短編小説
□お菓子より…
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「コラ!むっくん!お菓子食べてばかりじゃダメでしょ!」
部活の時間にお菓子を食べていたむっくんこと紫原敦は、マネージャーの霰に怒られた。
「えーお菓子補給しないと死んじゃうよー」
紫原は三度の飯よりお菓子派の人なので、半分本気でそのことを言う。
「大丈夫だから、お菓子はダメ!」
そう言いながらお菓子を奪おうとすると、彼はその持ち前の高身長と長い腕で霰の手が届かないような所へお菓子を持ち上げる。
「やだー。これ、俺のだもん」
そんな可愛いことを言いながら。
「あー!それ反則〜!」
ブゥと頬を膨らませ紫原を見上げる霰。
明らかにふて腐れている。
「霰ちん、かわいー」
「えっ!」
下から見上げられた彼は、霰がとってもかわいく見えたので正直に言う。
「だっこー」
紫原は霰を持ち上げ抱き抱える。
「ちょ、むっくん離して〜!」
「やだ」
「やだじゃないよ〜…」
高校生にもなって抱き上げられるのはかなり恥ずかしいので降ろして欲しいのだが、中々降ろしてくれない。
「だって〜霰かわいーしー、なんかいい匂いするー」
紫原は霰の首もとに顔を持っていき、チュと軽く口づける。
「ひゃ…!むっくん〜…」
突然のことに驚く霰。
すると紫原は、あ…と声を漏らした。
「霰ちんさぁ、お菓子食べてばかりじゃダメって言ったよね?」
「うん、言ったけど…」
少しばかり嫌な予感がした霰。
「俺、今から霰ちん食べるー」
「それだけはダメッ!」
嫌な予感は的中した。
「えーいーじゃん」
「よくないよ!」
「お菓子より霰ちんの方が好きー」
「あ、ありがとう」
「だから食べるー」
「いや、だからダメだってば!」
というやり取りを監督が車で繰り返していた。
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