短編小説
□バカップル
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「え?俺?彼女いるけど?」
「「「はぁぁ!?」」」
誠凛高校バスケ部、木吉鉄平の爆弾発言に驚く他メンバー。
「そんなに驚くか?」
頭を照れくさそうに掻く木吉に、本当のことだと確信する。
そして絶望の淵に立たされた。
あんな天然ボケにも彼女が出来るのか…と。
中には、泣く人もいた。
「お前の彼女見たことないけど、どんな奴だ?」
バスケ部主将の日向順平は質問した。
「かわいい」
「っそーじゃねぇよ!てか、ベタ惚れだな!」
「ちっちゃくて、小動物みたいでかわいいんだよ」
「惚気はいいから!」
「あ、なんなら呼ぼうか?多分、まだ学校にいるし」
「同じ学校か?木吉の彼女ってのも見てみたいし、呼べるんなら呼べよ」
「分かった。可愛すぎて惚れんなよ?」
「ダチの彼女に手出さねーよ」
そんな会話をしたあと、木吉は携帯で通話をし、「もうちょっとで来るって」と一言言ったので待つことにした。
それから10分後……
「失礼、します…」
体育館の扉が開き、女の子が入ってきた。
「おー霰!ごめんな、突然呼び出して」
木吉は、彼の彼女である霰の元へ走る。
「全然。暇、だったし……」
彼女は常に俯いていて顔がよく見えないが、背が小さいのは明らか。
木吉と並ぶと、身長差だけは親子みたいだ。
「うん、いつ見てもかわいい」
「えっ…?そんなこと、ない…」
一瞬顔をあげ、木吉と目が合うと顔を真っ赤にしてまた俯いた。
その動作は確かに小動物さながらに、かわいい。
顔も目鼻立ちがくっきりしていて、中性的な顔立ちだった。
「霰は、いつになったら俺の目をちゃんと見てくれるんだ?」
木吉は霰の背に合わすように屈み、頭を撫でながら優しい口調で問う。
「っ…。は、はずかしぃ…から」
そう言ってますます俯く霰。
「あー…ほんっとう、かわいい」
木吉は霰を抱き締める。
彼女は木吉の腕にすっぽり入り、あわあわと慌てている様子が見てとれる。
「俺、マジで霰のこと好き」
耳元で囁く木吉は、天然に囁く形になった。
霰は体をピクッと震わせ、口をパクパクさせる。
「あ、わ…私も、て…鉄平のこと………好き」
「霰……」
「鉄平………」
そして、お互いの唇を重ねる。
それは、とても甘いキス。
「イチャイチャするだけなら他所行けダァホ!!!」
その光景に日向のクラッチタイム発動。
その声すら、2人の世界に入っている彼らには届かない。
「とんだバカップルだな」
その伊月の言葉を最後に、バスケ部は練習を再開した。
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