短編小説

□不思議なキス
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「霰、帰るぞ」



「言われなくても分かってるわよっ!」



ここは京都。


洛山高校に通っている赤司征十郎と霰。


二人は同じクラスであり、恋人同士だ。



「今日も待っててくれてありがとう」



赤司が入っている部活は、強い為に忙しい。


いつも夜遅くまで部活動を行っているため、帰りも遅い。


それにも関わらず霰は部活が終わるのを毎日待っているのだ。



「べっべつに!赤司くんを待ってた訳じゃないわ!たまたま、私も用があっただけ!」



あ…またやってしまった。



と霰は思った。


思っていることとは、全く真反対の言葉が出てしまうのは霰の悪い癖だ。


本当は赤司に「ありがとう」と言われ、恥ずかしいだけなのに。



「…全く、霰は素直じゃないね」



「!!?」



呆れるわけでも、軽蔑するわけでもない優しい声音。


霰を分かってくれる、理解してくれる…それが赤司。


だから好きなのだ。霰のことをちゃんと見てくれている、赤司が好きなのだ。



「私が、素直にならなくても、赤司くんは…分かってくれるからいいの」



霰がそっぽを向きながら言うと、赤司はフッと柔らかい笑みを浮かべて「そうだね」と呟く。



「けど…」



赤司はそう言いながら霰の顎を掴み、顔を最大限に近づける。



「たまには、素直になってほしいかな…」



優しく口づける赤司。突然のキスに驚く霰。


なぜだろうか。赤司のキスを受けた霰が自然とあの言葉が出てしまうのは。



「好き、だよ…」



顔を真っ赤にさせて俯く。



「よくできたね」



再び、あの柔らかい笑みを浮かべた赤司は、先ほどよりも、強く、深く唇を押し付けた。



「僕も好きだよ、霰」



「知ってる」



「そうだね」



二人は手を繋ぎ、暗い闇に向かって歩き始めた。




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