短編小説

□バカップル
1ページ/1ページ




「え?俺?彼女いるけど?」



「「「はぁぁ!?」」」



誠凛高校バスケ部、木吉鉄平の爆弾発言に驚く他メンバー。



「そんなに驚くか?」



頭を照れくさそうに掻く木吉に、本当のことだと確信する。


そして絶望の淵に立たされた。


あんな天然ボケにも彼女が出来るのか…と。


中には、泣く人もいた。



「お前の彼女見たことないけど、どんな奴だ?」



バスケ部主将の日向順平は質問した。



「かわいい」



「っそーじゃねぇよ!てか、ベタ惚れだな!」



「ちっちゃくて、小動物みたいでかわいいんだよ」



「惚気はいいから!」



「あ、なんなら呼ぼうか?多分、まだ学校にいるし」



「同じ学校か?木吉の彼女ってのも見てみたいし、呼べるんなら呼べよ」



「分かった。可愛すぎて惚れんなよ?」



「ダチの彼女に手出さねーよ」



そんな会話をしたあと、木吉は携帯で通話をし、「もうちょっとで来るって」と一言言ったので待つことにした。


それから10分後……



「失礼、します…」



体育館の扉が開き、女の子が入ってきた。



「おー霰!ごめんな、突然呼び出して」



木吉は、彼の彼女である霰の元へ走る。



「全然。暇、だったし……」



彼女は常に俯いていて顔がよく見えないが、背が小さいのは明らか。


木吉と並ぶと、身長差だけは親子みたいだ。



「うん、いつ見てもかわいい」



「えっ…?そんなこと、ない…」



一瞬顔をあげ、木吉と目が合うと顔を真っ赤にしてまた俯いた。


その動作は確かに小動物さながらに、かわいい。


顔も目鼻立ちがくっきりしていて、中性的な顔立ちだった。



「霰は、いつになったら俺の目をちゃんと見てくれるんだ?」



木吉は霰の背に合わすように屈み、頭を撫でながら優しい口調で問う。



「っ…。は、はずかしぃ…から」



そう言ってますます俯く霰。



「あー…ほんっとう、かわいい」



木吉は霰を抱き締める。


彼女は木吉の腕にすっぽり入り、あわあわと慌てている様子が見てとれる。



「俺、マジで霰のこと好き」



耳元で囁く木吉は、天然に囁く形になった。


霰は体をピクッと震わせ、口をパクパクさせる。



「あ、わ…私も、て…鉄平のこと………好き」



「霰……」



「鉄平………」



そして、お互いの唇を重ねる。


それは、とても甘いキス。



「イチャイチャするだけなら他所行けダァホ!!!」



その光景に日向のクラッチタイム発動。


その声すら、2人の世界に入っている彼らには届かない。



「とんだバカップルだな」



その伊月の言葉を最後に、バスケ部は練習を再開した。




.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ