短編小説

□やっぱり、男なんです。
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「すいません!僕なんかと一緒に帰ってもらってすいません!」



「いや、私たちつきあってるんだから普通だよ?」



「すいませんっ!キモいですよね!死にますすいません!」



「死なないで欲しいかなぁ〜…」



霰の彼氏である桜井良は通称『謝りキノコ』と呼ばれる程、常に謝っている。


彼女になったら少しは謝らなくなるかとも思ったが、そうでもなかった。


一瞬、桜井を好きになったことを後悔してしまう。


が、そんなところが可愛いと思ってしまう辺り、惚れた者負けだろう。



「すいません、手を繋がせてくださいすいません!」



「全然いいよ!」



そして、積極的なのか消極的なのか全く分からない。


けど、そこが好き。


桜井は恐る恐る霰の手に自らのを近づけ、ぐっと力強く手を繋ぐ。


とても暖かい、運動をしている男の頼りになる手だ。



「好きだなぁ…」



「へっ!?な、何がですか?」



「あれっ?口に出てた?」



「はい、思いっきり」



「じゃあ、気にしないで」



桜井のことを想っていると、無意識で口に『好き』と出していた。


どれだけ好きなんだ、自分。


そんな自分に少し呆れていたら、桜井の手がより一層力強く握られ彼が立ち止まった。



「ん?桜井くん、どうしたの?」



振り向きそう問うと、桜井はいつになく真剣な目で霰を見つめる。



「……気になります」



「何が?」



「何が好きなのか、誰が好きなのか……気になります」



一瞬何のことだと思考を巡らせ、先程の会話を思い出す。



「なんで気になるの?」



あえて、質問返しをしてみた。



「…だって!…他の人のこと好きだったら嫌じゃないですか!しかも無意識なんて…完全にその人のこと好きじゃないですか…」



段々弱々しくなる桜井を見て、不覚にも可愛いと霰は思った。



「…じゃあ、私が本当に好きなのは桜井くんだね」



「へ?」



「私、桜井くんのこと考えてたら好きって言っちゃったの。だから、心配するようなことはないよ?」



霰は桜井の頬に甘いキスを落とした。



「あ、あんまり可愛いことしないでください…」



桜井は顔を真っ赤にさせて言う。



「なんで?」



「我慢、できなくなるじゃないですか…」



「……!」



桜井もちゃんと男だったようです。




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