短編小説

□愛の形
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「宮地先輩って彼女いるンスかー?」



部活中に何故かそう質問したのは、秀徳バスケ部1年の高尾。


そして質問されたのは同じくバスケ部で3年の宮地だ。



「はぁ?部活中に何言ってんだ轢くぞ」



いつも通り暴言を吐く宮地を笑って軽く受け流す高尾。


両極端な二人だ。



「えーだって気になったンスよね〜。ほら、宮地先輩ってモテそうだしどうなのかなーって」



「それを聞いてどうすんだ?」



「そりゃ、彼女居たら見に行くっしょ!」



「ぜってぇー教えねぇ!」



「えぇ〜」



そんなやり取りをしていると主将の大坪の怒声が飛び、話は中断した。













「おぉ、清志遅かったな」



学校近くのファミレスには、宮地の彼女である霰がジンジャーエールを飲みながら待っていた。


宮地は軽く手を上げ、霰の前に座る。



「いつも通りじゃねぇか?」



「マジか。んじゃ、こっちの気持ちの問題だわ」



すまんすまんと謝っているんだがなんだかよく分からない霰。


彼女は口調からも分かるようにサバサバしているというか、男前というか…変わった彼女だ。


顔は美人だから、最初はそのギャップに驚く者も少なくない。



「今日の部活、どうだった?」



霰は宮地に質問する。


そんなことを問う霰自身は部活をしていないのだが。



「まぁ、今日も相変わらずハードだったな」



「ふ〜ん…お疲れ」



「ども」



さっぱりとした会話。


宮地は女が可愛く「お疲れぇ〜」とか言うのが苦手なので、これくらいでいいのだが。


たまに、物足りないなと思うことがある。



「清志、喉渇いたっしょ?ん…」



そう言いながら、自分のジンジャーエールを宮地に突き出す霰。


これってつまり、間接キスだよな。していいんだよな。



「サンキュー」



宮地はそれを受け取り、ジンジャーエールを一口飲む。


飲み終わってグラスを霰に返した。


それを受け取った霰は、また何食わぬ顔でジンジャーエールを飲んだ。



「間接キス……だな」



「………!!?」



宮地がボソッと呟くと霰は驚き、顔がみるみる内に赤くなる。


本当に無意識にやったんだろうなとここで確信が持てる。



「顔、真っ赤だけど?」



「…うっさい」



顔を反らすが、耳まで真っ赤なため意味がない。



「……ほんっと、かわいーな…」



「あ?何か言ったか?」



「いや、別にー」



フンと言ってジンジャーエールを一気に飲み干す霰。


それが照れ隠しの行為だってのは、長くつきあってるから知っている。


他のカップルみたいにイチャイチャはあまりしないが、これはこれでいいのだ。


だってそれが、彼らの愛の形だから――――。








一方その頃――



「あれが宮地先輩の彼女さんかぁ。美人さん〜!」



「おい、高尾覗き見はよくないのだよ」



「そういう真ちゃんだってノリノリだったじゃん!」



「うるさいのだよ…!」



「いや、ちょっと真ちゃん声でかいっ!!」



「「あ」」



「ちょ、ヤッベ!宮地先輩こっち見た!笑顔で口パクで殺すって…!」



「お、俺は知らん!」



「真ちゃん、待ってー!!」




次の日、二人の練習メニューが三倍になったとか…。




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