短編小説

□たまには
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「あ〜暇だなオイ」


俺―青峰大輝はいつもの如く屋上でサボり中


今は多分、2時間目とか3時間目だろう


キーンコーンカーンコーン


チャイムが鳴り休憩に入ったらしい


…ま、俺には関係ないけどな


再び目を瞑ると


「コーラッ!青峰くん!寝ーるーなっ!!」


「いててててっ!!!」


俺の耳を思いっきり引っ張るのは、同じクラスの委員長―霰


毎休憩ごとに俺を起こし、教室に連れていこうとする真面目な奴


「離せや」


俺が霰の手首を掴み、手を離させる


思いっきり睨むが微動だにしない


「青峰くんが授業サボるからいけないんでしょ?アホな癖に授業休むから試験で悲惨な目にあうんでしょーがアホ峰くん」


「アホアホ言うなバカ」


「バカは黄瀬くんに言ってよアホ。あ〜あ、これだからアホ峰くんは…」


わざとらしくため息をつく霰に苛つきを感じる


俺は再び寝転がり


「んで要件はなんだ?さっさと済ませろバカ」


俺は早く寝るために軌道修正をかける


「むーっ」


頬を膨らますがそれは一瞬で、すぐ普通の顔に戻る


ったく、なんでこんなんが委員長なんか出来んだ


「だーかーらッ!いっつも言ってるじゃん!!授業サボっちゃダメでしょ!教室きて!!」


珍しくお怒りモードの霰


「…なんだよ、別にいいだろうが。俺の勝手だろ」


目を閉じ、視界をシャットダウンする


すると、隣に座る気配がしうっすらと目を開けて確認する


と、霰が体操座りをしていた


「…じゃあ、私が青峰くんを連れていこうとするのも私の勝手でしょ?」


真っ直ぐ前を見据えたまま言う


「んだそれ…」


意味が分からん


「今日は教室に青峰くんが来るまでここを動かないから」


若干涙目になる霰


めんどくせぇな


「あ、そ」


俺は、無視しそのまま寝ることにした
















「…あ」


ヤバい、本気で寝てた


空は既にオレンジ色に染まっている


起き上がると、パサッと何かが落ちる


それは女物の制服のセーター


横を見るとセーターを着ていない霰が体操座りをしたまま、寝てた


「これ…お前のか?」


返ってくるのは気持ち良さそうな寝息のみ


セーターを霰の肩にかける


ってか、本当にずっといたのかよ…


ありえない


コイツ本当にバカだ


立ち上がってそのまま帰ろうとしたが、さすがに良心が痛む


「…しょーがねぇな」


霰のセーターを持ち、起こさないように霰をおぶる


軽いな


コイツ、ちゃんと食べてんのか


「ったく、なんで俺がこんなこと…」


そう言いながら、階段を降りる


ふいに霰が力を込めて密着率があがる


そして


「青峰くん…ありがと。大好き」


「え?」


そう言ったと思ったら再び寝息が聞こえる


顔を見ると、穏やかな、幸せそうな寝顔が見えた


「あぁっと…」


再び階段を降り始める






ま、たまには授業に出てやるか…





霰のために……‥‥―――





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