニヤしはじめた。
「へーシンタローくん耳弱いんだー?」
!?しまっ…
「ひぃっ!」
自分の声とは信じられない高さの声が溢れた。
「やめっろ、バカ野郎…ひあ」
「本当に耳弱いんだね、シンタローくん」
耳元にカノの吐息があたり反応してしまう。

「いちご牛乳っ!ぬるくなるから!」
咄嗟に出た一言だった。
するとカノはいちご牛乳のパックにストローをさし、俺に渡してきた。
…なんだこの変わりよう。
「ん?早く飲まないと僕が飲んじゃうけどいいの?」カノがいちご牛乳を飲もうとしたので急いで奪った。
俺は落ち着いて飲みたいんだよ。
まあ喉渇いてるからいいけど…
さっそくストローを口にあて飲んだ。
…甘い。
ほんのり甘くて…
「美味しい?」
「…旨い。ありがと」
するとカノは俺からいちご牛乳を奪い取った。
「なっ…お前まだ飲んで…」

眼前にカノの顔があった。
そして唇にふわっとした感覚が…唇?

「…っなにしてんだよ!お前!」
勢いよく突き放した。
しかし唇は離れたもののカノの身体はまだ近くにあった。
そんなに力ないかな…俺。
カノが味を確かめるように自らの濡れた唇を舐めた。
「シンタローくんはやっぱ甘いんだね」
その言動に思わず赤面してしまう。
こいつには恥じらいというものがないのか。
「…んなのいちご牛乳飲んだからだろ」
「そだね」
するとカノはいきなり覆い被さってきた。
「馬鹿。どけ」
「やーだね、シンタローくんが可愛いからいけないんだよ?」
「…ホモ」
「僕シンタローくんだけが好きなんだけど」

…本当になんだよコイツ

「俺は嫌いだ」

「それだったらさっさと逃げればいいのに?今僕力いれてないけど」

言われてみれば、抜け出せる力の強さだ。
身体を起こそうとすると、拘束する力が増した。
「まあ今さら遅いけどね逃がさないよ」
「…っそういうところが嫌いなんだよ」
カノは不敵な笑みを浮かべた。
「普通より嫌いっていうほうが意識してるってことでしょ?」
コイツの曲がった考えをどうにかしてくれ
「とにかくどいてくれ。これ以上俺に何するつもりだよ」
「言ってもいいの?…」
「俺が悪かった」
やはりコイツには恥じらいがない。
「じゃあ問答無用でいただきます」
「っちょっとまて、なにして、ひぅ、やめろうわああああああ」

俺の悲痛な叫びは二人しかいないアジトに響き渡った。

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ちなみにいちご牛乳は私の大好物です。

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