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□窓際の花。
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「シンタローさんは、好きな花あるっスか?」

そんなことを唐突につぶやいた。

「別に、興味ないし。」

男に好きな花を聞くっていうのも、おかしいものだ。
まあ、コイツは花屋でバイトしているらしいから、きっと花にも詳しいのだろう。
そんなことを思いながら、コイツの部屋の椅子に腰掛けた。
殺風景な部屋の中にも、よくよく見れば植物が置いてあった。

「セトは、好きな花あるのか?」

「そうっスね…言われてみると、そこまで好きな花があるわけでもないッスね」
爽やかな笑顔で言い切るな。
「花屋のアルバイターとしていいのか…それ」
「まあ、花の情報を覚えればいいだけッスから。」
オイ。全国の花屋に謝れ。接客とかほかにも大変なことあるだろ。

するとセトは、なにを思ったか窓際に寄りかかった。
セトの視線の先には、鉢があった。
「俺、花言葉なら好きなんスよ。」
「…花言葉…ね…。」
ただのロマンチストか。

鉢には、花が植えてあった。
まあ、知らない花だが。
コスモスのように開いているわけでもないし、
チューリップのような感じでもない。
丸くて、小さな花。

「セト、その花なに。」

俺は、その名も知らぬ花に惹かれた。
なんとなく、興味を持った。
セトの視線を浴び続けているこの小さな花に。

「千日紅っていうんスよ」

聞きなれない名前だ。センニチコウ。
セトがその花を愛おしそうに見ているのはなぜなのか。
知りたい、と思ってしまった。

「その花好きなの?」

ぽつり、とこぼした。

「他の花よりは好きッスね。花言葉も」

そう言って、笑みを浮かべた。
俺の鼓動が跳ねたのは気のせいだと思いたい。
静まれ…。

「は、花言葉は…なに?」

鼓動をかき消すように、必死に聞いた。
セトは、照れくさそうにヘラっと笑った。

「『永遠の愛』」

「ッ…」

予想外の答え。
これでは、鼓動をかき消すどころか、早めてしまうだけだ。

「この鉢は、シンタローさんと会って、ちょっとしてから買ったものなんスよ」

そう言いながら、こっちに向かってくる。
っ…なんなんだ…コイツ…意味わかってて言ってるよな…
俺の体温が上がる。

「好きッスよ。シンタローさん。」

爽やかながら、少し照れていた。
こんなの…っ。
一気に体温が急上昇した。
きっと今の俺の顔は真っ赤であろう。

「そ、んなのしってる……バカ」

改めて言われると照れて仕方ない。

窓際の千日紅が、日に照らされて輝いていた。

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書き下ろしです。
花言葉でセトシンがしたいがために
色々ぐぐりました。
せではじまる花の花言葉で
調べてたら、千日紅がヒット。
ちっちゃくて可愛らしい花です。

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