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□『─カノさん、大好き。』
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カノさんの姿が消えた。
何日か前、いや、数週間前。
その日は、いつものように、カノさんは、夜の町へ、依頼をこなしにいった。
「…大丈夫なんですか…カノさん」
一日中、依頼で外に出ていたカノさんは、無理をしているように見えた。
カノさんは、「これが最後だから」といってたけれど。
「…どうかなあ…ちゃんと生きて帰れるといいけど…」
そんなことをポツリとこぼして、カノさんは、出て行った。
後々キドさんに聞くと、その任務は、かなり危険なもので、当初は、キドさんも同行する予定だったらしいが、急な依頼が入り、カノさん一人で行くことになったらしい。
一日たって。
まだ、キドさんたちは、「ちょっと、遊んでるだけだろ」と心配はしていなかったけれど。
一日、一日、と、日は流れて行き…。
メカクシ団の面々は、焦っていった。
カノさんのケータイにかけても、電源が切れており、連絡はもちろんできない。
キドさんは、一人で行かせたことを悔やんだ。
俺も、あんなことを呟いたカノさんを引き止めればよかったと、自分を責めた。
いつもちゃらけているカノさんが、あんなことを呟いているのだから、それは、危険なものだっただろう。
どうして、俺は、いつも大事なことが「視えない」んだろう…。
わかったようなフリをして…なにが、「答えが解る」だ。
もうなにがなんだかわからなくなってしまった。
カノさんがいない日々の生活で気づいてしまった。
あの人がいないと、俺はどうにかなってしまう。
なにかをおもしろそうなものを見つけるたび、らんらんと輝く猫目。
「シンタロー君、大好きだよ」と、何回もうっとうしいくらいに呼びかけてくる声。
俺より低い身長で、抱きついてくる身体。
もう、なにもかもなくなって。
俺は、アジトの一室で、こもりきりだ。
もう、なにもかも失うのが怖くなった。
「…ご主人…。なにか、食べないと…やつれてますよ…」
カノさんがどこかに行ってしまってから、数週間。
連絡もなし。メカクシ団全員で、近辺の聞き込みを行うも、撃沈。
暗い雰囲気のままだ。
今、アジトには、俺とエネしかいないらしく。あたりは静まり返っていた。
いつも、悪ふざけをしてくるエネも心配するほど、今の俺は、やつれているのだろう。
「…いい。食べる気力も…ないから…」
声も掠れて…出てないに近いだろう…。
ずっと、エネがついてくれているのは、嬉しかったが、そんなお前までいなくなったら…。
そう考えただけで、全身が、凍りついたような感覚に陥る。
「…ご主人。カノさんが好きなんですよね…?」
「…あ…ああ…。今更、気づいたよ…。…手遅れだけどな…」
もう、突っ込む気力もないし、素直にそういった。
「…私、…昔…自分の想いを…ちゃんと、伝えられなかった…んですよ…。」
ディスプレイを見ると、涙を今にもこぼしそうなエネがいた。
「…でも、カノさんは、いなくなったとは、限らないじゃないですか…ご主人が、諦めてどうするんですか…っ」
…エネは、想いを伝える人に、会えなくなってしまったんだろうか。
自分のことのように、必死に俺に訴えかける。
「…っ…諦めたくねえよ……俺だって…」
ぼろぼろと零れ落ちる。…涙。
嫌だ嫌だ嫌だ。アイツの時みたいになりたくない。
「…か…カノっ…さん…」
嗚咽する声が部屋に響く。
…ああ。本当に、カノさんがいないと、生きていけないのかもな…俺。
「…ご主人…」
「…嫌だ…カノさん…っ…カノさん…」
会いたい。一目でもいいから、会いたい。
この想いを伝えたい。ただ一言。一言だけでいいから。
自分の想いに気づいた瞬間、溢れてくる。
ただただ、名前を呼び続けて。
ただただ、必死に願って。
ただただ…。
「カノさん…大好き……」
そう、唱え続けた。
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初投稿です。
ピクシブからの物。
添削とかしてないので、
そのまんまです。
思いつきって怖い。