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□bitter&white
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無事に百貨店に着き、チョコやらストラップやら色々買って荷物が多くなってしまった。
「…これで任務完了か?」
「そうッスね」
人混みやら外独特の空気でやめて!私のHPはもう0よ!と言わんばかりに俺は体力を消耗していた。
ちなみにセトがほとんど荷物を持っている。
「セト…持つって」
「ダメッス!シンタローさん倒れるッスよ!」
セトはムッとして俺に言った。
「でも、お前ばっかに持たせたらなんか俺の良心が痛む…」
セトは苦笑いした。
「その気持ちはすっごく嬉しいッスけど…あ、そこの公園で休んでもいいッスか?
「ああもちろん」
帰り道の細い通りにある小さな公園に立ち寄った。
その公園にはベンチや簡易的な遊具しかなかった。まあ一休みには丁度いい広さだ。
さっそく俺達は一つのベンチに隣り合って座った。
「はあ…やっぱり人多かったな…」「そうッスねー」
するとセトは自販機の前に行き、缶コーヒーらしきものを買ってきた。
よく見るとブラックだ。
「セト…俺ブラック無理」
すると後ろに持っていっていた手を俺につきだした。
「わかってるッスよ、シンタローさんがコーヒー苦手なことくらい」
手にはカフェオレがある。
なんか癪にさわるがまあ許す。
「…ありがと」
「どういたしまして」
いつもの笑顔
どうせ全員におんなじ顔するんだなと思うと少しカフェオレが苦く感じた。
…いやいや…何でだ。
「シンタローさん?」
セトがまた俺の顔をのぞきこんでいた。
「っ…いや、なんでもない」
「今日のシンタローさん、なんか変ッスよ?」
セトは俺の額を触ろうとした。
「なんでもない…って!」
反射的にセトの手を払いのけた。
「…シンタローさん」
「あ…ごめ」

「なんで泣いてるんスか」

いつもと違う真剣な顔で、セトは言った。
泣いてる?俺が?
自分の頬を確かめるように触ると、確かに涙がこぼれていた。
「え、なんで、」
自分でも分からなかった
「…シンタローさん、俺に触られるのが嫌なんスか」
「え」
セトは寂しそうな顔で呟いた
「つきまとったり、世話やいたりするのがうざくて…俺が嫌いになったんスか」
初めて見る表情
儚げで悲しそうな
いつものセトじゃない顔。
こんな状況なのに鼓動が高鳴っておさまらない。
「…セ、ト」
「すみません…全然シンタローさんの気持ちなんて考えてなかったッス、先に荷物持って帰っておくッスね」
取り繕ったような笑顔
今にも泣きそうな笑顔だった。
「セト!」
気づいたらセトの服の裾を掴んでいた。
「俺だってわかんねぇんだよ…なんでないてんのか…なんでセトのこと考えたら苦しくなるのか」
わからない。
考えたら余計に苦しくなる。
「だから俺のことが嫌いだから…」「そんなことない!」
自分でも驚くくらい大きい声だった。
セトは目を丸くしている。
「…嫌いだったらこんなことしないし一緒にいない」
「…シンタローさん」
次の瞬間、セトが俺の体を抱きしめていた。
ずっとずっと強く。
不思議と抵抗しようとは思わなかった
「セ、ト」
「シンタローさん、大好きです、好きです、愛してます」
固まった。
…あ…いしてる?
「え?どゆこ…」
「好きです」
セトは離れない。
ずっと好き好き言っている。
「セト!離せ!」
セトはそれでも離れずどんどんこっちに移動している。
いつの間にか後ろには壁があったぶつかったと思ったら目の前には鋭い目付きをしたセトが。
俺の服をまさぐる手が荒々しい。
「ひぃ…セト…やだ」
どういうことだよ。
何が起きてるのか頭がこんがらがってわからない。
セトの顔がいつになく真剣で怖かった。
「いやだ…やだ…セトっ」
またぼろぼろ涙がこぼれる。
「…っ、シンタローさん」
するとセトの動きが止まった。
「…また、泣かせちゃったッスね…ごめんなさいッス」
やけに素直に離れた。
少しの沈黙。
気まずくもあるが、少し落ち着くことが出来た。

「…セト、お前さ…」
「シンタローさんのこと好きッスよ」
いつもよりも爽やかな笑顔。
「う…どういう意味で」
「愛してます」
「つまり…ホモ」
「俺はシンタローさんだけを愛してます」
恥ずかしげもなく言い切る。
そんなセトに対して俺は、恥ずかしすぎて真っ赤になっているだろう。
「う…あ…ちょっと…」
「わかってるッス。シンタローさんは俺のことそういう意味で見てないってこと」
セトはポリポリと頬を掻く。
「…すまん」
「でも嫌いじゃないってことはチャンスがあるってことッスよね!」
「んなっ」
前向き…いつものセトだ。
するとセトは荷物を探り、一つの綺麗に包装された箱を差し出した。

「好きです。付き合ってください、如月伸太郎さん。」

人気のない公園で、響く声。
冷たい冬の風がやけに涼しく感じる。
たった一秒が長く感じる。
何か言おうとしても、口に冷めた空気が入るだけで、なにもでない。
なにを言えばいいのか。
なにを言えば。
そう考えると、余計に頭の中の思考の糸がこんがらがる。
刻々と一秒一秒と公園の錆びた時計の針が進む。
ふとセトを見ると、少し寒そうにしていた。
自分の気持ちがわからない。
でも。
今、俺がしたいと思うことは。
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